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読書ログ:お金の流れでわかる世界の歴史

今日は読書ログ。お金の流れでわかる世界の歴史

元国税調査官が、歴史を政治や戦争からではなく、お金経済から紐解く本。
お金をうまく集め、適正に分配できるものが政治力を持つ、そして、戦争に勝つ者は、必ず経済の裏付けがある。税収システムにもこだわりや工夫がある。

私は歴史は得意ではないのですが、色んな史実をお金や経済の観点から説明されると、結構しっくり頭に入るので面白かったです。

歴史好きはもちろん、歴史に苦手な人こそ読みやすいと思われる、一風変わった歴史本。


古今東西、国家を維持していくためには、「徴税システムの整備」と「国民生活の安定」が、絶対条件であると結論づけ、ローマ時代から現代に至る様々な国々の、具体的な事例を説明していく。


フランスの徴税システムの成功と、ナポレオンの強さの秘密


例えば、フランス王室の財政悪化対策として、主要な借金元であるスイスの銀行家ネッケルを財務総監として登用したが、徴税システムの抜本的見直しを推進するネッケルの有能さ故に、彼がフランス革命のキーパーソンとなってしまった話や、ナポレオンが強かったのは、周りの国が高額な傭兵軍隊を利用しているのに比し、自国で徴兵制導入することで、より安価な軍隊の実現に成功したという話など、税収や国としてのコスト削減が国力に深く影響することがわかる。

ローマがうまくいったのは、義ある徴税をしてたから

国によっては徴税役人は、市民から税金をむしり取る悪役であったが、ローマでは慈悲のある振る舞いをせよと命じられていた。

徴税役人である書記を監視する機関もあった。国民から過分な税金を取った徴税役人は厳罰に処された。

また戦争税もうまく利用した。ローマ軍が戦争に勝って、戦利品などがあれば、納めた税金に応じて還付されたのである。ローマの戦争税は、国債もしくは株式投資のような性質を持っていたのだ。

日本のインフラ整備の素早さ

日本の戦後の経済発展の話は有名ですが、実はその経済成長の土台は戦前から築かれており、その土台のひとつがインフラ整備の素早さだったというのも面白かった。開国してから西洋経済やインフラを取り入れるスピードが、中国などに比しとても早かったらしい。

イギリスの黒歴史

また、金や経済失策による国の黒歴史の話も面白い。イギリスの黒歴史、自国民への税金は安くする一方で、略奪、海賊や奴隷貿易で税収減を補っていたとか、中国にアヘンを売るために高級アヘンバーを設立していた話とか。

黒い歴史がない国なんて存在しないので、その過去の汚点を正義感面して叩きたくはないのですが、アイルランド人はイギリスの黒歴史の話が好きなので、いい情報収集になりました。

現状のタックスヘイブン問題

現状のタックスヘイブン問題、貧富の格差拡大の様子はフランス革命前の状況によく似ており、国家規模でフランス革命が起きるかも、と警告しており、それは現在のポピュリズムへの警鐘にも聞こえる。 

マネーゲームを放置し、富裕層の特権を作って税逃れする時が、国の傾く時とのことだが、程度の違いはあれ、そうではない国ってなくない?と思うとやや不安になる。


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