受け入れてくれる居場所を求めて|舞台『ようこそ、ミナト先生』
舞台は日永町という不便で過疎化が進んだ田舎町。
町を活性化するために、移住者を呼んだりもしているが、元々の住民と移住組で意見の違いがあったり。
そんな中、町のみんなが頼りにしているのは一年前から町に住み着いた“ミナト先生”。
臨時採用の音楽の先生をしていて、移住組のWi-Fiの調子を見てくれたり、元々の住民の農業の相談にも親身になって考えてくれる。
町外れに一人で住んでいる、頑固な植村さんにも声をかけに行ってる。
だけど、ミナト先生はいつも電話を気にしていて。
みんなが去ったあとに、苛立たしげに物に当たる。
部屋には、まとめられた荷物と骨壷を置いて。
12年ぶりに再タッグを組んだ作品
脚本は金子ありさ。
ドラマ、『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由がらあって』、映画『電車男』『陰日向に咲く』『ヘルタースケルター』『羊と鋼の森』と担当した脚本は多い。
また、今回と同じく相葉雅紀主演の舞台『君と見る千の夢』(2010)の脚本も担当していた。
演出は宮田慶子。
翻訳劇、創作劇、ミュージカル、オペラと多岐にわたる作品を手掛けている。
2018年まで新国立劇場芸術監督、2016年より新国立劇場演劇研修所所長を務めている。
相葉雅紀の主演した『燕のいる駅』(2005)、『忘れられない人』(2007)、『グリーンフィンガーズ』(2009)、『君と見る千の夢』(2010)、今回の『ようこそ、ミナト先生』すべての演出をしている。
出演は、相葉雅紀、松平健、秋元才加、須藤理彩、谷花音、忍成修吾、青木さやか、濱田龍臣など。
エグゼクティブプロデューサーは藤島ジュリーK。
主催・企画制作は東京グローブ座。
松平健の演技がすごい
相葉雅紀の舞台は12年ぶり。
そんなに時間が経っていたか。というのが正直な感想だ。
最初の『燕のいる駅』こそ観ていないが、『忘れられない人』以降は全て観に行っている。
今回の作品は、年月が経って厚みのある役をするようになったな、という印象だった。
そして、舞台の方に本格的に料理されると彼はこんな風になるのか、とも思った。
“相葉雅紀”という人のパブリックイメージのままの役に見せかけながら、複雑な人間性を盛り込んでいく。
今までで1番見応えがあったように思う。
そして、それを際立たせているのが植村役の松平健だ。
とにかく、低音であれだけ通る声を出せるのは流石、の一言に尽きる。
また、事故の加害者家族(相葉雅紀)と被害者家族(松平健)という難しい立ち位置で、家族を失った憤りも見せながら、息子と大きく変わらない年のミナト先生に対して
と、背中を押すラストシーンは、行き場を失ったところに希望の光のように差し込む。
真実は誰も幸せにしてはくれなかったけど、それでも、ほんの少しの希望で立ち上がることができたら。
小さな町は、加害者家族として社会に居場所のなかったミナト先生に居場所を与えてくれた。
居続けることは叶わなかったけれど。
また「ようこそ、ミナト先生」と言える日が来るのかもしれない。
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