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縁もゆかりもない地での空き家の探し方

東京出身の僕が「尾道に移住した」と話すと、決まって聞かれることの筆頭は「どうやって物件探したの?」です。

地方、特に都市部ではなく小さな街や集落では、都市部のように"ネットで検索すれば物件情報が簡単にヒットする"、みたいなことはありません。

そんな中で、僕らは運よく「ここしかない!」という運命的な物件と巡り合ったのですが、そこまでに至ったプロセスを共有すれば、これから空き家を探そうと思っている方に少しでも参考になるのでは?と思い、まとめてみました。

あくまで僕らの実例なので、この通りにはならないかもしれませんが参考になれば幸いです。

1.空き家関連事業者に相談する

空き家は現在も未来も、全国が抱える大きな問題となっています。そんな空き家問題をどうにかしようと、各自治体や団体が空き家情報の斡旋していたり、利活用を支援していたりします。尾道でいえば「尾道空き家再生プロジェクト」というものがあります。まずは、自分が移住しようとしている地域にそのようなものがないか確認してみるといいと思います。もしあれば、相談してみましょう。

ちなみに僕らの場合、尾道空き家再生プロジェクトに相談したかったのですが、尾道の山手という尾道の象徴的な坂道エリアが活動の中心で、僕らが探していた向島の立花というエリアは対象外だったので早々に諦めました。

2.キーマンに相談する

そんな団体がなかったり、あったけど良い物件がなかった場合です。

地方のいいところでもあり悪いところでもあると思うのですが、だいたいみんな顔見知りだったりします。知らなくても噂がすぐ回ります。そういう中で「○○さんがいっぱい情報知っている」的なキーマンがその地域にいたりします。尾道にもいました。滞在しているとそういう情報もすぐ耳に入ってくるので、相談してみるといいと思います。


僕らもその方に相談したところ、いくつか物件をすぐさま紹介してくれたのですが、イメージと合わず断念。それでも、同じく空き家を探している移住者たちが空き家情報を交換しているfacebookグループを教えてくれたり、僕らが住もうとしている向島側のキーマンと呼ばれる方を教えてもらったりしました(ただ、「これ以上甘えるのも悪いよな」という謎の遠慮が生まれ、その場で連絡先とかは聞けず)。

3.不動産屋に相談する

土着型の街の不動産屋は地方にもあります。僕らもそこに当たりました。ちなみにその不動産屋も前述のキーマンが教えてくれました。空き家に限らず、普通の賃貸マンションやアパートでもいいという方は、最初っから不動産屋に当たるのがいいでしょう。

ここでも何件か見せてもらったのですが、条件が見合わなかったり物件の雰囲気がイメージと違い、ここでも断念。不動産屋いはく、物件の数の波が激しいから、いっぱいリストがあるときと全然ないときがあるそうで、僕らが相談した時は後者でした。タイミングが合えばここで決まっていたのかもしれません。

4.歩き回る

専門の団体もだめ、キーマンもだめ、不動産屋もだめ。こうなったらもう自力で探すしかありません。僕らはこの最終手段で素晴らしい物件に巡り合いました。

向島をぐるぐると自転車で回っていると、空き家らしくはチラホラあったんです。それでも不動産屋が全てを管理しているわけではないんですね。それならば、ということで最終手段で、歩いて探し回ることに。

空き家らしい物件を見つけたら近くに住んでいる方に、そもそも空き家なのか、持ち主は誰なのか、手放そうとしているのか、等々を聞いて回りました。この時、自転車や車ではなく歩いたことがよかったなと思います。スピードは落ちますが、果敢に狭い道も攻めていけるし、話しかけられる相手と言えば歩いている人くらいなので、その人と同じ立場で対面するのって重要だと思うんですね。あと、「困っている人」っていうのが周りから伝わりやすいような気がします(笑)。

そうやって人一人しか歩けないような狭い路地に入って空き家を探していたら、向こうから冷蔵庫を押す人が歩いてきました。道が狭いので一旦立ち止まって挨拶するしかないんですね。そしたらすぐそこの家に住んでいる方だとわかったので、この地域で空き家はないか聞いたんです。そしたら「僕の奥さんが詳しいよ」と教えてくれ、名前を聞くと前述のキーマンが教えてくれた向島のキーマンその人でした。なんと運命的。

翌日、その方に会いに行き、いくつか物件を紹介してもらったうちの一つが今僕らが住んでいる物件で、来年春にnagiとしてオープンする物件でした。その方いはく、空き家情報を求めて自分を訪ねてくる人はたくさんいるけど、その物件はなぜか紹介してなかったそうです(頭にもなかった)。けれど、僕らとコミュニケーションをとっているうちに「あの物件いいかも」と頭によぎったそうで、それが僕らにとってもドンピシャだったのです。「ジブリみたい」と言われる物件なのですが、もしかしたら僕らがジブリ的オーラを放っていたのかもしれません(なんだそれ)。

でも、そういう巡り合わせってあるんだと思います。物件情報などに書かれているような"スペック"ではなく、その物件が醸し出している"雰囲気"と、その人の"雰囲気"がマッチするというか。これは、空き家探しのとても面白いところなのかもしれません。

空き家を探し始めてから半年後のことでした。

【補足その1】賃貸だけに絞らず、購入も条件に入れる

僕らは住居兼店舗にしたく、がっつり改装もするので、賃貸ではなく購入で探していたんですが、それが結果的によかったなと思います。
というのも、地方は高齢化が進んでいて持ち主がかなりご年配ということが少なくありません。そういう方の意向として、ちまちまと賃貸で貸すより買ってほしい、というのが多いようなんです。はなから賃貸だけに絞って相談していると、そういう情報が除外されてしまうため、良い物件だったら購入も視野に入れるくらいの気持ちで探してみるといいと思います。

【補足その2】女性がいると良いかも

これは仮説でしかないのですが、僕ひとりで歩き回っていたよりも、妻が一緒のときの方が地元の人に優しくされた気がします(笑)。なんとなく気持ちはわからんでもなくて、男一人でフラフラしていても話しかけずらいし、なんか怪しんだと思うんですよね。実は物件を見つけるまで、僕だけで4回ほど空き家探しで尾道を訪ねていたんですが、ぜんぜんダメでした。妻を連れて行ったその日に、前述の細い路地での運命的な出会いが生まれたんです。
これは僕らだけのケースじゃなくて、移住してから同じように空き家を探している夫婦がやってきたのですが、彼らも旦那一人で探し回ってる時より、奥さんが一緒にいた方が話がスムーズだったようです。

空き家探しは、縁づくり。

とツラツラと書いてみましたが、僕らはこんな感じでした。なかには、なかなか思うような物件が見つからず、都度通っていると交通費も時間もかかるので、一旦とりあえず安アパートなどに住んで地元の情報をリアルタイムで得られるようにしてる、という人もいました。半年で見つかればいい方で、1年、2年とその状態の人もいるようでした。

東京から尾道に5回ほど空き家探しで通って交通費も時間もそれなりにかかったし、それなりに大変でしたが、このプロセスはすごく経て良かったなと思います。探してた時に知り合った方々とはもちろん今も繋がってますし、正式に移住したら「お!物件見つかったんだ、ようこそ尾道へ」と最初から歓迎ムードなので、アウェイ感が薄れます。

空き家探しは、縁づくり。

移住後の素敵ライフを夢見て、ぜひ前向きに、地域の方々と交流を楽しみながら探してみてほしいなと思います。

10年先、20年先、未来の住民のために木を植えます。