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なぜ一風堂は、「プラントベース」のラーメンを開発したのか?~不二製油×一風堂のキーマンたちによるスペシャル対談~

 皆さんこんにちは。一風堂note編集部です。

 一風堂では、2021年2月1日から全国45店舗で「プラントベース赤丸」というラーメンを期間限定で販売することになりました。

 しかしながら、「プラントベースって何?」「なぜ豚骨ラーメンの一風堂が植物性ラーメンを?」と疑問に思う方も、まだまだ多いのではないでしょうか? 今回の記事では、そんな疑問にお答えすべく、この商品を開発したキーマンたちによるスペシャル対談形式で、その開発秘話に迫りたいと思います。

そもそもプラントベースって何?

 対談に入る前に、「プラントベース」について簡単にご説明します。プラントベースとは、直訳すると“植物由来”の意味。植物由来の原料で作られた料理や食品が、一般的に「プラントベースフード」と呼ばれています。近年、欧米を中心にブームとなっており、人の健康や栄養面だけでなく、地球資源の消費や温室効果ガス排出の削減など、環境保全にも貢献できる新しい食のライフスタイルとして期待されているフードカルチャーです。

 最近は大手のハンバーガーチェーン様が相次いで大豆ミートバーガーを出したり、コンビニエンスストアからプラントベースフードの総菜シリーズが発表されたりと、「プラントベース」という言葉をそのものを目にする機会も増えています。

心強い開発パートナーは、不二製油様

 そんな中で一風堂が今回発表したのが、「プラントベース赤丸」です。実はこのラーメン、一風堂の力だけで完成させたわけではありません。商品開発パートナーとして、60年以上前から大豆タンパクの研究を続けている食品メーカー・不二製油さんと共同で完成させた一杯です。その開発にかかわった両社のキーマンがこちらの皆さんです(他にもたくさんいらっしゃいますが、代表してご参加いただきました)。

【この対談に登場する人々】

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(左)不二製油株式会社:塩川達也さん/(右上)不二製油グループ本社株式会社未来創造研究所 新素材創出グループ:齋藤 努さん/(右下)力の源カンパニー 商品本部外販グループ:冨田 英信 [※以下敬称略]

まずは自己紹介から

_最初に皆さんが普段どんなお仕事をされているのか、自己紹介も兼ねて教えていただけますでしょうか。

齋藤(不二製油)未来創造研究所に所属しています。未来創造というと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、私のいる新素材創出グループでは人と地球の健康への貢献を目標として、植物性油脂と大豆タンパクから食の未来を切り拓く新しい技術や素材の研究開発を行っています。

塩川(不二製油)私は営業部門で、外食企業様を中心に担当させていただいております。販売のジャンルは、大豆ミート等の加工食品、チョコレート、油脂などで、そういった食材を通して取引先の皆様の事業に貢献することが仕事ですね。

冨田(一風堂)普段のメイン業務は、一風堂のおみやげ商品やコラボ商品などの開発になります。前職では食品メーカーに勤めていて、実はその頃から一風堂のおみやげ商品には携わっていました。今回は不二製油さんとの協業ということで、一風堂の商品開発メンバーと一緒にこのラーメンの完成までを監修する役割を担わせていただきました。

_この「プラントベース赤丸」の開発を、両者で行うことになったきっかけを教えてもらえますか?

冨田(一風堂):元々一風堂としては、2008年のNYを皮切りに海外展開を積極的に進めてきたのですが、宗教的な理由であったり、ベジタリアンやヴィーガンの方であったりと、豚骨ラーメンを食べない方も世界には多くいらっしゃるんですね。そういった方にも日本の国民食であるラーメンを食べていただきたいと、実際に海外ではヴィーガンラーメンの開発も行ってきました。そんな折に、不二製油さんから豆乳をベースにした植物性スープのご提案をいただいたのが最初のきっかけですね。

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※一風堂の海外1号店「IPPUDO NY」(画像は2011年の様子)。海外にはベジタリアンの方も多く、一風堂が豚骨以外のラーメンに着目するきっかけになった。

齋藤(不二製油):不二製油には、国内最後発の製油メーカーながら、付加価値の高いココアバター代用油脂を初めて製品化したことや、60年以上大豆タンパクの研究開発を続けてきた歴史があります。“植物性油脂”と“大豆タンパク”に独自の技術力を持つことが強みでして、植物性の食品素材で世界の課題を解決する、PBFS(プラントベースフード・ソリューション)に取り組んでいるのですが、この技術で力になれるのではないかと。

塩川(不二製油):プラントベースフードが世の中に浸透するにつれて、食の多様性に加えて美味しさの満足感の両立も求められるようになりました。そういった期待感に応えていこうという中で、一風堂様のご要望とも重なり、共同開発がスタートしました。

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開発期間はトータル3年。その間、何度も双方で試作・試食を繰り返しながら、より美味しい一杯を求めてブラッシュアップしてきました。試作段階では豆腐トッピングなども検証していました。

不二製油の新技術・MIRACORE(ミラコア)とは?

齋藤(不二製油):豚骨スープを構成しているのは、豚の脂とコラーゲンです。つまり、豚骨の濃厚感は油脂とタンパクから成り立っています。しかし、ただ植物性の油脂とタンパクに置き換えるだけでは、あの濃厚感は得られません。実は当初、冨田さんからも何度もダメ出しをいただきました(苦笑)。そこで、MIRACORE™(ミラコア)という、不二製油の油脂とタンパクの研究ノウハウが詰まった新技術を使って、豚骨の濃厚感を目指すことにしました。チョコレート⽤油脂の開発で培ってきた油脂の加⼯技術と、豆乳や⼤⾖ミート開発で培ってきたタンパクの加⼯技術をコラボレーションさせることで、豆乳からできているとは思えない、まるで豚骨のような濃厚感に近づけることができたんです。

冨田(一風堂):ダメ出しなんかしてましたっけ(笑)? でもこのスープは本当にコクがあって、通常の豆乳スープとは全然違って驚きました。何も知らずに食べたら本当に豚骨ラーメンと間違えるんじゃないかと思うくらいでした。これなら一杯のラーメンに仕上げられそうだと思い、具体的にラーメンの試作を始めることになりました。

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今回の「プラントベース赤丸」に使用した豆乳ベースのスープ。一口飲むと、植物性だけとは思えないほどのコクが感じられます。

齋藤(不二製油):まさに、MIRACORE™のMIRAは驚き、という意味です。植物の⼒で、“みんなにやさしく、ずっとおいしいを叶える⾷のコア技術”として、⼈にも地球にもやさしい、驚きの美味しさを提供していこうと⼒を⼊れています。

プラントベースのラーメンができるまで

_MIRACORE™のコク深豆乳スープを使うことが決まり、そこからどのように一杯のラーメンに仕上げていったのでしょうか?

冨田(一風堂):すごくコクがあるので、このスープをベースとしてプラントベースラーメンに仕上げるために、うま味を足す工夫をいろいろ検討しました。その中で、昆布のグルタミン酸のうま味が相性が良く、昆布だしをプラスすることに決めました。さらに隠し味にポルチーニを加えることで、風味を足すことにも成功しました。

_麺やトッピングも植物性のみなんですよね?

冨田(一風堂):そうですね。通常の一風堂の麺には卵が入っているのですが、今回は卵不使用の全粒粉麺にしています。そこにさらに食物繊維を足して、栄養価の高い麺に仕上げました。トッピングも豆腐などいろいろ試したのですが、最終的にインゲン豆をペーストした“チャーシュー風トッピング”をオリジナルで開発しました。こちらは食感も楽しんでほしいですね。

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植物性の食材で肉のような繊維質を表現したチャーシュー風トッピング。

_不二製油のお二人は、試食されたときはどんな感想を持たれましたか?

齋藤(不二製油):いつも食べている一風堂さんのどんぶりに入ったラーメンになったら、食べる前から豚骨ラーメンというイメージでまったく違和感がなく感動しましたね。味も想像した以上の出来で、これなら喜んでくれる人はたくさんいるだろうなと、絵が浮かぶようでした。

塩川(不二製油):変な表現かもしれないですが、“豚骨過ぎない豚骨”といいますか、それに近いものができたということで⾮常に驚きました。この味をぜひたくさんの人に召し上がっていただきたい!と思いました。

プラントベースラーメンの意義について

_実際、「プラントベース赤丸」はプレスリリースして以降、お客様からご期待の声を多くいただいてます。植物由来のラーメンにはどのような意義があると思いますか?

冨田(一風堂):大きく二つあると思っています。一つは、一風堂の立場での考えですが、例えば5人で食事にいこうとなった方々がいたとして、そのうちのお一人でも動物性を食べない方がいたとしたら、その時点で店の選択肢から外れてしまうんですよね。実際にそういった場面があるといった声は店舗からも届いていました。まずは小さな一歩ですが、そういう方々の受け皿になることで、機会ロスをなくしたいという思いはありますね。

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もう一つは、私も個人的に勉強しようと、ベジタリアンの方が主催するプラントベースフードのセミナーに参加したことがあるんです。そのときに、ストイックに動物性食品を取らないと決めなくとも、日常の食事に少しでもプラントベースを取り入れるだけで、地球環境を守ることにつながるんだということを学ぶことができました。そういう意識を広めることができればという思いも、この商品開発の動機に繋がっています。ラーメン業界の中でもいち早くプラントベースラーメンを作れたことは、世の中に対しても一つのメッセージになるのではないかと思います。

齋藤(不二製油):本当にそうですよね。今後は小学校の授業でSDGsが必修化されます。食のバリアフリー化が求められる社会において、みんなが満足できる選択肢がないと感じている方や、サスティナブルな食生活を実践したいのに続けられる選択肢がないと感じている方は少なからずいらっしゃると思います。「プラントベース赤丸」は、そんな多様なニーズにしっかり応える選択肢となりますし、それはつまりSDGsが掲げる“誰一人取り残さない”世界の実現にもつながる、ひとにも地球にもやさしい、そして“おいしい”選択肢になると期待しています。 

210106_一風堂_プラントベース赤丸_再撮影_箸上げ

_今後定番化してほしいという声が早くもあるようですが?

冨田(一風堂):そうですね。まずは今回の商品で、皆さんにとって“初めてのプラントベースラーメン”をぜひ体験していただきたいと思います。好評であれば、定番化や全店展開、理想は専門店と、より広げていくことも検討したいですね。

塩川(不⼆製油):一風堂さんは全世界で展開されております。今回の日本発プラントベースラーメンが世界中に広がる可能性があるのではと期待しております。アメリカ発のプラントベースといえばハンバーガーなのですが、⽇本発のプラントベースがラーメンになったら凄いと思いますし、その⼒になれるように私たちも一緒に進化していきたいと思っております。

(対談は以上です)

2/4(木)は「カンブリア宮殿」をチェック!

 今回「プラントベース赤丸」の開発パートナーとなってくださった不二製油さん、実は2月4日(木)TV東京系「カンブリア宮殿」に登場いたします。一風堂との開発風景も番組の中で登場するかもしれません。気になる方はぜひチェックをお願いします(※放送終了後にこの記事を読まれた方はすみません!)。

改めて、販売概要はこちらから。

 ということで、いよいよ2月1日(月)から「プラントベース赤丸」は発売開始。期間は確定していませんが、なくなり次第終了となりますので、ぜひお早めにお召し上がりいただけますと幸いです! 味の感想などもぜひ、SNSなどでお寄せください。




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こんにちは、一風堂 note編集部です。ラーメンや一風堂にまつわる“ヒト・モノ・コト”にフォーカスして更新します。 https://www.ippudo.com/