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服をつくるってどうやるの? 〜サンプルができるまで〜

衣服生産のお手伝いをさせていただいていると「服をつくってみたいのですが、服に関する勉強をしたことがないので、何からしていいかわかりません」というお声をいただきます。

そんな方のために、まずはサンプルができるまでにどんなことをすればいいのかをまとめました。自分ひとりで楽しむのではなく、誰かに着てもらう服をつくる前提として書いています。

1:つくりたいアイテムのデザインを決める

何をつくりたいのかを決めます。
デザインを決める人…そう、あなたはデザイナーです。
スカートなのか、シャツなのか、はたまたコートなのか。
つくったアイテムを誰が、どんな人が着るのかを想像します。

アイテムの詳細は絵を描いて説明するも良し、近しい見本の服を用いて説明するも良し。ただし全くそのまま同じはもちろんダメですよ!
忘れがちですが「後ろ姿」も必ず決めてくださいね。縫製する上では裏側がどうなってるかも大事です。
どこにこだわりを持つのか、譲れない部分だけでも決めておきましょう。

2:何を材料としてつくるのかを決める

例えばシャツをつくるとします。
まずは生地が必要ですよね。生地は生地屋さんの見本帳を見ながら決めることが多いです。どんな特徴のある生地を使いたいのか、写真や近しい見本を見せたり、希望の見た目や風合いを伝えると、イメージに近いものを提案してもらえます。
シャツなら生地の他にボタンも必要です。
外から見えるのはだいたいこれくらいですかね。
でも実は衿や袖口がシャキっとするように芯地と呼ばれる布を生地に貼ったりします。ジャケットなどは見えないところにたくさんの資材を使って、美しい見た目にしているんです。ボタンや芯地などは附属や副資材などと呼ばれています。
選ばなくてはいけないことが多いですが、感性を信じて決めてくださいね。

3:パターン作成を依頼する

つくるアイテムとその材料(資材)が決まったらパターンをつくります。
パターンというのは、型紙のことです。
縫製工場で生産する場合は、洋裁用のパターンとは違って、あらかじめ縫い代がついた「工業用パターン」を使用します。
自分のつくりたいものを着るひとのことを想像して、デザインの意図をパタンナーさんに伝えてください。
上手でなくて構わないので、出来上がりの衣服の前と後ろの絵を描いて、衿はこんな感じ、袖はこんな感じ…など、近いディティールの写真をつけたり、具体的な寸法を書いたりして、細やかに伝えてください。
どこがどんな大きさになればいいのか、サイズの見本になる服があればより伝わりやすくなります。

パタンナーさんは型紙そのものだけではなく、縫製仕様書を作成してくれます。実はこの縫製仕様書がつくりたい人とつくってくれる人にとって、とても重要なコミュニケーションツールになります。
縫製仕様書とは、どんな生地や資材を使って、どこをどんな手順で、どんなミシンを使ってどう縫って、こんな寸法で仕上がるようにしてくださいということが記載されている設計図みたいなものです。
パターンと仕様書に差異が無いようにしないと、意図したものが仕上がらないのです。それくらい重要なものだということが伝わると嬉しいです。

4:生地・資材を手配する

パターンが出来上がると、それぞれの資材がどのくらい必要かわかるので、必要な量を発注し、ひとつの袋にまとめるなどしてセットします。
例えばジップパーカーをつくるなら、仕上がりの寸法にぴったり合うサイズで、生地の色にぴったり合ったファスナーを発注するのですが、色も寸法も仕上がりを左右するのでとても重要です。間違えないように注意します。
このとき、仕様書に記載している資材に誤りが無いか、入念にチェックしておきましょう。

5:サンプル作成を工場へ依頼をする

特殊な呼び方だと思うのですが、生地・資材・パターン・仕様書をセットにして工場さんへ送り込むことを「職出しする」と言います。
どれが欠けても生産はできないので、必要な資材をしっかりチェックして依頼します。
ここまで、工場さんとコミュニケーションを取る記述はなかったのですが、パターンが仕上がって、生地・資材が揃うタイミングが分かったら、工場さんへ、この日に職出しをしたいですと予告しておくと段取りが組めます。
ただしこの予告から遅れると工場さんは段取りを総取っ替えするなど、とっても大変なので、遅れないよう上手に準備したいですね。

6:サンプルを受け取って検品をする

出来上がったサンプルを受け取ったら、意図した通りに仕上がっているかを検品します。
仕様に誤りが無いか、寸法は合っているかだけでなく、デザインに対して生地が適正であったか、ベストな縫製仕様であったかなどを検討します。
縫いにくかった部分を教えてもらったり、縫製する目線で提案などももらうと良いように思います。

7:お支払いも忘れずに

初めてのお取引の場合、必ずしも後払いで対応できないことも多くあります。これは信用の問題なので、お取引先さんと事前に話し合いが必要ですね。


ここまでがサンプルができるまで。
どのくらいの期間で出来上がるかはお取引される企業さんによっても違うので、確認をして段取りを組むといいように思います。
初回のサンプルで思い通りに出来上がっていない場合はパターンを修正して2ndサンプルを作成して検討して…と繰り返すことも多いです。
長くアパレルでデザインをしていても、一度で思い通りに仕上がらないことも大いにあります。コツを掴むまでは開発費もかかると思うのですが、本当に作りたいものをこだわって試行錯誤し、自分の好きなものをカタチにして欲しいです。

あなたの衣服生産のヒントになれたら嬉しいです。

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