今のままでは人は滅ぶしかない|映画『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』
本作は、2023年1月に全11回で放送された『大雪海のカイナ』の完結編。
地上は雪海という一面の雪に覆われた世界。
そこから伸びる巨木・軌道樹から広がる天幕の上に住む少年・カイナ。
昔は、天幕の各地に人々が住む村があったが、軌道樹の水が枯れ他の村は次々に滅んでいった。
カイナが住む数人の小さな村も、カイナの他は年寄りばかり。天幕の上にはもう、他の人間を見つけることは出来なかった。
ある日、カイナは狩りの途中で、浮遊虫に乗って意識を失っている少女・リリハと出会う。
彼女は軌道樹の麓にある国・アトランドの王女で、軌道樹の水が枯れはじめ、滅びの危機に瀕した祖国を救う為、不思議な力を持つという賢者を求めて、僅かな可能性に賭けてこの天幕まで登ってきたというのだ。
しかし、 賢者は天幕にはいない。
それどころか、天幕の人間はほぼ滅んでしまっていた。
そして、村の年寄りたちは一つの決断をする。
軌道樹の麓にはまだ、人間がいる。
村の唯一の若者であったカイナが一人ぼっちになってしまわないように。
彼らは、カイナにリリハを軌道樹の麓まで送っていくように伝える。
――降りてしまったら、もう軌道樹を登ることは出来ない。
カイナに、軌道樹の麓にいる人間たちと生きていけるように送り出したのだ。
2人は長い時間をかけて軌道樹を降りていく。
降りていった先でカイナが見たものは。
僅かな水を奪い合い、争う、人間たちの姿だった。
スタッフ&キャスト
監督 安藤裕章
脚本 村井さだゆき 山田哲弥
原作 弐瓶勉
コミカライズ版は既刊3巻。連載中。
制作会社は ポリゴン・ピクチュアズ
カイナ 細谷佳正
リリハ 高橋李依
ヤオナ 村瀬歩
オリノガ 小西克幸
アメロテ 坂本真綾
ンガポージ 杉田智和
ビョウザン 花江夏樹
既視感はあるものの、楽しめたストーリー
TVアニメ版からそうだったのですが、『未来少年コナン』のようであり、『風の谷のナウシカ』のようであり、『新世紀エヴァンゲリオン』のような世界観とストーリー。『猿の惑星』っぽくもあるかな?
まあ、ポストアポカリプスは何度と無く様々な作品の題材にされてきただけに、この辺は仕方ないかな、と。
TVアニメ版では、僅かな水で暮らす小国アトランドと、軌道樹の元にある国を襲いながら水を奪って生活をしている巨大な船団を持つ国バルギアの争いをおさめて、アトランドに残る“賢者の時代”に作られたタペストリーに記されている大軌道樹を目指す、というあたりで終了してる。
映画はその大軌道樹を目指す、というところからスタート。
この世界では文字を読むという文明が失われていて、カイナは、昔、天幕の村にやってきた“文字読み”から文字を習ったという看板爺から文字を習っていて、文字が読める、という数少ない存在。
映画では、軌道樹の水が枯れ始めた理由、そして、文字が失われてしまった故に後世に伝わらなくなってしまった様々なものが明かされていきます。
なるほどー!上手く出来てる!と思わず膝を叩きたくなる展開。
多分、昔の、賢者の時代の人はかなりシンプルに色々作ったと思うのね。
でも、文字が失われてしまって、それが伝わらなかったり、間違って伝わってしまうことまでは、わからなかった。
“奪い合えば足らぬ 分け合えば余る”
という言葉が思い浮かぶ作品でした。
……って、この言葉、相田みつをの言葉なの? やだー。
私は弐瓶勉作品を他に読んだことがないので、他の作品を読んでいたらもっと楽しめたのかな?
手始めに『BLAME!』 とか読もうかな。
ちなみに、この作品プレスコで作られたみたい。
映画っぽい、自然な感じのセリフ回しになってたような気がするけど……あまりリップシンクが気になる映像ではないから、素人にはわかるような、わからないような……(笑)
唯一、この作品の難点は、上映館が極端に少ないこと。
現時点で私が観に行った新宿でも公開1週間でたった2回。
でも、日曜日の昼間の回がほぼ満席だったよ?
少なくない?
やっている映画館少なくない?
おすすめしたいですが、なかなか近くでやってない映画かもしれません。
それが勿体ない。勿体ないなー。
よろしければサポートをお願いします。