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おきばりやす

⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

皆さんは

「おきばりやす」

という言葉を聞いた事があるだろうか。


おそらく京都弁だと思われる
この言葉を
僕は今までの人生の中で
2回聞いた事がある。

最新でこの言葉を
聞いたのが2ヶ月ほど前のことだった。

僕はその日
京都でアルバイトをしていた。

店内に設置してある
大きなゴミ箱に付けてあった
ゴミ袋がゴミでパンパンになり、
捨てないといけない状況になった。

僕はそれの口をきつく縛ると
最寄りの指定された
ゴミ捨て場へと持っていった。

するとバイト先が入っている
ビルの管理人であろう
お上品なマダムが偶然通りかかり、
話しかけてきたのだ。

「あなたはここで働いている方?」

結構なお年寄りだったが
見た目にもかなり気を使っており
一挙手一投足が品に溢れている。

「はい!」

僕は己の若さだけを武器に
ただただ大きな声で返事をした。

するとそのマダムが
静かに頷いた後
こう言った。

「おきばりやす」

この言葉を聞いたのは
人生で2度目だった。


僕は京都に住みはじめて5年目になる。

京都の関西弁と大阪の関西弁の
違いを把握した上で僕は
京都弁があまり好きではなかったが
この言葉だけはなぜか
耳心地がとても良かった。

僕がこの言葉をはじめて聞いたのは
今から2年ほど前だ。

僕は学生落語を4年間やっていた。

その関係で知り合った方々と
祇園で食事会をすることになった。

学生の身分では普段
絶対に行けないような
高級感溢れる繁華街を抜け

約束の場所に着き、
少し緊張しながら
重厚感のある扉を開ける。

昔のアイドルのような
綺麗な店主が出迎えてくれた。

40代後半くらいだろうか。

年齢を感じさせない洗練された美貌を持った
その女性に席に案内される。

店内に入ると
僕以外のほとんどの人間が揃っていた。

やってもた!

そう思ったがしょうがない。

こんな店に
学生である僕が
はやめに1人で来れるわけない。

無理やり自分を納得させて席に着く。

注文もせぬうちに
普通の飲食店では出てこないような
分厚くいい香りのついたおしぼりと
見たことない種類の
ウイスキーが出てきた。

その当時
ほとんどビールかチューハイしか
飲まなかった僕は
ウイスキーやハイボールなどに
苦手意識を持っていた。

だが
目上の立場の人しかいないその席で
そのウイスキーを飲めないなんて事を
言えるはずもない。

僕は
しぶしぶそのウイスキーを一口飲んでみた。

なんだこれは!

どんどん体に染み込んでくる。
こんなに旨いのか!

調子に乗った僕は
何杯も何杯も注文してしまった。

全く酔いがこない。

何杯飲んでも
ただただ気分が良くなるのみで
酔っぱらっている感じが
全くしなかった。

はじめての感覚に
興奮しながらも楽しい
食事会が続いた。

しばらくすると
舞妓さんが2人やってきた。

そのうちの1人が僕の隣に座ると
すぐに名刺を渡された。

それはビジネスの時などに用いる
長方形のものではなく
丸い和紙を使った可愛らしいものだった。


はじめて間近で
舞妓さんの姿を見る。


そのお化粧や髪の毛の結い方に
驚いた。

こんなに繊細で複雑なのか

彼女は僕とそれほど年齢が変わらなかった。

それなのに何か
人をもてなすための技なのか
振る舞いなのか
所作なのか

色々な要素が複雑に絡み合って
完成されているような気がした。

その後
更にお酒を飲んだり
カラオケで
舞妓さんとデュエットを
したりして楽しい時間が過ぎた。

楽しく過ごす中でも
僕には1つ
考えないといけないことがあった。

その当時
今とは違うコンビを組んでいた僕は
明後日
M−1グランプリの2回戦を控えていた。

はじめての2回戦

今こうして楽しんでいて
いいのだろうか。

本当は家でもっと
ネタのことを考えていないと
いけないのではないだろうか。

少し
暗い気持ちになる。

それを察したのか
僕の隣の舞妓さんが
何かあったのかと尋ねてきた。

舞妓さんは
おそらくM-1は見ないだろう。

幼い頃から働いているであろう
彼女は
もしかしたら
お笑いなんて全く見たことがないかもしれない。

この女性に
普通にM-1のことを話しても伝わるだろうか。

なにか適当な理由をつけた方が
いいのではないだろうか。

しかし彼女の目を見つめると
適当な嘘をつくのも
はばかられた。

M-1の事を話してみる。

以外にも彼女は知っていた。

M-1が
国民的な行事になっているという事だろう。

その後、

頑張ってください的なことや
お兄さんなら大丈夫的なことを言われ

最後に彼女は

「おきばりやす」

と添えた。


その様子は
言ったというよりは
添えたという表現の方が
しっくりくる気がする。

「おきばりやす」

素直に綺麗な言葉だなと感じた。



僕はあと半年ほどで京都を去る

もう一度この言葉を
聞く機会は訪れるだろうか。

それを楽しみにしつつ
この数ヶ月を過ごしたいと思った

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