数値限定発明特許に対する先使用権の抗弁は有効か?

数値限定発明特許はパブリックドメインを含んで成立しやすい性質があるため、先使用権の抗弁が主張できるかどうかは大きな関心事です。過去に数値限定発明特許に対する先使用権が実質的に争われた9件について分析すると、否定された4件はいずれも医薬品に関する発明で、それ以外の構造、機械、金属の発明についての5件は、先使用権が肯定されていることから、先使用権が肯定されやすい技術分野とそうでない技術分野があることが分かります。

また、先使用権の要件のうち、数値限定発明の特殊性が強く顕れる要件(①特許発明と先使用発明の同一性、②事業の準備)があることが分かります。要点を抑えれば、自社製品が先使用権を主張できるかどうか、ある程度の確度をもって予測することができます。

(1)先使用権が肯定された裁判例(5件)
・大阪地裁令和3年9月16日[ランプ及び照明装置事件]
・大阪地裁平成24年1月26日[フルオレン誘導体事件]
・東京地裁平成20年3月13日[表面仕上金属箔事件]
・東京地裁平成19年11月14日[半導体装置のテスト用プローブ針事件]
・大阪地裁平成16年11月11日[Al系スパッタリング用ターゲット材事件]

(2)先使用権が否定された裁判例(4件)
・東京地裁平成29年9月29日[ピタバスタチン事件(一審)]
・知財高裁平成30年4月4日[ピタバスタチン事件(控訴審)]
・東京地裁平成21年8月27日[経口投与用吸着剤事件]
・東京地裁平成16年9月3日[分岐鎖アミノ酸含有医薬用顆粒製剤事件]

詳しくは、先日開催したセミナーでご紹介しております。録画配信になりますが、今からでもお申込み可能ですので、お気軽にご連絡下さい(野中:h-nonaka@yglpc.com)。
弁護士 野中 啓孝 が、2022年3月24日(木)、「数値限定発明特許に対する先使用の抗弁~過去の裁判例の分析と傾向~」というテーマで講演します。  - 弁護士法人 淀屋橋・山上合同(法律事務所) (yglpc.com)


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