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日本を離れた理由

こんにちは。アイルランド在住会計士のつぐみです。
ひょんなきっかけから、海外在住者の共同マガジンに参加することとなりました。海外にて活躍中のメンバー達による移住・生活・仕事などの体験談マガジンです。
私はnoteアカウントすら持っていませんでしたが、この企画にぜひ参加したい!と、急いで態勢を整えました。

メンバーそれぞれいろいろな理由で日本を離れ、今住んでいる国にたどり着いているようです。これから、この共同マガジンがどのように進化していくのか、今からとても楽しみです。
共同マガジンはこちら

https://note.com/cieldechampagne/m/m35fd1092a534


さて私はと言うと、2012年に日本を離れ、それ以降ヨーロッパのアイルランドで暮らしています。(自己紹介はこちら。)
共同マガジンの初回なので、今回は『日本を離れた理由』をお伝えしたいと思っています。もし日本を離れるか否かで迷っている方がいたら、決断の一助になれば幸いです。

日本を離れるきっかけ

日本を離れた理由はいくつかありますが、そもそも海外移住を考え始めたきっかけは、当時日本で付き合っていた人と別れたことだと思います。当時30歳で、それなりに自分の人生のレールが見えていた時ですが、そのレールで本当にいいのか迷っている時期でもありました。

悩んでいたことの一つは、そのお付き合いしていた恋人に、結婚したら「彼の出身地である地方都市で専業主婦になってほしい」と言われていたことでした。見知らぬ地方で専業主婦は嫌だけど、もう30歳だし、東京での長時間労働も疲れたし、一度はそれで自分を納得させました。

しかし「私は結婚する為に何かを我慢している」という思いが、知らず知らずのうちに「あなたのために我慢してあげている」という上から目線の思考に変換されて、さらにその気持ちが私の行動の端々に滲みだし、結局振られてしまいました。今考えれば当然だと思います。

その後、当時の仕事にも将来を見出せなくなっていた私は、転職活動の前段階として、そもそもどこに住みたいのかを考えるようになりました。

ポジティブな理由: 海外へのあこがれ

私は昔から海外移住にあこがれがあり、いつかグローバル人材になりたい、国際的に仕事がしてみたいと思っていました。
ヨーロッパはワークライフバランスも素晴らしいと言われていますし、女性の自立も進んでいます。誰も引き留める人はいないし、このタイミングで海外に行きたいとぼんやりと思ったのが引き金でした。

当時勤務していた監査法人にもヨーロッパ駐在のオプションはありましたが、まだサブプライム不況が残っており欧米への派遣は一時中止していました。欧米派遣が再開したところで、優秀な先輩・同期に囲まれる中で、人気のヨーロッパ駐在の切符を、数年内に獲得できる見込みはまるでありませんでした。

あと数年日本にいたら、また誰かパートナーができて、自分一人で決断することができなくなる。
そう思った私は、この機会に自分の居住地を選択すべきだと考えました。当時は、失恋の末の現実逃避などとも言われましたが、実際は、住みたい場所で次のパートナー探しをした方が効率的だというプラクティカルな理由でした。

ネガティブな理由: 日本のピアプレッシャー

ここまでは前向きな理由、そしてここからはやや後ろ向きな、日本を離れた理由です。それは日本のピアプレッシャー(同調圧力)に耐え切れなくなったことです。

理想の自分があり、それを実現するために日々努力していたつもりでしたが、その理想の自分像は、他人の価値観に基づいて創られていたことに気づきました。
多分私には忙しい東京の生活があってなかったんだと思います。他人の目を気にし、履きたくもないヒールで、無駄に重いブランド物のバッグを持って、長時間労働する生活に意義を感じられなくなりました。

日本にいても自分軸をしっかり持ち生きている人はたくさんいます。
本質的な問題は、他人軸を参考にして構築された私自身への過剰な期待が、自分自身を苦しめていたことにあると思います。

しかし、それに気づいてからも、では自分軸で生きるとはどういう事かを見出すことはできませんでした。
その答えを探すため、2011年は、本当にたくさんの人に会い話をしました。若い人からお年寄りまで、いろんな人の話を参考に、自分の人生の方向性を漠然とでも決め、そこに向かって舵をとりたかったからです。

この当時、私を勇気づけてくれた人達には心から感謝しています。何かの本で、「真の友人とは、自分自身で見いだせていない自分の価値を信じてくれる人」だと読みましたが、本当にその通りだと思います。
当時、英語もろくに話せなかった私に、海外で就職することを実現可能だと思わせてくれたのは、私ならできると信じてくれた人が周りにいたからだと思います。

結論: どこに住むかは最重要ではない

以上長々と書いてきましたが、日本を離れた理由を一言でいうなら、『自分軸の構築のため』と答えます。
自分がこういう人だと決める人は誰もいないので、他人軸を忘れ、自分の価値観と向かいあう事ができました。

当時の友人の一人が、人間が変わるには、環境・人間関係・習慣のいずれか、もしくは全部を変えなければならないと言っていました。
習慣を変えるのは時間がかかります。私は移住することで、手っ取り早く変えることのできる、環境と人間関係を変えることにしました。その結果として習慣も変わり、自分軸を見出すことができました。

海外在住共同マガジン発行者として矛盾しているかもしれませんが、私は海外在住を薦める気持ちも、日本居住は良くないという気持ちも全くありません。現地には現地のデメリットもあるので、総合的にみて各々が何を優先させるかだと思っています。
私はアイルランドを世界のどの国よりも愛していますが、自分で自分のコントロールができる環境にいれば、それでいいのだと思います。

しかし、どこに住むのかある程度選択できる時代となってきたので、自分にとって優先順位が高いことを実現できる場所で暮らすのが、幸せへの近道だとは思っています。自分が何をしてどこに住めば幸せなのかは、自分にしか決められないし、その答えを見つけるのは自分の責任です。

その答えを見つける手段の一つとして、一定期間だけでも日本を離れることは推奨します。
一つの国で生まれ一つの国にいると、その国での常識や慣習、もっと言うと周りの人との関係に引っ張られます。周りの人の常識や、期待する役割を意識してしまいます。優しくて、周りの人を喜ばせるのが好きな人ほど、そういう傾向があると思います。
人間は社会的動物なので、人と関わって生きていくのが幸福ですが、無意識的にでも、他人に役割を押し付けてくる人と関わるのは、不幸だと思っています。

共同マガジンの話に戻りますが、マガジンタイトルのVACILANDOは、私の大好きな絵本、【翻訳できない世界のことば】に紹介されていることばの中から、提案させてもらいました。

VACILANDOとはスペイン語で、「どこへ行くかより、何も経験するかを重視した旅をする」という意味です。
私が日本を離れる決意をしたとき、私の心境はまさにVACILANDOであったと思います。何を経験するかが定まれば、住む場所は最重要な問題ではないと思っています。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。少しでも何かの行動の後押しになれば、嬉しいです。


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