国立長寿医療研究センター 島田裕之先生インタビュー①
インターリハ開発部です。
今日も私たちの記事を読んでくださいまして、ありがとうございます。
今回から数回に分けて、
国立長寿医療研究センターの島田裕之先生のインタビューを掲載します。
国立長寿医療研究センターは、
高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献するため、
人の尊厳や権利を重視し、病院と研究所が連携して高い倫理性に基づく、
良質な医療と研究を行う機関です。
島田先生は国立長寿医療研究センターで、老年学社会科学研究センター長をされており、長年、健康寿命延伸に関わる研究に携わっています。
今回、認知症予防プログラム「コグニサイズ」をはじめ、認知症の予防に対して、島田先生がどのような思いを持って、研究に携わっておられるのかをお伺いしました。
認知症予防プログラム「コグニサイズ」については、
こちらの記事をご覧になってください。
『国立長寿医療研究センター 島田裕之先生 インタビュー』
Q、島田先生が思う、認知症に対する世間のイメージについてお聞かせください。
高齢者の方に「あなたがなりたくない病気はなんですか?」と質問すると、
多くの人は「認知症になりたくない」と回答します。
みなさんが持つ認知症のイメージは、ネガティブものが多いのではないでしょうか。例えば、「自分の子供の顔もわからなくなる」などです。
認知症になるといろんな方に迷惑をかける。
だからこそ、認知症にはなりたくないと言う人が多いです。
このように、認知症に対する世間のイメージは、ネガティブなものが多いように思います。
Q、認知症の予防において大切なことはなんでしょうか?
認知症を予防できればいいのですが、完全に予防することはできません。
画期的な薬が開発され、皆さんの手元に届くことができれば、
認知症を完全に予防できると思いますが、現状ではなかなか難しいです。
近い将来もそのような状態になるのは、現状を見ると難しいと思います。
ただ、そのような状況の中でも、何もできないということではありません。
認知症を完全に予防できなくとも、認知症になるリスクを減らすことは可能です。
そのやり方が、この20年間でかなり明らかになりました。
認知症の予防において大切なことは、
「健康的な生活習慣やライフスタイルを身につけること」です。
下記のようなことを、
ご家族と一緒に、きちんと管理していただくことが必要です。
・運動習慣を身につける
・質の良い睡眠をとる
・禁煙をする
・バランスの良い食習慣
・生活習慣病の管理
・体重の管理をする
また、「人と人との繋がりを持つ」ことも、認知症の予防において大切なことです。
鬱病とまではいかなくても、高齢期には「なんとなく鬱々してしまう人が多い」という傾向があります。
将来の認知症の発症において、このような状態が強く結びついていることが分かっています。この原因をできるだけ抑制していくことも大切なことです。
そのために取り組んでいただきたいのが、「社会ネットワークをつくること」です。人と人とのネットワークをきちんと作って、「今日は、誰とも話さなかったなぁ」という日をつくらないようにしていただきたいです。
例えば、このようなケースには気をつけていただきたいです。
三世代同居しているけど、毎日の食事は一人でとっている。
このような状態では、人と人との繋がりがあるとは言えません。
本当の意味での人と人との繋がりを通して、幸せを感じられる。
このような人間関係の構築が大切です。
このように、認知症を予防することにおいて、
日々の生活の中で、気をつけて欲しいことはたくさんあります。
Q、島田先生が予防研究の道に入ったきっかけを教えてください。
私は認知症予防ではなく、転倒予防に関する研究からスタートしました。
私は、高齢者の方の施設に従事していた時期があります。
ある年、インフルエンザが大流行しました。
私がいた施設でも、高熱を出される人がたくさん出ました。
みなさんもご経験があると思いますが、高熱になるとフラフラになります。
そのような状態で歩こうとすると、転倒してしまいます。
ご高齢者の中には、骨粗しょう症が進んでいる人も多いです。
その年だけで、大腿骨頚部骨折の人が3名もでました。
その中でも運動機能が低下していた人は、
そのまま、非常に重篤な状況に陥ってしまいました。
一度、重篤な状況に陥ると、
なかなか回復が難しいことを目の当たりにしました。
また、私はリハビリテーションの仕事をしていた時期があります。
障害を持った人のリハビリテーションです。
障害というのは、多少の機能回復はありますが、基本的には治らないものです。リハビリテーションにより、色んなことができるようになっても、完全に元の状態に戻ることはありません。
残念ではありますが、回復せずに、重篤な状態のままの人もたくさんいました。
そのような人をたくさん見てきて、「自分はどうしたらいいのか?」と分からなくなる時もありました。
そのような経験をして、「こういった状況に陥る前に、予防に取り組むことが大事である」と実感しました。
これが、私が予防研究の道に入ったきっかけです。
インタビュー②へ続く。
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