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一粒一粒削り出す!酒米が精米されるプロセスを解説します!

こんにちは、たくさん飲めない唎酒師のがっきーこと宮垣慶子です。
新米の季節がやってきましたね。みなさんが聞いたことがあるであろう酒米の山田錦は、10月下旬が収穫時期です。収穫後に精米されて、酒造りに使われていきます。


今回は私の視点から、みなさんが日本酒をより楽しめるように、酒米と精米工程についてご紹介します。


1 振り返ってみます、精米歩合について

まずは、以前公開したこちらの記事について簡単に振り返ります。


「精米歩合」とは、玄米から表層部を削って残ったお米の割合をパーセント(%)で表したものでしたね。

そして、栄養分がお米の中で均一に分布しているのではなく、中心部は主に炭水化物、外側は主にタンパク質、脂質と偏って存在しています。
なぜ、精米するかというと「表面を削っていくことでそれら3つの栄養素のバランスを調整するため」です。

その栄養素は微生物によって分解され、日本酒の味や香りを造っていくということを学びました。

さて、前回の記事では触れなかった飯米と酒米のもう一つの違いと精米工程についてご紹介します。


2 飯米と酒米の違い

飯米と酒米は、見た目にも違いがあります。

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酒米は飯米より大きく、また中心部に空隙が多いので白く濁ったように見えます。この部分を心白(しんぱく)といいます。この心白のおかげで、微生物の麹菌が入り込みやすく、酒米をよく分解できます。
しかし、心白部分は空隙があるがためにもろい、粉々になりやすいという特徴もあります。

…え、、、
吟醸酒や大吟醸酒って、酒米を40%も50%も削っていることを覚えていますか?

空隙のある中心部をどうやってそこまで削るんだろう...?
そこにはすごき技術があるのでは....!!

ということで、酒米を精米している方に聞いてきました!


3 中心がもろい酒米をどうやって削っているの?

私たちが食べている飯米は、簡単に説明すると米粒同士をぶつけて8~10%程削られています。

それに対して、酒米は臼のような仕組みで一粒一粒を少しずつ削られています。職人の手で微調整して造られた臼の表面(ダイヤモンドロール)には、ダイヤモンドの粒が付いていて、固い酒米の表面少しずつ削るのによいのだそうです。

感動して撫でたら、手のひら擦りむきそうなザラザラ感でした…!
その仕組みで、40%~50%、多いものでは60%も削っていきます。酒米の場合、栄養分の分布や構造に偏りがありましたね。なので、割れては意味がなく、周りから削ることに意味があります。

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なので、精米歩合によって異なりますが、酒米の精米はとても時間がかかり、何日も掛けて少しずつ繰り返し削ります。


みなさんは、ご自宅の近所でコイン精米機を使ったり、見たことはありますか?飯米を精米する機械で、玄米を投入したらすぐに精米されたお米が出てきます。飯米と酒米とでは、精米に掛かる時間が大きく違います。

note_使用図_精米工場見学2

また、そうやって削られて出てくる糠は、私が知っているタケノコのあく抜きに使う茶色いふわふわの糠ではなく、どちらかというと、お団子を作るときに使う上新粉です!

そんな糠(ちゃんと有効活用されるそうです)を取り除いてできた白米は、超高級品ですね。運送会社さんも運びたくない代物だそうです(笑)。

そこから丁寧に造られた日本酒。その事実を知ってからというもの、店頭で見かける一升瓶の佇まいには気高さを感じます。

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4 お酒造りにおける精米工程のもうひとつの役割

今回、取材にご協力くださった新中野工業さん。
酒米用精米機のメーカーで、2019年度は約60%とトップシェアを誇ります。蔵元に精米機の販売もしますが、精米機のショールームも兼ねた工場で精米自体も受託しています。

新中野工業さんの精米受託の一連の工程から、精米工程ってとても大事な役割を担っているんだなと思ったので、少しご紹介したいと思います。

プレゼンテーション1

蔵元が、契約農家から直接酒米を購入しますが、酒米自体は、委託先の精米工場に届き、精米工程を経てから蔵元に運ばれます。

しかしながら、その工程だと、蔵元が玄米の状態を直接確認することができません。なので、精米工場が蔵元に代わってその役割を担います。

まず、玄米受け入れ時に、石や藁、金属、髪の毛などの異物除去と玄米の品質チェックをします。台風直後に収穫されたものには石の混入が多いそうです。また、玄米の保管状態で品質が大きく左右され、カビが生えてしまっていることもあるそうです。品質が満たないものについては、農家にお返しすることもあるとのことです。

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また精米後に、お米の表面についた糠をなめし皮でふき取り、再び異物除去の工程を経ます。この時は、石や藁、金属、髪の毛などはもちろんですが、糠の塊や割れたお米も異物として取り除かれ、真に精米された酒米のみが蔵元へ納品されるのです。

こうやって、蔵元の目と魂を宿して精米を受託している人がいるからこそ、酒造りが守られているのだと思います。


5 まとめ


今回は、飯米と酒米の見た目の違いと、精米工程についてお伝えしました。酒米には、中心部に空隙が多いため白く濁ったように見える心白があります。微生物の麹菌が入り込みやすく、酒米をよく分解できる一方で、もろく粉々になりやすいという特徴もあります。

そのため、臼のような仕組みで一粒一粒を少しずつ時間をかけて40%、50%と削っていきます。酒米は、香味に影響する栄養分の分布に偏りがあるので、割れては意味がなく、周りを削ることに意味があります。

そして、精米の前後に異物除去と品質チェックが行われます。精米に関わる一連の工程が白米の品質、ひいては日本酒の品質を守ることに繋がります。

たくさんの方々の誠実なお仕事によって、美味しい日本酒ができていることを知ると、日常で日本酒を飲むときは、「乾杯」ではなく「いただきます」と言ってから飲もうかなと思います。流行ったら嬉しいなぁ(笑)

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