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リットーミュージック

インプレスグループ創設時から参加している出版社のひとつがリットーミュージックです。

デジタルの利点を生かして
音楽専門誌がコミュニティ戦略を展開

株式会社リットーミュージック

音楽系専門出版社として、40 年以上の歴史を紡いできたリットーミュージック。1992 年にインプレスグループに参入してから、専門性を生かしつつ、デジタルのノウハウも織り交ぜて、業界内で存在感を発揮している。


楽譜出版から楽器専門誌に進出

 一般財団法人ヤマハ音楽振興会で音楽出版のノウハウを身につけた佐々木隆一氏(現・株式会社ロイヤリティバンク代表取締役)が、1978年にリットーミュージックを設立し、楽譜の出版で事業を軌道に乗せたあと、最初に手掛けた雑誌が『キーボード・マガジン』だった。競合他社との差別化のために、ミュージシャンのための本格的な専門誌を出したいと考えた佐々木氏が、当時日本にキーボードの雑誌がないことに目を付けたことが功を奏し、創刊号は返本率約1割という好スタートを切った。それ以来リットーミュージックは、ミュージシャンに寄り添った出版社として歴史を刻んでいる。

『サウンド&レコーディング・マガジン』や『ギター・マガジン』はグループの歴史よりも長く、40年以上続いている。


 1992年にインプレスグループ入りしたあとも、そのコンセプトを受けつぎながら、雑誌ブランドと書籍・映像・デジタル事業とのメディアミックスを実現。1997年からスタートした[デジマート]によって、Webサービスにもいち早く取り組むなど、専門性とデジタル技術を活用して、音楽出版の道筋を切り開いてきた。

 雑誌のデジタル化についても、意欲的に取り組み、2013年に『サウンド&レコーディング・マガジン』が紙の雑誌と同内容のiPad版の配信をスタートしたのを皮切りに、定期誌の多くが紙とWebの同時展開を成立させている。


音楽出版にとらわれず、幅広い分野で実績

 音楽系の専門出版社でありながら、音楽以外の分野にもフィールドを広げている。2012年には[立東舎]レーベルで[脱出ゲームブック]シリーズの発行を開始。2015年にはエンタメサイト[耳マン]を公開して、音楽系アーティストに限らず、アイドルの情報やSNS上の話題を独自の切り口で発信するほか、個性あふれるデザインのTシャツといったアパレル商品も手掛けている。

 一方で、過去にはプロのアーティストが作品づくりに使用できるスタジオ[四谷Avic(Audio Visual in Computer) STUDIO]を1990年代初めまで運営。また、オリジナルテープを募って開催したコンテスト(AXIA MUSIC AUDITION)からは、槇原敬之(第8回グランプリ)がプロデビューを果たすなど、アーティストとの関係性も深いものがあった。

 アーティストとのコラボレーション実績も豊富で、『GLAY DEMOCRACY 25TH BOOK』(2019年)『松本孝弘プレイヤーズ・ブック』(2021年)といったアーティスト本のほか、ツアーパンフレットのデジタル版やダウンロードカード、オリジナルTシャツなどを手掛け、アーティストの事務所からオフィシャルグッズの製作や特設サイトの運営を請け負うケースもある。

 また、2021年には、ヒットソングにスポットを当てた雑誌『Songs magazine(ソングス・マガジン)』を創刊し、楽器や演奏に関する情報を中心に扱ってきたリットーミュージックの音楽雑誌としては、新たなフィールドの開拓に挑戦している。


グループのコミュニティ戦略の柱に

 2018年に松本大輔社長が就任してからは、メディアミックス展開をさらに強化すべく、コミュニティ戦略を推し進めている。リットーミュージックが抱えるメディアやサービスを生かして、読者や[デジマート][T-OD]などのサービス利用者と双方向コミュニケーションを図るのが狙いだ。

「雑誌の読者は情報を得るために紙媒体や電子書籍などの〝メディア〞を購入するわけですが、その先にはさらなる知識欲や向上心、物欲などが縦横無尽に張り巡らされています。その心理を把握し、さまざまな角度から価値を提供することで、雑誌ブランドの〝ファン〞となってもらい、ファンコミュニティに参加する充足感を得てもらいたいと考えています」(松本大輔/リットーミュージック代表取締役社長)

 コミュニティ戦略の一貫として、2019年には『サウンド&レコーディング・マガジン』が460冊以上のバックナンバーが読み放題となる有料会員サービスを提供する[サンレコ](snrec.jp)をオープン。2020年には雑誌『ギター・マガジン』のWeb版『ギター・マガジンWEB』が始動した。


「紙の雑誌記事の〝クオリティ〞はWeb上でも有利に働き、当初想像していた以上にストックとしての価値があるように受け止めています。瞬発的なアクション以上に長期的なロングテールの効果を期待しています。Webならではの価値をどう強めていけるかが課題ですね」(松本伊織/リットーミュージック『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長)


「紙の雑誌では文字・写真・譜面などを駆使して、ギターの音色や響き、フレーズ、演奏テクニックなどを伝えていきますが、Webであれば音源や動画などを組み合わせて今まで以上にダイレクトに届けることが可能だと思います。コロナ禍の影響で、[ギター・マガジンWEB]ではまだ動画コンテンツの拡充が実現できていませんが、この状況を踏まえて、今後の展開を練っているところです」(河原賢一郎/リットーミュージック『ギター・マガジン』編集長)

 専門誌の編集部がWebに力を入れることで、リットーミュージックがWeb上で展開しているサービスとの連携がスムーズになり、そこからさらに[御茶ノ水RITTOR BASE]のようなリアルな場へとファンを導くこともできる。音楽や楽器を愛する読者に寄り添い、音楽出版の新たな形を模索してきたリットーミュージックの挑戦は、グループにとっても大きな牽引力となっている。

[御茶ノ水RITTOR BASE]では、セミナーやレクチャー、ライヴ、映像収録など、さまざまなイベントが開催されている。



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