「男らしさ」がイノベーションを妨げる

みなさん、こんにちは。
今回ご紹介する本は、カトリーン・キラス・マルサルさんの「これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話」です。
本書は、「ジェンダーの観点からイノベーションを考える」というテーマで書かれた本です。
固定観念に支配された私達に、新たな視点を与えてくれる良書です。

世界初のショッピングカートを発明した人の話

世界で初めて、ショッピングカートを開発した人、シルヴァン・ゴールドマンさん。自分のお店で買物をする人のほとんどが女性であること、そして女性が買い物を終えるときは、「持っているカゴがいっぱいで、重たくて、もう持てなくなったとき」と気づいたゴールドマンさんは、
「カゴに車輪を付けて、楽に買い物ができればもっとたくさん買い物してくれる」と思い立ち、ショッピングカートを開発。
ですが、いざショッピングカートを店内に用意しても誰も使ってくれない。
きっと新しすぎてどう使っていいのかわからなかったのでしょう。
新しいものへの抵抗感もあったはず。
そこで、ゴールドマンさんは、サクラを雇ってショッピングカートを押させたそうです。
サクラには効果があり、「社会的証明の原理」という手法のひとつとして有名になりました。
結果として、ゴールドマンさんは、億万長者になりました。
ですが、男性客の中にはショッピングカートを「侮辱」と受け取って快く思わない人もいたようです。
「俺のような力持ちにはショッピングカートなんて必要ない」と、ショッピングカートの利用を拒んだ人たち。
「車輪付きのカートを押すなんて男らしくない」という固定観念です。
イノベーションを起こすには、「新しい技術」と「新しいアイデア」だけではうまくいかないようです。「社会の常識や固定観念」を覆す必要もあるのです。ショッピングカートが発明された当時は1930年代。2020年代の今では老若男女だれでも利用しています。何十年という時を経て、固定観念は徐々に覆されていくのです。
今、新しいアイデアを思いついても、それが社会に受け入れられるには、何十年もかかるということになります。
ですが、見方を変えると、「何十年も前に考えられていたアイデアが、時を経て今なら受け入れられる」かもしれません。

何も新しいアイデアを自ら考えつかなくても、すでにあるアイデアを現代風にアレンジすることで、社会を変えるイノベーションを起こすことができるかもしれません。

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