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vol.21:穴が開くほど愛してる

障害者家族エッセイストの川島田ユミヲです。

以前、弟のきよはるの服装に関して、ひいては知的障害者の方の服装に関する記事を書いた。

オシャレをすると目立つし、オシャレがきっかけで会話が生まれる。

「わ~~、川嶋さんそのTシャツ素敵ですね~~~!」

と声をかけられると、きよはる本人もまんざらではなさそう。
あ、ちなみに川島田の本名は “山” + “鳥” のシマなのです。長嶋監督と一緒。

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そんなきよはるのTシャツコレクションを前回はご紹介しましたが、きよはるさんは

就寝時、掛け布団カバーを、噛む
噛む噛むエブリバディ(観てないけど)
夏は寝る時、二の腕を噛む噛む
指をくわえながら寝るのを「メロイックサイン寝」と呼んでいます

まあ、とにかく布団に限らず布類を噛むとか指を口の中に入れる、という行為が大好きなのです。好きなのかな。クセなのかな。落ち着くのかもしれない。それは本人にしかわかりません。

ほかにも

襟ぐりをぐいっと下に引っ張る
ボタンシャツは引っ張る事でボタンが千切れるから、コーディネート候補から撤廃しました

この、「噛む」と「引っ張る」が合わさるとですね、Tシャツの襟ぐりなんてあっという間に穴が開いてしまうんです。

これは数年前に購入した ジーユーのグラフィックTシャツ、NIRVANA。確か980円+税だった気がする。余談ですが我が家にはきよはるの2歳下に “ kj ” という末弟がおりまして、私とkjはいくつになっても “ どっちがオモロイ事を言えるか ” と日々鍛錬を積んでおります。ある日kjの

「ジーユー?ああ “ 具(GU) ” ね」

という一言から、我が家ではジーユーの事を具と呼ぶ事になりました。笑

さてその具のNIRVANA、襟元を拡大いたしますと…

お見苦しくて、恐縮梨元です

ガジガジと噛むことで襟元は黄ばみが取れなくなるし、ポチポチと穴が開いてしまうんですね。
個人的に、この文字だけのNIRVANA、かなり気に入ってたんだけどな~~~~。再販しないかな~~~~~~。
NIRVANAのTシャツって一般的には

この、目がバッテンのスマイルのものがかなり擦り倒されてる印象。できれば、目新しいものがいい。

でも、ここまでどーーん!と写真プリントじゃなくてもいいのよ。ていうかモデルの人、ズボンどないしたんや。

これもNIRVANAと一緒に買った、具のグラフィックTシャツ・レッチリver.
こちらはラッキーにもSALE品だったので580円+税だったと思う。しかしやはり、襟元には穴がぽちぽち。謎に脇の下にも穴が開いてる。

プチプラかどうかは置いといて、Tシャツのボディに使われている布の厚さとか、どのぐらいのスパンで着せるかなどで、こうして穴が開くのも時間の問題。
だからキヨの場合、どんなにオシャレなTシャツを買っても、消耗が人より早い。こればっかりは仕方がない。良く言えば循環か。でも穴が開いたからと言って、すぐに廃棄したくないのも現状…!

過日、MPCプレイヤーのKO-neyのアルバムリリース記念LIVEに行ってキヨに買ったTシャツ。ちゃんと数えてないけど、キヨのTシャツはトータルで30枚以上はあるから、次にKO-neyのTシャツを着るのは1ヶ月後ぐらいだろうか。そうやって、同じものばかり短いスパンで着せないようにローテーションさせて、Tシャツたちに穴が開く時間を遅らせるようにK.U.F.U.(工夫)しています。

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服の襟を噛むとか、36歳にもなって指とか手を噛むなんてのは、所謂 “ 異常行動 ” なのかもしれない。でも、ここまで生きてきちゃったから、無理矢理直しようがない。もちろん、小さい頃にそれらの異常行動を止められた人、それを直させたご家族はたくさんいると思いますし、当事者もご家族も弛まぬ努力を続けた結果が出て素晴らしいと思います。

ちゃんとする事を取るか、心地よさを取るのか。

私は、人と足並みを揃えてちゃんとできる事も大切だとは思いますが、人に認めてもらえなくても、それが他人に迷惑をかけないのであれば、自分の心地よさを選ぶことも正しいと思います。

キヨは特定の物じゃなきゃダメなタイプではないからちょっと話がずれるかもしれないけど、キヨのような障害がない人でも

「この匂いじゃないと落ち着かないんです」
「このタオルを顔にかけないと眠れないんです」

みたいな、小さい頃から慣れ親しんでいるものを愛用している現象を「ライナスの毛布」と呼ぶそうです。
私個人はスヌーピーにあんまし所縁がないから最近まで知らなかったけど、これは一般的に周知されている事なんだろうか。

別のサイトでは「ライナスの毛布(安心毛布・ブランケット症候群)」という記述もあった。本当に世の中には色んな病名だったりシンドローム(症候群)がある。あれもこれも病気や症候群にしてたら世の中みんな

ほとんどビョーキじゃん。

勿論、病名は当事者の安心材料でもあり、病名がわかる事でどう治療や対応をしていくかの指針であるのは大前提だけどね。第三者がそれを病気と捉えて距離を取ったり腫れ物扱いするのはまた別で。

だから弟よ、これからも噛みたくなったら布団カバーでもTシャツの襟でも、ガンガン噛んでいいぞ。

これからも、穴が開くほどTシャツを愛してくれ。

<完>

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最後までお読み頂きありがとうございました。
ちょっと2週間以上時間が空いてしまいましたが、マイペースにぼちぼち書いていきます。
引き続きご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。


ハードルがあるのは障害者だけじゃない。「私たちは健常者だから」と言うそこのあなただって、職場や家族間での対人関係だったり病気したり大変な事(ハードル)が沢山あるでしょ?という意味で、エッセイのタイトルは「世の中全員、障害者。」と言います。おススメ&サポートして頂けたら嬉しいです。