「給料を上げて」を深く考える

黙々と働いていて、黙々と成果を出す。世間では「うちの会社は給料が低くて…」なんて言葉もよく聞かれますが、あなたも「給料を上げて」と思ったことはありませんか?

「給料をもっと上げてくれ!」は会社にとってどう捉えるべきなのか。これを追求すると経営者視点での報酬やPLの考え方に行き着くだけではなく、労働者視点としても面白い話になります。

平均年収って知っていますか?

ところで、日本における正規雇用の平均年収ってご存知ですか?

平均年収については、国税局が正確な統計を取っていまして、正規雇用労働者の平均年収は「504万円」。ちなみに男性に絞って考えると「545万円」なんですよね。

ただ、これはあくまでも直接的な給与面だけの話です。給与をコストであると捉えた場合、給与だけではなく、社会保険料、そしてパソコンや会社の賃料、机、コピー用紙台等の様々な設備費が必要となります。とある人材コンサルの調べによると、会社にとっては「給与+15%程度」が掛かるとも言われています。

会社が本当に掛かるコストは?

単純計算をすると、504万円×1.15という公式が成り立ち、一人の雇用を維持するには平均して「580万円」が掛かることが分かります。

更に人事や経理などの管理部門も重要なのですが、今回は一旦ドライに捉え、直接利益を生まない費用と考えてみます。100人の会社における管理部門のメンバーは10人程度なので、全体の10%と仮定して捉えていきます。

こちらも単純計算すると580万円×1.1という公式になり、一人雇用するための本当のコストは「638万円」であると言えます。

会社はどれくらいの売上が必要か?

次に、638万円のコストを払うためには、どれくらいの売上が必要でしょうか。

ここで考える必要があるのが、粗利の考え方です。粗利とは、売上から掛かった費用を引いた額で、ざっくりとした利益を示します。

例えば、りんごを70円で仕入れて100円で売った場合、粗利は100円-70円という計算になり、粗利は30円となります。また、売上に対する粗利の割合を粗利率と言い、今回の場合は30%となります。

さて、この粗利率。提供している商品や業界によって大きく異なりますが、小売業では平均29%と言われています。そこで、逆算をすると638万円÷0.29という公式から「2200万円」という数値が出てきます。

そう、一人雇うには「売上は2200万円必要」なんですね。仮に、1万円の商品を売っていたとしたら、年間で2200個も売らなければならない。そう考えると、途方も無い気がします。

年間で260日間働いているとしたら、1日あたり8.5万円を売り上げなければ成り立たない計算です。

ただ「売上は2200万円必要」という表現はあくまでも、一般的な粗利率を適用した場合です。ご自身の会社に合わせて計算し直してみてください。

「給料をもっと上げてくれ!」と言えますか?

さてここで、「給料をもっと上げてくれ!」と言えますか?

ここまで深く考えると、何故経営者は簡単に給与を上げたくないのかが分かると思います。

もし給与交渉をするのであれば、粗利や必要売上をベースとして考えると、現状これだけ貢献をしているので報酬を上げて欲しいという交渉が成り立ちます。経営者としては、売上を生んでいる人を手放すよりも、給与を出すほうが良いという結論に至るためです。

その人が生み出す収益(利益) > その人に支払う給与(コスト)

この2つを秤に掛けるということですね。

あまり給与を話題にしている本が無かったのですが、経営上の観点を交えて説明してみました。このように一度、視座を上げてみると面白いかもしれません。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?