器に気を遣えば、コーヒーはもっと美味しく、やさしくなると思う
カフェをはじめるにあたり、『川下コーヒー』なんていう、急に聞き慣れない言葉を使っています。
これは店名でもコーヒーの種類でもなく、『コーヒーを楽しむ考え方』であり、コーヒーライフをより豊かにするもの、です。
では、『川下コーヒー』とはなんなのか。
会社でも事業でもサービスでもものづくりでも、何かが生まれ、それがエンドユーザーや相手に届くまでの流れがあると思います。
川下コーヒーとは、まさにユーザーの手に届いたとき、すなわち、"口にしたときのコーヒー"を指します。
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コーヒーは本当に奥が深いので、人それぞれ持論があるもの。最近では、シングルオリジン、スペシャルティコーヒーといった、きわめて川上側のほうにこだわるお店がメインになってきました。
わかる。
豆によって全然違います。
豆選びこそ、コーヒーの醍醐味のひとつと言っていい。
ぼくもお気に入りの豆があります。
でも、ぼくはこうも思うんですね。
「どんなに豆にこだわっても、口にする瞬間で台無しになることってないですか?」
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川下コーヒーでこだわるのは、器。
昨年は、東京・原宿の天窓さんと一緒に「器と珈琲の研究」というイベントも開催しました。
人はコーヒーを飲むとき、コーヒーより先に器を口に、コーヒーはその上を流れて口の中へとやってきます。当たり前ですね、犬や猫みたいにペロペロと舌では飲まないですから。
では、こう考えてみてほしいんです。
その器が、紙コップだったら?
紙の味、ちょっとしません?
その器が、陶器だったら?磁器だったら?
味、違う気がしません?
日本酒やワインのように、
器、こだわりません?
川下コーヒーとは、そういうことです。
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もうひとつ。
川下コーヒーは、味を楽しむものだけではありません。
いま、プラスチックゴミが世界的な問題になっています。既にアメリカでは、プラスチック製のストローをパスタに替える、といった取り組みをしているお店もあります。
そんななか、コーヒーのテイクアウトに目を向けると、紙コップやプラスチックのコップを用いることが主流です。でもそれは、味も落ちるしゴミになる。実は、あまりみんなが嬉しいものではありません。
ぼくはこの3年間、登山やキャンプといったアウトドアを楽しむライフスタイルを発信するウェブメディアの編集長をしてきました。それを通して、自然の美しさ、素晴らしさを肌で感じてきましたし、ぼくらは自然に生かされている、ぼくら人間が自然の中にお邪魔している、ということに気づきました。人の身勝手で自然を壊すのは、そろそろやめにしないといけません。
誰も嬉しくない仕組みは、できれば排除したほうがいいに決まっています。川下コーヒーは、自然に、環境にやさしくあるためのひとつのアプローチでもあるのです。
なにもテイクアウトを否定しているわけではありません。紙コップではない、プラスチックを使わない、みんながみんなお気に入りのコーヒーカップを持ち歩けばいいと思うんです。
そのためには、器によって味が全然違うということに気づいてもらい、自分好みの器を見つけてもらう必要があるんです。
いつか、街中の人がマイコーヒーカップを持ち、コーヒーをテイクアウトしている光景を見れたらなと、本気で夢見てます。
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自分の好みに合った器で飲むコーヒーは、本当に格別です。
人も環境も、豆の生産者も、器の作り手も、みんなHAPPYになる。
川下コーヒーには、そんな可能性があります。
nagiでは、そんなスタイルを提案し、器とコーヒーの素敵な巡り合わせを届けたいと思っています。
10年先、20年先、未来の住民のために木を植えます。