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熊本地震に見た、災害対応の変化・進化『PUSH型支援』

おはようございます。
今日、4月16日は、
『平成28年熊本地震』の本震からちょうど7年が経ちます。

直接死された約50人の方々、災害関連死された約200人の方々に、追悼を捧げます。

桜が舞い、暖かくなってきたこんな良い季節に、地震は起こりました。
予告なく起こる災害に、多くの人たちの生活が一変しました。

ぼくたち北九州市でも、同じ九州内の政令市の被災ということもあり、ゴールデンウィークの頃までは、災害急性期の対応をしておりました。


熊本地震は、震度7が2連発という、観測史上唯一の出来事でした。
4月14日前震があり、その2日後に、本震がありました。
ある意味、この前震のおかげで命が助かった人も多かったと聞きます。
2日前の記事です。


熊本地震により、地震発生確率の考え方や、『余震』の捉え方が一変しました。
ちょうど1年前に書いたこの記事もご覧ください。


その他にも、熊本地震で大きく変わった『災害対応』がいくつもありました。ほんの一部ですが、書いてみます。

ぼくは、北九州市の防災担当の職員として、本震当日から熊本市役所に入り、支援活動を行っていました。

7年前の出来事について、ぼくから見た目線での時代のアーカイブとさせてください。


今日のテーマは『PUSH型支援』について書いてみたいと思います。

以前からあった考え方ではありますが、東日本大震災のなかで、確実に組み上がってきた『支援』のありようです。

突然の災害が起こると、
水や食料をはじめとした、生きていくために必要な『物資』のニーズが高まります。

水道からは水が出ないし、電気も点かない。物流は途絶え、モノが無くなっていきます。

そこで大切なのは『備蓄』ではありますが、すぐに底を尽きます。
だから、他の地域から『送ってください』という作戦になります。

この現場のニーズに応じて、物資を要請し、送ってもらうことを『PULL型』と呼んでいます。
『引く』方ですね。現場のニーズから動きがスタートします。

熊本地震のとき、ぼくの3つ目ぐらいの任務は、状況不明な避難所の確認でした。
全国ニュースで、『水』『SOS』と運動場に描かれた避難所の様子をヘリコプターで撮影されています。
ぼくもそれを見ました。
大変なことが起きている。
そのニュースを見て、全国から物資がたくさん送られたそうです。
その映像は何度も使われました。
てんてこ舞いの災害対応本部にも、どうにかしてやれって、抗議の電話がどんどんかかっていたそうです。
なので、ぼくはその現場を見に行くこととなりました。

行ってみると唖然としました。

物資が山積みにあるのです。
足りないものはありませんか?って問うと、いや、特にないですって、逆に、置き場所がなくて困ってるほどでした。

つまり、
『時間差』があるのです。

欲しい時には、無く、
事足りた後には、その情報には何の価値もないんです。

つまり、『PULL』型の情報は、スタートした時点で、刻々とタイムラグを積み上げていくのです。

現場を見て、こういうことなんだなと実感しました。

だからこそ、PUSH型で支援物資を送ることが大切です。
「ほしい」と言われてもないのに、
「これが要るだろう」と勝手に送り付けるようなものです。

でも、それぐらいのタイミングでしないと間に合わないのです。
支援物資は『PUSH』型で送る、というのは覚えておいてほしいと思います。

義援物資が集まってきます。
良かれと思って、服や保存食料や生活必需品などが細々集まってきます。

とても申し訳ない状況ですが、
ほとんどが廃棄処分となるでしょう。
小さな梱包のやつは、邪魔で仕方ないんです。
運びにくい、渡しにくい、配りにくい・・・。


ぼくの2番目ぐらいの任務で、災害物資の物流拠点に行ってみました。
1kmぐらいのトラックの渋滞ができています。
荷下ろしするところで詰まるんですよね。

想像してみてください。
荷物いっぱいに物資が入ったコンテナを載せたトラックが到着します。
後ろのドアを開けると物資がいっぱいです。

みんなでリレー方式で、順に荷物を降ろして、運んで、どこかその辺に順に積んでいきます。
荷物下ろして、運んで、積んで、かなり時間がかかります。
次のトラックは待っています。

現場に着くことが大切なのに、降ろす時点で、この手間です・・・。

さらにイメージしてみてください。
物資を積むときって、どんな風にしますか?
大きな段ボール、小さな段ボール。
重たい荷物、軽い荷物。

大きく重たいヤツは下に、小さく軽いヤツは上に。
そうなりますよね?

でも、降ろすときは、上から順にしか降ろせません。
ピラミッド型に積み上がって持ってきたはずなのに、混乱した現場では、逆ピラミッドに積み上がってしまうんです。

はい!ストップ!!
ちょっと待てと。

『パレット』に載せて持ってきてくれと。
『フォークリフト』でパレットごと持ち上げて、セットにして置いていくんです。
そしたらまた出すときも楽でしょ。

※フォークリフトとは、小型重機で、二本の腕みたいなやつがついていて、重たい荷物も簡単に持ち上げて、運んでくれるやつです。パレットっていうのは、その下に敷いてある板というかブロックみたいなやつです。

ここで民間さんの力が投入されていきます。
随分とスムーズになりました。

こういうところでも、バラバラな荷物があると困るんです。
同じ箱が同じように積み上がっている方が助かるんです。

こういうときは、義援物資より、こうした物を調達する義援金にしていただけると助かります。

こうした物資をPUSHで送り始めるというのが、熊本地震でも確立された動きのように思いました。


ぼくたち自身もそうですが、
呼ばれたわけでもなく、支援に駆け付けました。
PULLを待っていてはどんどん時間が過ぎて行ってしまいます。

でも、一方で、枠組みの無いPUSHは困ります。
災害ボランティアもそうですが、ボランティアセンターを立ち上げれてもないのに、何かさせてくれ、まだか、っていう問合せがどんどん入ってきます。
PUSH型の支援で気持ちはありがたいのですが、状況説明して対応しているその5分間、別のことにあたらせてやってください。災害対応本部は、それどころじゃないんです。


4/16に、もっと、色んなテーマを書こうと思ったのですが、
もう既に2,500文字・・・汗
今回のテーマは、PUSH型支援のことだけにしておきますね。
また、タイミングを見て、書かせていただきます。


災害対応は、時間との戦いです。
タイムラグは天敵です。
後手を踏むのも最悪です。
だから、先手先手でPUSH型の支援が重要です。

でも、モノややり方によっては、現場を混乱させるだけなので、ご注意してほしいと思います。

被災した地域を思う『気持ち』のPUSHを持っていたいと思います。


今日もご覧いただきありがとうございます。
冒頭の熊本城の写真は、清水らくは|noteさんの作品を使用させていただいています。ありがとうございます。
本震の翌日、明るくなって、壊れた熊本城を見上げました。熊本県民の心のシンボルと聞きます。復旧して良かったです。



<1年前の”今日”の記事★>

1年前ですね。
こんな防災がしたい。そう発言させていただき、多くの仲間たちが北九州で結集しています。
『防災Lab.北九州』というチームを結成しています。

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