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3冊目 『「学級崩壊」をどうみるか』

私が大学生のとき、「学級崩壊」をテーマに卒業論文に取り組んだ。
なぜこのテーマにしたのか。それは、一言でいうと、「恐怖」からであった。

大学の講義で初めてその「崩壊」たる教室の映像を見た。
そのときまで、そういう現象も、そういう名前も、何も知らなかった。
もちろん自分自身が小学生や中学生だったとき、教室はそんなのとは無縁だった。
「崩壊」の映像は、一瞬で私の脳の奥深くに食い込んだ。そして、ことあるごとに、その映像がフラッシュバックされた。いくら取り除こうと思ってもできない。こんな「恐怖」を抱えたまま、自分なりの「解決」の手立てももたぬまま、現場になど出られるわけがない。そう思って卒論のテーマに選んだのだった。

一番読み込んだ書籍が『「学級崩壊」をどうみるか(尾木直樹著)』だった
アンケートをもとに量的な分析と質的な分析を行っていたこと。小学校での学級崩壊をひとまとめに捉えず、低学年と高学年のそれぞれの学級崩壊の特徴をまとめていたこと。数ある学級崩壊の本の中で、もっとも分かりやすく、もっとも実態を捉えていると感じたからだ。

漠然とした「恐怖」の輪郭がだんだんとはっきりしてきて、少しだけ、心構えができた気がした。卒論で取り組んでよかったと思った。

ちなみに、このとき、私に著者である「尾木直樹」という方の先入観は一切なかった。そうしてこの本を読んだから、「尾木直樹=実直で純粋な研究者」象ができ上った。何年だかが経ち、テレビの中で見かけたときのギャップは、とても大きかった。元々もっていた素質なのか。それともメディアによって形作られたキャラクターなのかは分からないが、少なくとも私の中の「尾木直樹」は「『学級崩壊』をどう見るか」を書いた純粋な研究者であり、ピンク色のシャツを着てバラエティー番組に出ている人物ではない。

著:  尾木直樹
題:「学級崩壊」をどうみるか

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