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恥ずかしいって気持ちは死ぬことより強かった|漫画『戦争は女の顔をしていない』


500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの主著のコミカライズ。

ソビエト連邦は、第二次大戦時、ナチスドイツと戦っていた。第二次世界大戦中の1941年から1945年にかけての期間、“独ソ戦”や“東部戦線”と呼ばれる戦いである。

その戦いには、女性も従軍していた。
看護兵などのサポート役だけでなく、兵士としても。 

現在のロシアで行われている“戦勝記念日”は、この戦いの勝利を祝ったものだが、彼女たちの語る戦争は、全く違う。 

中でも、私は、1巻のこの話が忘れられない。

夏の暑さ
私たち女性は 二百人ぐらい その後ろを 男たちが 二百人ぐらい
毎日三十キロ進む
私たちが 通った後には 赤いしみが 砂に残った
女性のあれです 隠しようも ありません
足下を見ないように
兵士たちは 後ろを歩きながら 気づかない ふりをする

『戦争は女の顔をしていない』第1巻

渡河点に 着いたとき 爆撃が 始まった
すさまじい爆撃で 男たちは 必死で物に 隠れようとした
私たちにも 逃げろと 叫んでる
でも私たちは 爆撃の音なんか かまわず 一刻も早く 河に着きたい

『戦争は女の顔をしていない』第1巻

水に入って すっかり 洗い落とすまで 水につかっていた
破片が 飛び散る 下で…

恥ずかしいって気持ちは死ぬことより強かった

数人の 女の子たちは そのまま水の中で 死んでしまった

『戦争は女の顔をしていない』第1巻

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ノーベル賞作家作品のコミカライズ

作画は 小梅けいと
この作品しか知らない作家さんだったので、他の配信作品の多くがアダルト作品だったことに驚きました。
「K.TEN」名義でゲームのキャラクターデザインなども行っている作家さんだそうです。

原作は スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ

ベラルーシの作家、ジャーナリスト。「スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ」、「スベトラーナ・アレクシエービッチ」表記もある。2015年ノーベル文学賞受賞。

Wikipedia『スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ』

本作は、彼女の同名作品のコミカライズである。
ちなみに原作はKindleUnlimitedで読むことができる。

出版社は KADOKAWA

掲載誌・レーベルは無し

発売は 2020年01月
既刊4巻。連載中。


戦争は勝っても負けても大きな傷跡を残す

元はと言えば、『最強の女性狙撃手:レーニン勲章の称号を授与されたリュドミラの回想』という本を知ったことから始まった。(すいません、現在も未読)

女性で狙撃手がいたんだ、という驚き。
そして、勝手に現代の話だと思いこんでいた。

設備も何も整ってない過去の戦争に女性が行くなんて思ってなかったから。

しかし、物がなくても、配慮してもらえなくても。
行ったのだ。彼女たちは。戦場に。

初めは、話の端々に妙な違和感があった。
でも、それ以上に次から次へと出てくる証言のインパクトに、その違和感が何かを深く考えずにいた。

落ち着いてくると、わかる。

“戦勝記念日”という言葉にあるように、戦争に勝利したことを祝ってる中で、彼女たちの残酷な体験は口にすることを許されてなかったのだ。

ちなみに、当時は“ソビエト連邦”。
戦場に行った女の子たちは、今のロシアにいた子たちだけではない。
ベラルーシや、ウクライナも引っ括めて“ソビエト連邦”だ。

“戦争が終われば、幸せに暮らせる”

そう夢見て生き抜いた彼女たちに、現在の戦争は、どんな風に見えているんだろう。



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