Marriage Story: She's always inexplicably brewing a cup of tea that she doesn't drink.
身近な人だけが知っている、なんだかよく分からない自分の癖や習慣ってありますよね。
わたしは食事の時、準備が整い食卓について「いただきます」を言った後に、98%の確率でまた「あっ!いけない」と、すぐに席を立ってお茶を入れに行きます。戻る頃には大抵よそったご飯が冷めております...。だったら先にお茶も出しておきなさいよ、とわかっちゃいるけどこれがわたしなの。
さて話は変わりますが、ますますNetflixにお世話になる事が増えた昨今、アカデミー賞にもいつのまにかNetflixオリジナル作品が多く絡むようになりましたね!今年は計24部門がノミネートされ、制作会社別では1番多かったとか。凄い時代ですな...
そのひとつが、6部門ノミネートされていた「マリッジ・ストーリー」。(ローラ・ダーンが助演女優賞を受賞しました。なんだか腹の立つ弁護士役、きぃー!とイライラするくらいハマってました)
マリッジ・ストーリーというタイトルでありながら、なんだよ実際は離婚ストーリーじゃないか!とテレビに向かってリモコンを投げつけたくなるような、胸がぎゅっと苦しくなる展開。(わたしは投げていないのですが苦しくて一回観るのを止め、後日途中から観ました。新しい映画鑑賞のカタチ...)
物語のスタート、素敵な家族なんですよね!夫婦お互いの長所を言い合い、息子との仲睦まじい3人家族の姿がテレビいっぱいに広がり、はぁ、結婚って、家族って、いいもんだなぁ、わたしも今日は息子が保育園から帰ってきたらギュッと抱きしめて、ついでに夫も抱きしめちゃお、とかなんだか思っちゃう。あーいい感じ。
ところがどっこい、始まりは、終わりの始まり。あらすじはあまり言いたくないため、説明はこれくらいにしておきます。ともかく大人ってなんてお馬鹿さんで理不尽な生き物なんでしょう、哀しくも愛おしい物語です。是非ご覧あれ。
それはさておき、わたしが好きなのは、まさにオープニングシーンの台詞。夫チャーリー(アダム・ドライバー)が、妻ニコール(スカーレット・ヨハンソン)の好きなところや何気ない特徴をあげていきます。そのひとつがこれ。
She's always inexplicably brewing a cup of tea that she doesn't drink.
何故かわからないけど、結局飲まない紅茶をいつも入れている。
映像では、お茶を入れたカップが飲まないままあちこちに置きっぱなし。
そう!この情景!
心当たりがありすぎて思わず声を上げてしまった。
そうなのよ!そうなのよ!紅茶大好きだからよく入れるんですが、ちょっと置いて何かしていると、その存在すら忘れてしまうのよ。後から気づいて飲もうとするんだけど、もう冷めているし、映画でもそうだったけどティーバッグ入ったままだから滅茶苦茶渋くて飲めたもんじゃない。そしてまた入れ直し、そしてまた忘れる...無限ループ...あぁ紅茶もったいない...。でも飲みたい...。チャーリーよく見てんな!
(今気付いたんですが、イギリス行くとどの家にも必ず安い紅茶ティーバッグPG Tipsの巨大な箱のストックがあるんですよね。流石紅茶の国、って思ったものですが、もしかして、まさか私みたいに入れたのに飲まない人用に余分に沢山入っているのか?あ、違いますかね。いや、意外とそうかも。)
はいまた脱線しちゃった。
ようは自分もそうだからってだけの話なんですが、なんだかこの台詞にチャーリーの深い愛を感じて、キュンキュンしちゃうのです...。他の人なら多分気付かないような、例え気づいたとしても、取るに足らない些細な事。そんな癖をちゃんと見ている。彼だけが知っている。その癖が、なんだか気に触るとかイライラする、とかやめてくれよじゃない。ただ知っている。彼女はそういう人だって知っている。それだけ。彼が挙げていく他愛もない彼女の癖のひとつひとつが微笑ましく、愛おしく感じられます。
inexplicable/inexplicably =説明できないほどに、不可解な、どういうわけか。
映画のなかの結婚生活って、良い時、悪い時が極端に分かれている気がするし、なんだかんだ日常とは違うドラマチックな感じがする事が多い。でも現実はもっと平凡だし、好きと時々嫌いが同居していて、ちょっと気まずい日だって無言でも隣にいるし、話すことないけど子どもの話題だけは尽きなかったり、笑いながら怒ったり、悪くなくても謝ったり。説明できないけど、どういうわけか、一緒にいる。
マリッジ・ストーリーはそんな平凡な人間の関係を、愛おしく描いている、ステキなお話だなと思いましたっ。これ戯曲化して、舞台で観たい。良い脚本だと思う。
苦しくなっちゃうけども!