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愛知から学ぶ、今必要な着眼点〜働き方と地域の多様化の時代〜

コロナが5類になり、1年が経った。その中で、オフィスへの寄り戻しが起こっているという報道もある中で、一方で明らかにコロナ前と比較すると、テレワークやオンラインミーティングの市民権は確実についた。今からワーケーションを考える上で、どういうことを考えていくべきなのか。今回はワーケーションというワードではあまりフィーチャーされなかった愛知県を舞台に考えていこうと思う。

愛知県は豊かなライフスタイルを送れる地域、その現状と課題

愛知県の日本人の流動について、2020年以降、転出超過が拡大するようになった。

そもそも何故愛知県なのか?私の妻の実家が愛知県内にあることで状況を知りやすいという理由もあるが、製造業が中心でありながら大都市・名古屋を抱えている。日本で3番目の規模の大都市圏だ。県内の地域は多様。しかし、ここ最近は日本人の転出が増加しており、様々な課題点も抱えている。

愛知県の外国人の流動について、日本人と異なり、大きく転入超過となり、日本人の転出超過を打ち消している。

愛知県では、ここ最近の流れは特に関東圏への日本人の転出が拡大しており、関西圏への転出も拡大している。東海地方からの流入はあるものの、それを庇いきれない状態で日本人は流出している。ただし、それを全てカバーする形で、海外からの流入があり、トータルで見ると転入超過となっている。非常に極端な状況だ。

つまり、日本人にとっては少し働きづらい地域になりつつあり、関東圏への流出が止められなくなっている。ここで、ライフスタイルや働き方について、考えていかなければならない状況にもなってきているのだ。

愛知県は様々な景色や都市の多様性があり、県内で多くの環境を手に入れることができる。

愛知県に縁が少ない方は、想像が難しいかもしれないが、愛知県はそもそも県内であらゆるものが完結する。たとえば海辺や離島などの環境は知多半島や渥美半島に、山間部の環境は東部にある。そして名古屋だけでなく、岡崎・豊田・豊橋などの個性的な都市が並び、実際県内でも別の文化と思っている地域圏が多く、非常に多様性に富んでいる。それだけ本来は豊かなライフスタイルを送れる地域なのだ。

愛知県庁の動き 「休み方改革」プロジェクト

愛知県「休み方改革」プロジェクト特設サイトのトップページ。

そういう中で、愛知県庁には「休み方改革」のチームが立ち上がった。そして、特徴的なのが、なんと運営事務局が、観光コンベンション局観光振興課であるということだ。

愛知県「休み方改革」プロジェクトの概要
・あいち県民の日(11/27)・あいちウィークを契機とした「休み方改革」の推進
・休暇を取得しやすい職場環境づくり
・家族と子どもが一緒に過ごせる仕組みづくり
・平日や閑散期への観光需要のシフト
・地域が一体となった「休み方改革」の推進。

引用元:愛知県「働き方改革」プロジェクト特設サイト

愛知県「休み方改革」イニシアチブとは
愛知県「休み方改革」イニシアチブとは、経済界・労働界・教育界とともに、「休み方改革」を通じ、ワーク・ライフ・バランスの充実と生産性向上による地域経済の活性化を目指す運動です。
「休み方改革」につながる取組の実施を県民及び県内企業・団体に働きかけ、賛同を得ながら、県全体での「休み方改革」を推進していきます。

引用元:愛知県「休み方改革」イニシアチブとは

この中の取り組みとして、愛知県ではワーケーションが位置付けられている。つまり、各自治体が今までやってきたのはあくまで受け入れ側の取り組みであったが、愛知県の考え方は「受け入れ側もやりつつ」「県内企業の働き方の多様化」を考えていくというものである。

こういう自治体はまだ非常に少ないので、今後の愛知県庁の事業の取り組みについては非常に注目していきたいところだ。

「待っていました」と言ってもらえたワーケーションMEET UP

2024年4月26日に開催したワーケーションMEET UP in 名古屋の懇親会の様子

日本ワーケーション協会では、2023年6月より各中心都市を中心に「ワーケーションMEET UP」を実施している。これは「ワーケーションをキーワードに繋がる」をコンセプトとしたもので、実践者・事業者・受け入れ側の地域関係なく、とにかくワーケーションに関心のある方々が集まるイベントだ。

そして、このイベントは非会員も対象とし、一部地域では地域住民への割引も実施しているため、地元の参加率が高い。2024年4月26日に名古屋市内で初開催を行ったが、名古屋市民・愛知県民・岐阜、三重、静岡の東海3県全てを合わせて全体の80%を占めた。

実際にこのイベントの参加者は、東海地方(静岡県を除く)の参加者は全員初参加であった。常日頃からワーケーションをしていたり、そういう働き方をしたいと複業をトライしたり、様々な状況で自分自身を見つめている方が多かった。

ワーケーションMEET UP in 名古屋では、参加者の1人のサイボウズ名古屋オフィスにお邪魔した。

愛知県や名古屋の特徴は、地元が好きという方が多いので、地元でワーケーションに関心のある方の繋がりを作ることができることが非常に貴重な機会だったようだ。そのため「待っていました」という声が圧倒的で、日本ワーケーション協会の目線「ライフスタイル・働き方の多様化」が愛知県や名古屋では非常に必要とされていることを感じたのだった。

名古屋で働き方を考えるイベントが増える

2024年4月13日に実施された、大ナゴヤ大学と連携して実施した「在宅ワーク、コワーキング、ワーケーション~「働く場所」から働き方の現在地を考える」の議論の様子。

日本ワーケーション協会でも、2024年4月より、スノーピークビジネスソリューションズが展開する「Camping Office osoto COLLEGE」に協力をしている。また地元の大ナゴヤ大学(NPO法人 大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワーク)とも連携して、名古屋市内の方々に、自身の働くを考えてもらうイベントを始めた。

大ナゴヤ大学の山田卓哉さん。人が集まり、学ぶ・学び合う場を名古屋で運営している。

たとえば、2024年5月24日には、「【Camping Office osoto COLLEGE】osoto session #2 スノーピークと考える「柔軟な働き方とは?」」を実施。日本ワーケーション協会からは、近場のワーケーションとしてマイクロワーケーションの考え方を提唱する大嶋佑典さんが登壇をした。

大嶋さんも毎日マイクロワーケーションをするわけではありません。重要なのは、慣れきった停滞にブレイクスルーを起こすこと。「今の私」あるいは「今の私たち」の状態感をきちんと察知し、その感情に素直でいることと、それに対してどんなに些細でも「変容の行動」を起こすこと、という話が出てきました。

引用:【Camping Office osoto COLLEGE】 osoto session #2 スノーピークと考える「柔軟な働き方とは?」イベントレポート

大嶋さんも関東地方にお住まいではあるが、愛知県出身ということもあり、その感覚が非常に伝わりやすい。愛知県には多彩な近距離でワーケーションをできるエリアがあり、都市ごとの地域性もあるので、マイクロワーケーションには非常にピッタリ。リクルートじゃらんリサーチセンターによると、愛知県民に「ワーケーションで行きたいところ」の調査で第3位が愛知県だったほどだ。

愛知県の方に尋ねた「ワーケーション」で行ってみたいエリア。第3位は愛知県でその割合も高く、近距離のニーズが高いことが伺える。

その他、NPO法人大ナゴヤ大学と連携して「在宅ワーク、コワーキング、ワーケーション~「働く場所」から働き方の現在地を考える」を実施。私と、神奈川県小田原市に拠点を持ち、副業サラリーマンと自称する渡辺将大さん(日本ワーケーション協会公認ワーケーションコンシェルジュ〜小田原〜)も交えながら話した。

名古屋では、自分と同じ目線になって話せることが非常に重要であり、私自身も一緒に企画を考える際に、山田卓哉さんと米村悠さんにアドバイスをいただいて、この2人を選定した。どうしても大きな話になりがちなワーケーションだけど、本質はライフスタイルや働き方であり、身近な存在の方がやってる方法を聞くことが最も最適解である。名古屋では2人が丁度良かったのだろう。

日本ワーケーション協会公認ワーケーションコンシェルジュ(小田原)の渡辺将大さんは、サラリーマンでありながら、小田原のUターンやリモートワーク、ワーケーションを通して変わった人生を語る。

あいしずHRから、愛知県東部と静岡県西部の企業の在り方を考える

2024年5月10日に愛知県豊橋市て開催された「企業がイノベーションを起こすには?〜越境・協創・対話が変えるビジネスマインド」

愛知県東部(東三河地方)では、静岡県西部(遠州地方)の浜松と連携して「あいしずHR」というコミュニティが立ち上がった。愛知県豊橋市と静岡県浜松市を中心に「地域にやりがいのある新たな仕事や活躍の場を創出する」有志のコミュニティだ。浜松を拠点に作家、ワークスタイル&組織開発等で活動する沢渡あまねさんらが発起人となり立ち上げた。

あいしずHRの立ち上がったコンセプトを語る

ここでは両地域の意欲的な方々が集まる。私も実際に、愛知県豊橋市で2024年5月10日開催された「企業がイノベーションを起こすには?〜越境・協創・対話が変えるビジネスマインド」に参加した。

この日は、かなり多くの豊橋と浜松の企業人が参加しており、冒頭の発起人でもある沢渡あまねさんのお話もかなり興味深く聞いていた。地元企業のこれからを、地元企業でしっかりと強く考えているのは非常に特徴的だ。そして、ディスカッションでは熱いプレーヤーの皆さんが課題について語り合った。

愛知県豊橋市、静岡県浜松市の企業人を中心に今の組織の課題についてディスカッションする。非常に高い盛り上がりを見せている。

越境学習の考え方を広く進めていこうとしている。それは即ち、今までの製造業社会に残る、古き考え方をイノベーティブにしていき、企業力を地域で上げていこうという考え方にも直結する。都道府県を超えて、豊橋と浜松で考え合おうという地域を超えた民間主導の取り組みだ。

#あいしずHR発起人の沢渡あまねさんの活動も是非以下のリンクもご参照いただきたい。


愛知県の付随する取り組みや場所

愛知県岡崎市にある「Okazaki Micro Hotel ANGLE」は岡崎市内の人気拠点の1つ。地域内外の方が行き来する。

愛知県内では、付随する取り組みも多い。岡崎市では、先述した「Camping Office osoto」を立ち上げた飯田圭さんが活躍する。地域内の素材を活かして、企業研修などの受け入れが活発だ。最近は6部屋個室の宿「Okazaki Micro Hotel ANGLE」、宿の1階にあるカフェ「Park Side Cafe」を運営する。

私も岡崎には滞在をした経験があり、「Micro Hotel ANGLE」を拠点に繋がりが広がった経験がある。愛知県内では、地域に根付く活動を行う方と繋がることで、広がりが増えやすいという特徴があり、活動する方々のネットワークもある。

田尾大介さんと「喫茶、食堂、民宿。なごのや」で打ち合わせ。大変お忙しい中でも、商店街の活性化など奔走されている。

名古屋市内の円頓寺商店街の活性化に取り組み、「喫茶、食堂、民宿。なごのや」を運営する田尾大介さん。名古屋を中心に訪日外国人客向けツアー企画・販売、東海地域を中心に地方自治体や観光施設向けインバウンド観光戦略策定や着地型コンテンツ制作のコンサルティング・プロデュースを実施。幅広く活躍をされている。

この2名は日本ワーケーション協会の公認ワーケーションコンシェルジュにも認定をしており、愛知県のワーケーションの底上げの活動を共にしている。

名古屋駅(名駅)付近のコワーキング・プロコワではどのようなコワーキングを目指すべきなのか?の打ち合わせに参加。名古屋市内では今、コミュニティを見つめ直す動きが活発だ。

その他、名古屋市内にはスタートアップ拠点としての、なごのキャンパスやStation AI(2024年10月・鶴舞にオープン)などの企業家コミュニティを有する施設もあれば、コワーキング(協働)の本質を追求する、プロコワやVoltage 名古屋などの人が集まるコワーキングもある。

他にも愛知県内の里山エリアの取り組みが進んだり、伊勢湾に浮かぶ離島でもワーケーションを考える取り組みが始まっている。

愛知県の三河湾に浮かぶ離島・日間賀島。

地域外から愛知県内に訪れても繋がれる拠点地域は多くあり、また愛知県内の方は、地域を理解して話していくと溶け込むスピードはかなり早い。閉鎖的と言われることもあるが、それは愛知のことを理解して接することで逆転し、非常に繋がるスピードは早いものだ。

三重県のプレーヤーが愛知県岡崎市に集まり、ディスカッションするイベントも実施された。

広域のイベントでは岡崎市で三重県のプレーヤーが集まって議論するイベントを実施した。少しずつだが、繋がりを意識して、この地域で考えていく取り組みは官民問わず増えている。

愛知は2つの視点で動きがある数少ない県域

私自身も、名古屋市内では「働き方」に関するディスカッションする機会が非常に多い。興味のある方々が多いので、議論が非常に活発だ。

ライフスタイルや働き方の多様化を考え、それらに応える拠点地が存在する。実際の今の愛知県の動きは、日本に足りない動きを目指していると言える。何故なら、今の日本は「地域に呼び込むだけの地域」か「働き方の多様化を考える取り組み」のどちらかの地域が多いが、愛知県は全体で両方向での取り組みが自然と起こってきているのが特徴なのである。

両方ともを考えていくことで、ライフスタイルや働き方の多様化を捉え、試しにできる地域がある、ということを実感することができる。今の愛知県では、そのような動きが自然発生的に起こっているのだ。それは一種の愛知県の今の状況に対する危機感から考えていかれている部分も大きい。

当協会ではこれからも愛知の皆さんと一緒に、愛知らしいライフスタイルや働き方の多様化を通して、手段としてのワーケーションの良さを広げていきたいと考えている。

愛知県岡崎市のOkazaki Micro Hotel ANGLEにて、飯田圭さんとスタッフの方と。「ライフスタイルや働き方の多様化」と「地域共創」が掛け合わさる。愛知県の今の自然な動きは、実際は今の日本の多くの地域に必要な流れだと言える。

そして、今の愛知の状況は、アフターコロナにおける日本のワーケーションを考えると非常に重要だ。私はワーケーションは「ただの地方創生事業ではない」と繰り返している。「ライフスタイルや働き方の多様化」と「地域共創」がかけ合わさって初めて意味があり、地域のエゴを押し付けるものではない。

両方の動きをしっかりと自然と考えているのは、アフターコロナのワーケーションにおいて非常に重要な段階だ。この着眼点を持つことが重要となる。今後、自然と始まる愛知のような地域が増えることを期待したいと共に、今度も愛知の動きには目が離せない。

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