弁護士・弁理士・工学修士 野中 啓孝

技術を愛する理系特許弁護士。仕事を通じて日本の産業競争力を少しでも高めることが天命と考…

弁護士・弁理士・工学修士 野中 啓孝

技術を愛する理系特許弁護士。仕事を通じて日本の産業競争力を少しでも高めることが天命と考えてます。メーカー研究者→知財部(弁理士)→法律事務所(弁護士)という異色キャリア。企業法務全般、知財コンサルティング、紛争解決、契約書作成、交渉、鑑定意見書、特許調査、出願などを取り扱う。

最近の記事

採用情報(2022/9/7更新)

募集職種:特許事務担当者 勤務時間:フルタイム(9:00-17:30) 、経験者については、パートタイム・時短勤務可 業務内容:国内・内外・外内の権利化業務の補助業務、郵送処理、電話対応、総務、その他弁理士の補助作業 勤務地:京都、経験者については、スキルに応じてリモートワークも可 望ましい経験:英語によるライティング、特許事務

    • 採用情報(2022/9/7更新)

      ■弁理士法人レクシード・テック 弁理士法人レクシード・テック(https://lexceed.or.jp/)では、幅広く知財案件を取り扱える人材を募集しております。なお、弁護士の方は、ご希望に応じて、弁護士法人レクシードにも所属していただき、知的財産案件だけでなく、企業法務なども担当してもらうことが可能です。 ■応募職種と必要条件 ・弁理士又は弁護士:医薬バイオ・化学の分野で理系の修士・博士の学位を有する方(メーカーの開発経験、博士号は歓迎) ・特許技術者:技術的なバックグ

      • 東京地判令和3年10月13日(グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材)

         本件は、黒鉛系炭素素材に関するパラメータ特許についての侵害訴訟事件で、被告らが、出願日前から、製造・販売していた黒鉛製品がパラメータの範囲内に入ることを立証することにより、公然実施(特許法29条1項2号)の無効理由があることが認定された事案である。  数値限定発明特許の問題点は、パブリックドメインを含んだ状態で特許権が成立してしまう点である。このような数値限定発明は、当時の製品を含む形で成立していることが多々ある。その理由は、審査段階では、製品がパラメータ内に入っていること

        • 共同研究開発契約における「協議事項」の問題点

          ■協議事項の悪いところ ・何か合意したつもりになってしまうこと(⇒実は何も合意しておらず紛争の種が残ったままになっている。単なる交渉の先送りに過ぎない。) ・いずれ合意する必要のある協議事項であっても、いつ合意するのかについて管理できていないこと(⇒そのまま忘れられて放置されてしまい、紛争になる。) ・協議が成立しなかった場合のことを考えていない(⇒必ず協議ができるものと勘違いしてはならない。) ■正しい進め方 ・本当に現時点で合意できない内容なのかどうかを確認する。現時点

          数値限定発明特許に対する先使用権の抗弁は有効か?

          数値限定発明特許はパブリックドメインを含んで成立しやすい性質があるため、先使用権の抗弁が主張できるかどうかは大きな関心事です。過去に数値限定発明特許に対する先使用権が実質的に争われた9件について分析すると、否定された4件はいずれも医薬品に関する発明で、それ以外の構造、機械、金属の発明についての5件は、先使用権が肯定されていることから、先使用権が肯定されやすい技術分野とそうでない技術分野があることが分かります。 また、先使用権の要件のうち、数値限定発明の特殊性が強く顕れる要件

          数値限定発明特許に対する先使用権の抗弁は有効か?

          平成30年(行ケ)第10076号[豆乳発酵飲料事件]

          以下の豆乳発酵飲料の請求項について、進歩性欠如を主張するために、引用文献(粘度の数値は記載されていない)に加えて、当時販売されていた複数の豆乳発酵飲料が粘度の数値範囲内に入っていたことを立証し、上記引用文献に基づいて粘度を数値範囲内に入れることは設計事項であると判断された事例。 【請求項1】pHが4.5未満であり,かつ7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sであり,ペクチン及び大豆多糖類を含み,前記ペクチンの添加量が,ペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して

          平成30年(行ケ)第10076号[豆乳発酵飲料事件]

          共同研究開発時におけるNDA(秘密保持契約)の注意点

          オープンイノベーションに対する関心の高まりに伴い、自社技術を開示する機会が増えている。その典型例は、企業間の共同研究開発である。自社技術の開示に際して、NDA(秘密保持契約)を締結することになるが、その際にどのような点に気を付ければよいか。注意点は多いが、いくつかに絞り込んで紹介する。 【対象となる秘密情報の重要度】 会社がノウハウとして持っている重要情報を開示する場合と、特段重要でない情報を開示する場合とでは、契約書に割くべき時間やかける弁護士費用も変わってくる。 【開

          共同研究開発時におけるNDA(秘密保持契約)の注意点

          東京地判令和元年(ワ)第31214号(塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム及びその製造方法)

          【概要】 組成が記載されている主引例に対して、物性値が記載された副引例を組み合わせるにあたり、動機づけがないとされて数値限定発明特許の進歩性が肯定された事件 【発明の内容】 原告(旭化成)が製造する「サランラップ」に関する発明。 【進歩性欠如のロジック】 主引例には組成が記載されていたが、物性値の記載がなかった。このため、物性値が記載されている引用例2を組み合わせる構成で進歩性欠如が主張された。 【裁判所】以下のように判示して進歩性を肯定した。 「しかし,そもそも,主

          東京地判令和元年(ワ)第31214号(塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム及びその製造方法)