最近の記事

舞うこと

寒さに抗うように内側の美しさを増し 何度も "自由" に思いを馳せて その時が来たら、秘めていたものを これでもかと解き放つ 想いを身体の動きへ昇華すること、或いは身体の動きを想いに落とし込むという行為がいつもとても魅力的に映って、その美しさにあこがれてしまう 世界にたった一つのもの同士が混ざり合う時の輝きが眩くて。 踊りを習っておけばよかった、と思う瞬間が何度もあった。筋力は無いし、必死に真似しようとしてももったりした動きしかできない。 あの子のように踊れたらどんな景色

    • まっくろでつやつやな魔法の箱のきみへ

      鍵盤に触れると 心の蓋がぱかりと開く音がする 旋律にのせて、鍵盤の上で ほんとうの自分が躍っている気がするのです 時には怒ったり、泣いたり、髪を振り乱したりして それでも踊っているのです きみは鏡写しの友達のようだね 音にすべてが表れるから時々少しこわいけれど 内と外を繋げてくれて 音の向こうに誰かが居ることに気づく そうやって、正しい姿勢を取り戻す どんな時でもきみが寄り添ってくれるのは きみが誰よりも 独りの夜を知っているからなのかもしれないね

      • 畳だった居間のこと

        「ただいま」 数か月ぶりに帰る実家 廊下の突き当りにある 祖母の部屋だった和室に直行する。 椅子に座るのも億劫になってしまって、長旅で疲れたからだをそのまま放り投げる。い草の懐かしい香りとさらさらとした感触に身を任せる。 どんな姿で寝そべっていても、畳はいつも受け止めてくれた。 へりが小さな段差になっていて、鼻歌を歌いながら歩いていた祖母はよくそこに躓いていた。転ばないでね なんて心配しつつ、小さかった私はその上を綱渡りのように歩いて遊んでいた。 いつだっただろうか、

        • 洋梨の紅茶

          ティーパックをお湯にぽとんと落とすと ワインレッドのような茶葉の色がじんわりと染み出してくる ほんのり甘い香りが鼻をくぐる 最初から冷たい飲み物は心地よさを与えてくれるのに あたたかかったものが冷めてしまったとき 心まで少しひんやりと寂しくなってしまうのはなぜだろうか 中学3年生の冬 手が悴む早朝に母が淹れてくれたミルクティーは 冷めてもずっと、あたたかかった

        舞うこと