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謎の友情


⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)


皆さんはないだろうか

初対面の人間と謎の友情が芽生えたことが





これは4年ほど前の話である。



大学1回生の頃、
右も左もわからなかった僕は
色々なバイトをしていた。


そして夏頃、
ある派遣会社に登録した。


その会社から回される仕事は様々だった。

最初にやった仕事を
今でも覚えているので
まず書いていこうと思う。

夏の甲子園の時期になると
全国の高校球児が関西にやってくる。

なので高校球児が泊まるホテルというか
宿舎が必要になるのだ。

そのベットメイキングが最初の仕事だった。

古くなったシーツや布団を
大きな洗濯室みたいなところに運び、
新しいものをつける。

汗などが染み付いた布団は
ズッシリと重くなっており、
結構な重労働だった。


なかには異常なほど臭い部屋もあった。


そんな時、ベットメイキングの先輩は
ある機械を持ってきた。


ラジカセのような大きさの
真っ黒な直方体


「臭い部屋の時はこれ使うねん、オゾン」


オゾンと呼ばれるその物体を起動すると
臭かった部屋は瞬く間に
綺麗な空間に生まれ変わるのだ。


なるほど、こんな機械があるのか。


技術の発展に感心したものだ。


ベットメイキングの次の日は
弁当作りだった。


ベルトコンベアで流れてくる食材を
プラスチックの弁当箱の中に
順番に詰めていく。


この時大量に作った弁当は
高校球児の為のものだった。


その年、高校球児が甲子園で活躍できたのは
僕のおかげと言っても過言ではないだろう。
(そんなわけない)




そしてその1週間後、


その日もバイト、
僕は電車に乗り

前日のメールで
指定された場所に向かっていた。


駅に着くとワゴンに乗せられ、
ある場所に向かう。



その日のバイトは
握手会の会場の設営であった。


人と人を区切るための
パーテーションの設置などをするのだ。


会場に着く。


何も置いていない体育館のような
大きな部屋。


「はい!じゃあ皆さんここで今日は
仕事をしてもらうんですけど
メジャーとかトンカチとかは
持ってきてるかな」



持ってきていない。


動きやすい服装としか
指定されていなかった。


その場にいた数人が
持ってきてない感じを出す。


「なんで持ってきてないねん!
おかしいやろ!はじめてかお前ら!」




態度が急に変わった。


こわい


本格的にこわい。



会場の中には同じ派遣会社の僕らの他に
普段から現場に出ているような
ベテラン勢が40人ほどいた。


あかんわこれ


はやく誰か見つけんと。


僕はこれ以上注意を受ける前に
一旦仕事内容などの教えを乞うため、
一種の師匠のような存在を
まず見つけることにした。



近くにいた20代後半くらいの
メガネをかけた
ガタイのいい男性に声をかけた。


「すいません、僕はじめてなんですけど
仕事教えてもらえないでしょうか」


「なに?自分はじめてなん?
トンカチとか持ってんの?」



怒られる様子を見ていたのだろう。


「すいません、持ってないんですよ」


「こんなん百均とかで買えるから
また来るとき持っておいでや。
俺2本あるから貸したるわ。
あとこれメジャー
これは一緒に使おか」



キタ


当たりだ。



他の派遣仲間がまだ注意を受けている中、
僕はペアで早速作業に取り掛かった。


そのお兄さんは
完全に素人の僕にも
的確に指示を与えてくれた。


「そこからここまでの長さ測るから
メジャーの先っぽ抑えといて。
俺がいいって言うまで絶対離すなよ」

「ここ釘打たなあかんのよ。
俺が打っていくから
ええタイミングで次の釘渡してくれ」




などなど


この人は一体
普段は誰とペアを組んでいるんだ?
1人でやっているのか?

と疑うほどの連携プレーだった。




昼頃になった。



休憩を挟む。

皆に弁当が配られた。


僕は当たり前のように
お兄さんの隣に座り、
一緒に弁当を食べる。


一通り食べ終わると

「ちょっとタバコ吸いにいこか」

と誘われる。

「すいません、僕未成年なんですよ」

「そうかそうか!ほな行ってくるわ。」




数時間ぶりの1人の時間



なんだか少し寂しく感じた。


さっきまでお兄さんがいるのが
当たり前だったのに



昼からの仕事もあの人についていこう



そう固く誓った。




昼からの作業がはじまる。


僕たち2人は
再び測る作業を行なっていた。


僕にはどこがどのスペースで
握手会の時にどのような役割を果たすのか
全くわからなかったが
とりあえず指示に従うしかない。


そんな時だ


ある事件が起こった。


「痛!いった!いたっ!」


お兄さんが叫んだ。


「どうしたんですか?」


見るとメジャーの側面で
指を切ったのだろう。

血が出ている。

かなり痛そうだ。


「大丈夫ですか?
僕絆創膏持ってますけど」



僕は財布の中に常に絆創膏を忍ばせていた。

取り出して渡す。


「ありがとう」



やった


はじめてお兄さんに貢献することができた。


足手まといにならずに済んだ。


そのあと数時間作業を続け、
いよいよ完成間近と言う段階になった。



もうそろそろか

長かったバイトもやっと終わりだ。



キツいバイトが終わる嬉しさと同時に
僕は少しの寂しさを感じていた。


もう終わってしまうのか


この優しいお兄さんとの時間が


もう二度と会うことはないのだろうか。


「はい!皆さんお疲れ様でした!
各々準備をしてもらって
自由に解散してください!」



終わってしまった。


「ありがとうございました」


僕には一言
お礼を言うことしかできなかった。


「おう!こちらこそ!」



また会えるのだろうか



そのあと、同じような現場に何度か
行く機会があったが
あのお兄さんに会うことは
とうとう無かった。

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