藤也いらいち

物語を書こうとしています。 今まで書いたのまとめたり、日記を書いたりします。

藤也いらいち

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マガジン

  • スパイスの小棚

    私、いらいちの書いた物語をまとめています。 気になったものがありましたら是非。

  • 主人公になれない私と主人公になるかもしれない妹の話

    妹と私がテーマのエッセイです。

最近の記事

【ショートショート】 紫陽花の傘の女

 近所に紫陽花で有名な道がある。  雨の夕暮れ、帰りに通りがかったとき、軽やかに動くひときわ背の高い紫陽花の株があった。  気になってよく見ると違う。  あれは紫陽花柄の傘だ。  穴が空くほど見つめていたからだろうか、傘の主が振り返ってしまった。目が合う。 「あら、久しぶりね」  懐かしい。  かつての同級生だ。  紫色だった紫陽花の傘が、青色の紫陽花に変わった。  僕は一瞬驚いたが、それよりも同級生との再開に浮足立った。 「こんなところであうなんて」 「

    • ショートショート『店は孫のみゆきに任せる』

      「ただいま」  木製の扉を押して開けた。たてつけが悪く、思ったより力がいる。ここも直しが必要なようだ。温かくも冷たくもない埃っぽく淀んだ空気がそこにはあった。 「よし」  埃で白くなった床に薄い茶色の足跡をつけながら窓を開ける。止まった時間は急速に動き出す。    祖母は小さな喫茶店を営んでいた。  メニューはコーヒーと隣のケーキ屋から仕入れる日替わりのケーキのみ。少ないメニューのかわりなのか、壁一面の本棚には本が並べられている。カウンター奥にはCDや楽器が乱雑に置かれていて

      • 小説『旧作の空と新作の空』

        「明日午前零時より、さそり座の空を施行します」  携帯端末から落ち着いた男の声が流れた。  時間を確認する、十八時五十六分。空が替わるまであと約五時間。あまり時間はない。高鳴る鼓動をどうにか落ち着かせようとタクトは深呼吸をした。はやる気持ちをおさえて出掛ける準備をして自室から出る。国民放送のアナウンスは母も聞いていたようで、タクトの顔を見て心配そうな顔をした。 「行くの?」 「うん、行ってくるよ」  タクトは用意したヘルメットを見せながら母を安心させるように笑う。 「

        • おじさん、イルミネーションとって!

           クリスマスプレゼントが欲しい。そう小学二年生の姪の遥にせがまれたのは、クリスマスが来週に迫った週末のことだった。  社会人2年目、実家暮らしで彼女と別れたばかりの俺はこのかわいらしい姪のお願いに二つ返事で答えるとすぐに姉に承諾をとって遥と街へ繰り出した。 「亮くん、星が降ってきてる!」  遥が腕を大きく振りながら目を輝かせている。左腕には先ほど俺が購入した子ども向けのブレスレットがイルミネーションに反射して同じくらい光っていた。 「星が降る、良い表現だね」  遥の頭

        【ショートショート】 紫陽花の傘の女

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        • スパイスの小棚
          5本
        • 主人公になれない私と主人公になるかもしれない妹の話
          10本

        記事

          宝石缶詰め(ショートショートnote杯参加作品)

           今、子どもを中心に大人気の缶詰がある。  名前は宝石缶詰め。  小瓶に入った液体と缶詰のセットで、密閉された缶を開けると中には子どもの指先ほどの光る石が一つ入っている。それを日光の良く当たる窓辺に置き、小瓶の液体を毎日一滴づつかけるのだ。すると小瓶が空になった頃には手の平程の大きさの石になるというものである。液体をかける時間や、日光の当たり具合で色や形に変化があるらしく、出来上がった石は世界に一つだけしかない自分だけの宝石になるという宣伝文句だった。  子ども向けの雑

          宝石缶詰め(ショートショートnote杯参加作品)

          さめない夢とさめた珈琲

          音楽で繋がっていた親友の二人。 夢からさめるのは珈琲がさめるよりも簡単なのかもしれない。 monogatary.「ものがたり珈琲」コンテストに参加した作品です。 https://novel.daysneo.com/sp/works/29f3eab4a91cd7c8a04f708b1a7f5973.html

          さめない夢とさめた珈琲

          辻本ミサトの失恋標本~妹は恋愛ドラマの主役の素質があるらしいので姉の私は妹を主人公に小説を書くことにした~

          妹には恋愛ドラマの主役になれる素質があると私は思っている。 恋に恋する10代を経て、大学生になった妹は恋に学業に大忙し!! かわいくて、優しく明るい非の打ち所のない妹は、きっと素敵な恋人を見つけるに違いない。 とはならなかった。 恋愛にまったく興味のない妹は、姉の私の思惑とは裏腹に画家になるための道を突き進む。 周囲にどれだけ自分に恋する人がいても告白されるまで気が付かない!そして、告白されてもフッてしまう! 妹は絶対に恋愛ドラマの主役にはならないらしいが、彼女は周囲の

          辻本ミサトの失恋標本~妹は恋愛ドラマの主役の素質があるらしいので姉の私は妹を主人公に小説を書くことにした~

          久しぶりの更新と抱負

           毎日更新できればと思いながら、結局それはできず。  のんびり書いていくのがいいなと思う。  ただ、何もしなくても毎日は過ぎ去る。  あっという間に桜が咲いて散っていって、ゴールデンウィークがすぎて、今じゃ梅雨入り目前だ。  さすがにサボり過ぎである。  のんびり、しかし継続的にを目指していこうと思う。一点集中型は悪くはないが私は長続きしない。  すこし前に誕生日を迎えた。  この1年無事に過ごして年を取ったことに安堵しつつ、次の1年の私の健康を祈っている。  妹と母には正

          久しぶりの更新と抱負

          かっこいい姉

           せっかく妹がいる環境だ。  どうせならかっこいい姉、みたいのを一度はやってみたい。  年の差もそこそこあることだし、妹が学生のうちにやってみたいことがある。  学校の近くに車で迎えに行って、クラクションを軽く鳴らして合図をしてみたい。  バリキャリ感出して。  「早く終わったから迎えに来た。ご飯食べに行かない?お友だち?妹がお世話になってます」  って言いたい。  古いと言われようが漫画的と言われようがやりたい。  車持ってないけど。  免許もないけど。

          かっこいい姉

          節分と春の話

           今日は節分だ。124年ぶりに2月2日にある。  幼稚園に通っていた頃、節分の日に鬼のお面をつけて出てきた園長先生をみて大泣きした記憶があるので、伝統行事のなかでは嫌いな部類にはいる。  鬼の面、リアルだった。気合いをいれすぎだったと思う。  桃太郎の鬼をみて涙目になる怖がりな子どもだった私には刺激が強すぎた。  節分といえば、豆まき、恵方巻、鰯柊、けんちん汁……  地域によって風習がいろいろあるらしいが、我が家では豆まきと恵方巻が取り入れられている。  豆まきの

          節分と春の話

          妹とチョコレートと私

           2回ほど、私の話をメインにしてしまった。  私の日記なのでそれもしょうがないが、これではタイトルに偽りありになってしまうではないかと思う。  かといって今日は妹の話をするといって妹の話を書き出すのはなんだか気持ち悪い。  私はひねくれ者なのだ。  今日から2月、毎年デパートでちょっと高いチョコレートを買うのを楽しみにしているが今年は無理そうだ。  今年はいつもは我慢する一番大きい箱を買ってやろうと意気込んでいたのだが。  妹もチョコレートが好きなので、一緒に買い

          妹とチョコレートと私

          1月の目標の話

           1月が終わる。  三が日のどこかで今年の目標を立てた気がするが、もう忘れてしまった。  紙に書いて、目立つところにでも貼っておけばよかったのだろうが、そこまでしなくてもいいかと思ったのだ。  おそらくそのレベルの目標だ。  ダイエットするとか新しい趣味を見つけるとかそんな感じだったのだろう。  一年の目標だと、達成判断が遠すぎて難しいので、今後長期の目標を立てるときは半年ごとに更新し、3ヶ月に見直しとする。今決めた。  どうせなら2月の短期目標を決めようと思う。

          1月の目標の話

          私とカレー

           私はカレーが好きだ。  特に店で食べるインドカレーが好きだ。  顔よりも大きいナンと銀色の食器に入ったカレーが運ばれてきたときの高揚感。  ただ、量の調節が難しい。  ナンがなくなったときにカレーが残りがちなのだ。ナンをお代わりするにはカレーの量も、胃の容量も足りない。  まだまだ、修行が足りないと考えている。  量の調節ができるので、家でもスパイスを使ってカレーを作ったりもする。  しかし、ナンは作れない。専用の窯がないとどうにもうまくいかないようだ。  

          梅シソポテトチップス

           妹がバイト帰りにポテトチップスを買ってきた。  梅味だと思って買ったら梅シソ味だったらしい。  妹はシソが得意ではない。タラコスパゲッティに思いがけずのっていた細長く切り損ねて繋がっているシソはどうにも許せないらしい。  私はシソは薬味のなかでも好きな部類に入るのでたとえ繋がっていようとも、タラコソースから突然ミートソースに移されてびっくりしているシソを許してやることができる。ミートソースとの相性は別として。  私は梅味のポテトチップスは苦手だ。  梅自体は嫌いで

          梅シソポテトチップス

          【小説】夏の光

          「夏の光はセミの鳴き声がする」  日差しが肌を焼くような感覚が日増しに強くなる7月半ば。夏休みを目前にした日曜日の午後3時。友香はスマートフォンに流れてきた高温注意の通知を見ないふりしてコンビニのイートインでアイスを食べていた。冷房の効いたコンビニをもってしてもあっという間に溶けていくソーダ味の棒アイスと格闘していた友香は、隣に座りカップアイスを外側から中央に向かって食べている小学二年生の弟、裕斗が静かに呟いた一言を危うく聞き漏らすところだった。 「え? セミ?」 「う

          【小説】夏の光

          妹と私と女子高生

             女子高生。かつて私も妹もそうであった。  膝上のスカートにイーストボーイのカーディガンを着て、ブルーやピンク、黄色のYシャツは校則違反かどうかを教師と議論する。女子高生であった。  中学のときは許されなかったラインのはいったカーディガンもパーカーも許される。携帯の持ち込みも、漫画の貸し借りも自己責任で許された。  色付きYシャツは、ブルーのみ許された。  テレビ番組や雑誌で「女子高生に大人気!」と紹介される都内のカフェに、交通費や部活を理由にして行かない、関東

          妹と私と女子高生