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人は見たいものを見てしまう、けど。

珍しく間を空けずに投稿だ。Twitterに下書きしていたらどうやっても140字におさまらなかったので、ここに投げることにした。Twitterのアカウントとこのnoteが同一人格で結ばれることにまだ抵抗があるから、TLには流さないけれど、あのアカウントも、紛れもなくこのnoteを書く私という人間の一部分であることは確か。

何の話ですか?前記事でついにこの趣味に触れてしまったので我慢ができなくなったことへの言い訳です。

本題。今さっきALL BY MYSELF のルサンクを見た。どのシーンも素敵だったし、最後のポスターはだいぶファンの意見を反映してくださったのでは…と思った(笑)。どの写真も観劇した日の感動を思い起こさせてくれる。その中で、1ページだけ、観劇した時と全く違う印象を抱いた写真があった。

ルサンクの30ページ。今からこの1ページについて、ただ、この1ページだけについて、ひたすらに語ろうと思う。


私はカナリヤの場面がいつも切なくて寂しくてたまらなかった。

Special Blu-rayBOXのカナリヤは、曲自体が主役だと思う。初めて歌詞を見た時、「あぁ、退団されるのか…」と思ったことは否定できないが、それでも、明るい光と空と風の中で自由に舞う姿に、悲しい気持ちを吹き飛ばすような爽やかで軽やかな心地よさを感じた。

だが、ABMは違った。公式に退団発表があった後というのももちろんあるのだろうが、寂しく、切なかった。少なくとも、客席に座っている時はそう思っていた。

それまでの華やかでカラフルなお衣装から一転、彩度が落とされたお衣装で舞う姿。
観劇するたびに、目の前にあるものを少しも取りこぼしたくないと思い、オペラグラスを膝に置いて自分の目と耳で感じ取れるもの全てに集中した。
だから知らなかったのだ。その時、どんな表情をされているのかを。

ルサンク30ページ。SILVER MEMORIES 。

なんと晴れやかな表情だろう。

知らなかった。こんなに晴れやかな笑顔を浮かべている瞬間が、このシーンにあっただなんて、知らなかった。

Special Blu-rayBOXのカナリヤが晴天ならば、ABMは曇天だと思っていた。今にも雨が降り出しそうな。
そんな曇天の中、雲の隙間から一筋の光が降り注いだような、明るく晴れやかな笑顔。

舞台の中で舞い動く銀色。SILVER。

銀色は、灰色が光を持った色だ。ある時は光を反射して白く光り輝き、またある時は鏡のように目の前のものを映し出す。
スポットライトを浴びる彼女。映し出された「あなた」と「わたし」。
音楽学校ポスターの彼女自身と窓ガラスに映る彼女。
公演ポスターのブルームと鏡台に映る彼。
彩度を落とした、と思っていたお衣装だって、今、トップスターとして旅立とうとしている彼女がこの曲で身につけるに相応しい色は、これ以上ないだろう。

私は客席で何を見ていたのだろうと思った。寂しい、という思いが先行して、そこにないものを見てはいなかったか、と自分に問い直した。客席で得られるものはその一瞬、その場限りのものだ。幕が降りれば頼れるのは自分の記憶しかない。

退団公演。その次がない公演。
そこで、そこにはないものを見てしまわないように。
あるものを、私の好きな人が生み出してくれたものを、そのままに受け取れるように。

人間は見たいものを見る生き物だ。分かっている。
それでも、できる限り気を付けていたい。舞台からいただいたものを、できるだけ形を変えずに、大切に心の中にしまっておきたい。
寂しい、寂しいという心に背を向けることが正しいとは思わない。それも大事な気持ちだと思う。
けれど、客席に座り、物語に没頭するその間だけ、純粋にその物語を受け取ることができたら良いと願うくらいは、いいんじゃないかなぁ。

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