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ひとり暮らしと、小さなグラス。
私がひとり暮らしを始めたのは、もうじき20代が終わるという頃。
それまではずっと実家暮らし。
学校も実家から通い、ニート時代も会社員となってからも実家にいた。
母には30歳までには家を出ていくようにと言われていたが、強要されるわけではなかった。
私は、実家を出なくてはとぼんやりと思っていたものの、いざひとりで暮らすぞと思うと楽しみよりも怖さが勝り、物件探しにも怖気づいてしまうというありさまだった。
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なかなか進まない一人暮らしへの道。
焦りがあるのに、なかなか行動に起こせない。
そんな時、せめて出来る準備を進めようという思いから、一人暮らしの時に使うインテリア用品を探していた。
「まずはお皿でも買おうかな」と友人に漏らすと、友人が、キッチン用品のWEBショップを教えてくれた。
そのWEBショップには、お皿、調理器具、キッチンウェア、料理にまつわる魅力的なアイテムが数々と取り揃えられており、私はアイテム探しにのめり込んでしまう。
来る日も来る日もアイテム探しをしていた。
よく気になっていたのは、アラビアやイッタラ。
色使い、模様、かたち。
その佇まいに魅了されていた。
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そして、WEBで注文した商品が届く。
届いたのは、イッタラのカルティオというシリーズのグラス。
Kartio(カルティオ)
2018年に誕生60周年を迎えたロングセラー。デザイナーのカイ・フランクにより、人々が毎日使うのに相応しいシンプルな丈夫さを追求し、余分なものをそぎ落としたフォルムは、時代を超えて愛され続けています。カラーガラスを知り尽くしたイッタラならではの、多彩で絶妙なカラーバリエーションが魅力。
手の平で包めるぐらいの大きさのグラス。
口当たり部分がほどよく厚く、丸みがある。
フォレストグリーンという色で、深みのあるシックな緑色がおしゃれだった。
自分で選んだかわいい小さなグラス。
1881年、フィンランド南部のイッタラ村にある、小さなガラス工場で生まれたイッタラ。
時代を超えて愛されているグラスが、日本の片隅で生きる私の元に、やってきた!
これを使える日を思うと嬉しかった。
届いたグラスは段ボールに入れて、引っ越すその日まで、自分の部屋の角に置いておいた。
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そこから引越し、一人暮らしをスタートさせるまで、約3か月かかることになる。
ひとり暮らしスタートにまつわる出来事はどれも色濃くて、イッタラのカルティオのグラスを初めて使った感想はまるで覚えていない。
ひとり暮らしをしてみて分かったことが、数えきれないぐらいあった。
ひとり暮らしをスタートした日が、私の人生の出発地点ではないかとさえ思うほど。
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今は、ひとり暮らしから、夫婦二人暮らしになった。
二人暮らしをしてみて分かったことも数えきれないぐらいある。
フォレストグリーン色のイッタラのカルティオは、残念ながら割ってしまった。
割れたグラスを片付ける時、涙が出そうになった。
また買いたかったけど、フォレストグリーンの色は廃盤でもう買えなかった。
もうすこし長く使いたかった。
暮らしは、これからも、変化しながら続いていく。
カルティオのグラスは今もいくつかある。
今はブルー系の色合いのものが活躍中。
私はいつも、あれば手に取り使っている。
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