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「情報処理」巻頭コラム

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情報処理学会 会誌「情報処理」のバックナンバーから,巻頭コラムを順次紹介していきます.IT専門家はもちろん,教育者,政治家,医師など、様々な業界の方々にご執筆頂いています.
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#社会

世界を再構築するイノベーション

大串 正樹 (デジタル副大臣/衆議院議員(自由民主党))  かつて古代ギリシアのプラトン(Plato)の時代には,技術(テクネー)は知識ではないとされていました(技術<知識).その後,工業化が進み数次の産業革命を経て,知識としての技術にその価値を認めるドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)の「ポスト資本主義社会=知識社会」が到来しました.知識こそが唯一価値のある資源であるという20世紀の「ものづくり」の時代です(技術≒知識).そして時代はさらに進み,生

役に立つ研究

川原圭博(東京大学教授/mercari R4D, Head of Research)  研究者なら一度は「あなたの研究は何の役に立つのですか」と聞かれた経験があるに違いない.文脈によっては,自分の仕事が何の役にも立たないと言われたような気がして,後ろめたい気持ちになってしまう.基礎研究に近い場合,こうした言葉に強く反発する人もいるだろう.とはいえ,研究活動は多かれ少なかれ,社会に支えられて可能になっている.用途を考えず取り組んだ研究であっても,何かの役に立てば嬉しいもので