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Little Women: I should have been a great many things.

2020年春に公開が予定されていた映画の多くが、公開の大幅な延期を余儀なくされています。そんな作品のひとつが、アカデミー賞にもいくつかノミネートされていた「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」。3月末の公開をとても楽しみにしていたので、悲しさのあまり夜な夜な枕を濡らしているところでございます。(新しい公開日は初夏の予定との事)

原作はもちろん、ルイーザ・メイ・オルコットの「若草物語」。19世期後半、南北戦争時代のマサチューセッツ州コンコードを舞台に、四姉妹のメグ、ジョー、ベス、エイミーの成長を描く、文芸作品です。原題はLittle Women(小さな女性たち)なのですが、1930年代ごろに付けられたという若草物語という邦題がとにかく絶妙ですよね。

どちらかと言うと日本ではキラキラとした少女文学、というイメージがあると思いますし、まぁ実際わたしも遠い昔、少女の頃に夢中になって読んだものです。作家志望の次女ジョーに憧れ、わたしも作家に!と意気込んでいた事もありましたが、未だ処女作が書けておりませぬ嗚呼。

これまで幾度となく映画化されてきたこの作品、かのエリザベス・テイラーが生意気すぎてイライラする四女エイミー役を演じていた1949年版も好きなんですが、世代的にはやはり1994年版。ジョー役にウィノナ・ライダー、三女ベスはクレア・デインズ、エイミーはキルステン・ダンスト、お母様役にスーザン・サランドン、隣人であり良き幼なじみのローリーにクリスチャン・ベール、そして忘れちゃいけないベア教授には、渋すぎる名優ガブリエル・バーン!1990年代を代表する豪華すぎるキャスト陣にまず鼻血が出そうになるわけです。アイルランド人のはずのガブリエル・バーンのドイツ語訛りの英語がなかなか良い味出しているのと、とにかくクリスチャン・ベール様が瑞々しく若々しくお美しいので、それだけでも一見の価値あり。(マシニストの骨と皮しかないクリスチャン・ベールがトラウマになったら、是非こっちを観てリハビリして下さい)

おっと、ちょっと脱線しましたが...なぜこの映画を今熱く語りたくなったかと言えば、先日の国際女性デーによるところが大いにあります。そもそも作品そのものが名台詞の宝石箱状態なのですが、こういう話題の時に特に思い出すシーンがあるのですよね。

作品の主人公、次女のジョー。女性が仕事を得て独立し、好きな事をする、という事が当たり前では無かった時代に、もどかしい状況を打破するために家を離れ、大都会ニューヨークで作家としての未来を切り拓こうとしていきます。しかし、現実は当然甘くない。出版社では女だから、という理由だけで作品を読んでもらう事すら断られ、男性だらけの下宿先でも肩身の狭い思い。

ある夜、下宿の居間にて男性達が女性の参政権について議論しています。唯一の女性であるはずのジョーは議論の蚊帳の外。やっとの事で意見を述べた彼女に対し、帰ってきた答えは「君は弁護士になればよかったのにね」の一言。一同の笑いを誘いますが、そこで彼女が放ったのがこの言葉。

Joe: I should have been a great many things.
  私は、色々な素晴らしい者になれたはずですわ。

この名台詞を事あるごとに思い出すのです。

should have +過去分詞形 【〜すべきだった(のにしなかった)】のお手本のような一文。試験に出がちな構文ですねぇ。

何気ない返答なんですが、色々な思いが含まれていると感じます。

どれだけ能力や可能性があろうと、女性である、というだけで選択の自由さえ与えられない時代。参政権の話以前に、弁護士はおろか作家ですら女性の役割ではなく、就ける仕事など、そもそも本当に限られていたのでしょう。

ジョーが内心、「はぁ?それ冗談のつもり?なれるもんならなっとるわい!なりたくても女だからって理由でなれないっておかしいでしょ!大体参政権だって同じ話だし、あんたあたしの話聞いてなかったの?ゴルァ」と思っていたかいなかったかはフィクションなので分かりませんが、今この映画を見てみると、この一言にはそんな女性としてのモヤモヤや人権のテーマがギュギュッと詰め込まれている気がするんですよね。

2018年に話題となった医学部入試の女性差別問題には未だにショックを覚えますが、幸い今はもうそんな時代ではなく、(ないはず、いや、あってはいけない!)男性だろうと女性だろうと、堂々と生きていける世の中になっていっていると信じたい。

子供の頃無邪気に楽しんでいた映画ですが、今こうして観てみると、なかなか鋭い事に気付かせてくれます。初夏公開の「ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語」では、こんなご時勢を反映して、さらに突っ込んだ解釈がされているようなので、とっても楽しみでっす!

おまけ: 全く関係ないですが、検索エンジンで若草物語、と入力すると、「若草物語、エイミー、嫌い」と出てきたのには笑いました。わーかーるー!

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