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鬱屈とした職場で仕事して大変な目にあった話


銀行でのお仕事


とある銀行でRPA(※)導入のお仕事をしたことがある。
RPA:簡単に言うと人間の代わりにパソコンの中にロボットを作って操作を自動化するテクノロジーの事である。

一緒に仕事をしたメンバーは、コンサルタント1人、PM(僕)、開発メンバー1人の3人だった。
基本的には、お客さんの要望をコンサルタント担当の人と僕でヒアリングし、僕が設計を起こして、開発メンバーに作っていただく。

銀行系はエンジニア界隈では不評なのだが、その理由が少し分かった案件だた。

悪質な環境


まず、

ビルに窓がない


その場にいるだけで窒息しそうだ。社内の雰囲気も異様に重い。
オジサンのにおいがする。食堂にはテーブルに突っ伏して動かないオジサンが大量にいる。トイレはWiFiが繋がらない。というかトイレの個室からいつまで経っても人が出てこない。
みんななぜかスーツのパンツを腰履きしている。シャツが黄ばんでいる。黄ばむことを分かってか、最初から薄黄色のシャツを着ている人も多い。
みんな不機嫌そう。常に眉間にしわが寄っている。

1分ほどでこれだけ悪口が書けてしまう。
これ以上書くとたぶん特定されてしまうので(苦笑)、ここまでにしておこう。

マリオとルイージ


さて、RPA導入に際して主担当の人に挨拶へ。

ぽっちゃりした30歳前後の女性(以下、マリオ氏とする)。
その上司にあたる50歳くらいのスラッとした、どこか疲れた表情の女性(以下、ルイージ氏とする)。この2人が窓口となるようだ。

さっそくRPA化したい業務があるというので、そのミーティングに同席。
10人以上出席していたが、部屋が狭く、朝の上りの総武線に乗っているようだった。しかも半分以上の人は発言せずに腕を組んでいるだけ。

マリオ氏が各部署が自動化したい業務の一覧を取り纏めているようだった。
要件はだいたい纏まってきてはいるものの、優先度の付け方に苦労しているようだ。
A部署の最優先とB部署の最優先はどちらを優先すべきか。これはRPAを管轄する部署がきちんとした理由をもって決めなければならない。
きちんとした理由はきちんとした文章で書類を添えて説明する必要があったらしい。

違う、そうじゃない。

KPIを定めて定量的に決めるんだ。
定性的な要素ばかり見ていてはいつまで立っても優先度は決まらない。それは効果測定で見るんだ。

RPAの開発へ


とりあえず、マリオ氏に優先度の付け方を助言し、RPA化する業務を1つ決めた。

ちなみにリストアップされた業務の一覧を眺めていると、どこか無理やりピックアップしたような業務ばかりだった。

偉い人が「RPAやれ!」と言うから無理やりオペレーションを作ったとしか思えないものも含まれていた。

トップダウンでRPAを導入するのは、意思決定がスムーズに進むという意味で割とベストプラクティスではある。
だが、現場の士気が顕著に低い場合はこういったケースが起こりがちだ。

それ本当に必要なの?という疑念が晴れないので、僕ら作り手側の士気も下がる。

あんまり気が進まないが、開発に着手することに。
設計書を仕上げて、マリオ氏にレビューいただき、メンバーに開発を依頼。

メンバーが開発をしている間、僕は他案件のディレクションを進めていた。

急な呼び出し


そんなある日、急にルイージ氏からお呼び出しがかかった。
急ぎのようだ。

急遽現場に向かい、緊急ミーティング。
席につくと、マリオ氏が開口一番、早口でまくし立てた。




今RPA化しようとしている業務は一旦取り下げて、別の業務をRPA化してほしいです。期限は1週間。さぁどうぞ!




おいおいおいおいおい!!!!!




1週間で完成させるのは無理DEATH!!!




もう決まっちゃいましたから☆
みたいな感じで、どこか他人事のように話すマリオ氏に僕は違和感があった。
ルイージ氏も上司なのに何も言わない。ただ機嫌悪そうにしているだけ。

期限については交渉し、工数見積した結果をもって改めて調整するということで合意が取れた。

反省すべき点


今だから反省できることなのだが、

RPAとはどういうものなのかきちんと説明しておくべきだった

と思う。

ロボットはこんな処理が得意ですよ~、反対にこういう処理は不得意ですよ、他の方法を考えることも視野に入れておくべきですよ

とか、

これくらいのボリュームの業務なら、このRPAツールであればこれくらいの開発工数がかかりますよ~

とか、

完成してもエラー発生率0%にはなりませんよ。しばらくは人間がしっかり面倒見てあげて、本番データに合わせてロボットをチューニングしていく必要がありますよ

とか。

RPAの特徴を先方が理解していれば、マリオ&ルイージ氏の間だけでなく、上層部とのコミュニケーションもうまくいっていたかもしれない。

当時の僕も説明はしたはずだが、足りなかったということだろう。

マリオ氏について


後日知ったことだが、マリオ氏は以前鬱病で休職しており、このRPA案件を機に職場に復帰したとのことだった。

復帰最初の仕事が、上から丸投げされたRPA案件だったというわけだ。

とても気の毒だと思う。ルイージ氏は実質何もフォローできていなかったので、一人で上層部の注文を背負っていたのである。

復帰したばかりで、上の立場の人に意見する気力もなかったかもしれない。これでまた鬱になるところだった。いや、既になっていたかもしれない。

余談だが、社内だけでなく顧客と良好なコミュニケーションを取るにあたって、職場環境はとても大切だと感じた。
窓のない、空気の悪い環境で楽しく仕事ができるわけがない。覇気がなく、鬱屈な社員が量産されていくわけだ。

というわけで、窓は大事だ。



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