40代目前。半年間の休職が教えてくれた「ウェルビーイングな働き方」【後編】野口結生さんのLife journey
「働き方」それは何歳になっても永遠のテーマであり、ライフステージやキャリアアップなど、様々な状況によって変わるものかもしれません。そんななか、最近では「ウェルビーイング(Well-being)」という概念が、自分に合った働き方を考える上で新たな基準として用いられるようにもなってきました。
2023年10月。株式会社ブライド・トゥー・ビーの取締役COOを務める野口 結生さんは、向こう10年の働き方を考えるために半年間の休職をすることを決めました。
「もともとウェルビーイングに生きてこれたとは思いますが、それがなぜなのかは言語化できていなくて」そんな休職前を振り返る野口さんは、一体どんな時間を過ごしていたのでしょうか。休職中の体験や挑戦、学びから得た気付き、そして再確認したウェルビーイングな働き方についてお聞きしました。
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終わりと始まり、東海ブライダル交流会
━━この半年、様々な”はじまり”がある一方で、約10年間主催者として活動を続けてきた『東海ブライダル交流会』に区切りをつけたとお聞きしました。事前にこのタイミングで終えることは考えていたのでしょうか?
野口:決めていたわけではないけれど、役目を終えたという感覚があったんですよね。
野口:そもそも活動の発端は、ブライダル業界の閉塞感を感じたことでした。前職の人材系と異なり、”同じ業界の人と関わりをもってはいけない”みたいな暗黙のルールのようなものが沢山あって。特にブライダルは平日休みになるので、ただでさえ会える人が限られているのに…と。
活動を始めた当初は誰もそういった交流会をやっている人がいなかったので、せっかくなら一人ずつでも繋がれる場をつくろうと思ったんです。
野口:コロナ前の一番多い時は80人くらい集まったこともありましたね。
━━すごい大人数!それくらい求めている人が多かったんですね。
野口:そうかもしれません。コロナを経てやっと業界的に危機感を覚える人も増えて、今では交流の機会がいろんなところで増えてきたと思います。その流れを見た時に、自分がそこにコミットしなくても未来は変わっていくという安心感と役目を終えた感覚がして。
自分にとって大切な活動だったんですけどね。ちょうどその頃『手放すが先』という学びをFOLKEで得ていたので、今がそのタイミングなのかなって強く思ったんですよね。
━━野口さんは今、新たにその手に掴んだバトンを持って全力で走りきるために、すでに持っていたバトンを次の世代へと渡し始めているのかもしれませんね。
実は、社会人になりたくなたかった人間でした
━━野口さんの発する言葉からは、自分が守りたいと思うものを”成長を伴いながら”守ろうとする想いの強さや「未来を良くしたい」という願いが根っこにある気がします。その考え方は昔からなんですか?
野口:どうなんでしょうね…。ただ、新卒で入社した会社での出来事が原体験になっていると思います。
もともと僕、社会人になりたくなかったんですよ。でも、やってないのに「社会人なんて」って言いたくなかったから、一回経験した上で言えるようになりたいなって思っていたところがスタートで。
━━(休職中にも働いている野口さんからは想像もしていなかったお話…!)
野口:実際に入社してからは「働くの好きだな」って思えたんです。でも、2年目にリーマンショックが起こって。当時勤めていた会社もその影響を受けて派遣の人から切られていき、僕自身も業種が全く違う会社へ出向することになったんです。
その経験から「自分のやりたいことや大事なものは、成果を出さないと守れない」ということを強く感じるようになって。
野口:それからですね。例えダメだったとしても、せめて結果を出すためにやれることはやりきったと言い切れることが大事だと思うようになったのは。実際、出向になった当時も自分なりに頑張ってはいたけれど「何かやり残したことはなかったか?」「やりきれたか?」と聞かれるとそうじゃなかったなと思うんです。
そこから携わる仕事は後悔がないように、やりたいと思うことは徹底的にやるようになったし、大事なものを守るためにやり切ろうと強い想いとしては持ち続けていますね。
20代は自分のため、30代は会社のため、40代は社会のために
━━そんな野口さんが今「社会のための役に立つことがしたい」と言い切れるのは、もしかすると20代、30代で自分のキャリアと向き合ったり、会社にコミットしてきたことで視野が広がったからではないでしょうか?
野口:そうですね。今の働き方になってから、20代は自分がやりたいこととか自分がどうしたいかを考えて、30代になって自分が必要とされて価値貢献できることが大事だなと思えるようになった気がしますね。
僕は、必要とされている場で自分の価値を最大限発揮すること=継続的に長く幸せに(ウェルビーイングに)働くことなのかなって思うんです。
やりたいことや自己実現が全てその職場だけで叶うことはもちろん理想だと思うけれど、なかなかそこまで全て両立できることってなくて。そもそも、その全てを1つの場で満たす必要もなく、その自己実現を仕事で完結しなくても良いんじゃないかと。
━━確かに。「これが叶わないなら」と、真面目な人ほど0か100かで考えてしまいがちだけれど、野口さんのようにどちらにもコミットできる複業をしたり、実は「選択肢は他にもある」と考えるのは大切だな思いました。
野口:もっといろんなところで求めていることを満たせばよいのかなって思いますね。何か一つに依存してしまうと執着が生まれたり、選択肢を自分で狭めてしまうことに繋がりかねないですし。
僕の場合は、この休職を経て、仕事という「働き方」において今の会社で満たせなかった部分を満たす先を見つけられたと思っています。
もちろん、進む中で変わることはもちろんあるでしょうけど、当面の間は両方に支障がない範囲で、やりたいことを叶えるこの軸で進んでいきたいと思います。
━━この休職期間は、この先の10年、どこにエネルギーを注いでいくのか整えていく期間だったのかもしれませんね。今の野口さんの姿は、休職される前に想像した通りでしたか?
野口:どうなんでしょう…。お話したように、あんまり未来がどうなるかって考えてないので(笑)でも、休職が必要だと思ったことは全部できたので。
それから、自分にとって「どんなところで働くのか」はやっぱり大事なんだなと思っていることが明確になりました。
休職期間をきっかけに一度会社を離れ、いろんな世界を知ったことで、改めてブライド・トゥー・ビーはすごく大切な場所で、心地の良い環境なんだなと強く感じた。そんな時間でもありました。
野口:そう思えたのは、この会社には「自分のために」よりも「誰かのために」を考えて体現している人しかいないんですよね。それがお客様のためにだったり、仲間のためだったり。そんな人って、意外と多くはないんですよ。
もちろん自分のために働くことは全く悪いわけではないけれど、僕がどんな人と働きたいのか考えた時、誰かのために一生懸命働いている仲間と働きたいなって。それがここにはあるなと思ったんです。
━━素敵。誰かのためにって、その人の強さがより引き出される場面も多いので、より幸福度高く働くスタッフの姿が想像されました。
野口:活き活きとしているんですよね、本当に。この休職期間は会社のみんなのお陰で頂いたものだと思っているので、この間に得たものをこの先の10年で還元していこうと思います。
あとがき/インタビューを終えて…
「絞っても何もでなくなったスポンジのようだった」休職前を振り返った野口さんは、今、新たにいろんなものを吸収して戻ってきた…というよりも、新たらステージの始まりを迎えたんだなという印象を受けました。
「もしかすると、転職という道もあったのでは?」思わずインタビュー中に尋ねてみると「もしかしたらあったかもしれないけれど、まずは今持っている感情だったり考えを打ち明けてみて、話すなかで考えようと思っていたので最初から”転職”とは思ってもいませんでした」と。その解答には、話にも出ていた”自分では選べない選択と、自分の意志で決める選択”が明確にあったのだなぁと、野口さんらしさを感じます。
30代を迎えた筆者も、どう生きたらいいか分からない20代はとにかく「自分を知りたい」と自分に矢印が向いていた気がします。土壌を耕していた20代を越えた30代の今は少しだけ「これまでの学びをどう役立てたいのか?」と、自分の周りに広がる関係性に目を向けて物事を考えられるようになった変化も。
今回の野口さんのお話を聞いて「どうせ未来は変わっていくけれど、今を良くし続けたい」その連続が、自分も会社も、大きくは社会も豊かにしていってくれるのではないかと思います。単なる「休み」ではなく「蓄える」時間だった休職期間。それを経たこれからの野口さんのご活躍が、より一層力強いものである気がしてなりません。
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