CASE MaaSに関わる最新海外動向 (6月)

~2020年7月7日

この期間の重要な動向

■ 米国では11月の大統領選に向け、気候変動に対する政策が民主党と共和党間の重要な争点になりつつある。その結果次第で、今後の燃費規制やEV化及び再生可能エネルギーシフトの方向性が180度変化し、米国自動車市場に多大な影響をもたらす。Fordはもとより、見かけ上現政府に合わせているGMも現実的にはEV化に柔軟に対応できるようにしており、欧州企業の現在の方針も大きく変化する可能性がある。(日本企業はどうか?)

■ COVID-19の影響から、欧州、特に英独で、明確に温暖化対策と健康を意識しEV化が強力に推進されている。

■ 欧米自動車会社が戦略的に重要なEVを中国で生産し、欧米に輸出する計画を進めている。例: BMW iX3、GM Cadillac Lyriq、Volvo Polestar2

■ ライドヘイリングのUberやLyftで利用車両のEV化が監督部門である地方自治体から強制される可能性がある。

■ EV拡大を目指す企業は、安定供給をもとめコバルトを長期契約で購入する傾向があり、EV市場参入が後発になったり、販売量が小さい企業は、今後購買上、不利になる可能性がある。

以下詳細です

◎◎◎ 米国の動向 ◎◎◎

★ 民主党下院は2050年までにネットゼロ社会を目指す野心的な気候変動対策を提出した。この提案では、自動車会社は2035年までにEVのみを生産し、電力事業者は2040年までに温室効果ガスの正味ゼロ化することを義務付る。トランプ政権下では提案が法律化される可能性はほぼないが、今年の選挙で民主党が勝利すれば2021年には議会の政治的バランスを変わると期待して楔を打った。米人のほぼ3分の2が連邦政府は積極的に気候変動と戦うべきであると考えており、11月には民主党と共和党の経済ビジョンの重要な争点になる可能性がある。

◎◎◎ 中国の動向 ◎◎◎

★ Teslaは、中国市場での事業拡大をサポートするために、今年だけで中国に4,000台のスーパーチャージャーを設置する計画を発表した。中国政府はEV充電インフラの配備に積極的であり、Teslaはネットワークを利用するためにローカル充電ポート標準を採用した。

★ 中国で最も古い国有自動車メーカーであるFirst Auto Works(FAW)に支えられ、昨年中国南京の新工場がすでに完成しているにもかかわらず、Bytonは財務問題から6か月間オペレーションが止まっている。「COVID-19がBYTONの資金調達と事業運営に大きな課題をもたらした結果、経営陣とその取締役会は、6か月の操業停止を実施することを決定した」としている。

◎◎◎ 欧州の動向 ◎◎◎

★ 自転車の拡大が、都市からクルマを排除している。欧州ではパンデミック前から、環境に配慮した消費者からの需要の高まりを見たが、バスや地下鉄での感染リスクは自転車の魅力を更に高め、販売が急拡大している。電動自転車の出現により、汗の心配が取り除かれ、女性を含むより多くの消費者にとって持続可能な移動オプションになった。一部の政府はこの傾向を加速しており、eバイクのビジネスユーザー向けに、€100($113ドル)から€1,500まで購入インセンティブを提供し、ベルリンやリスボン等の都市では約1,500Kmの新しい自転車用の車線が計画されている。

★ 英国とドイツで極めて大きなEV化推進の動きがみられる。英国政府は2月に2035年までに内燃機関の新車販売を禁止する事を発表し、その禁止にはHEVとp-HEVが含まれ、消費者はBEVかFCVか(あるいはVAN)しか購入できなくなる。

★ さらに、英国政府は£1Bを新しい充電設備の設定にコミットしている。またEVに対する法人自動車税が免除される。一般のドライバーは内燃機関からEVに交換する際、最大£6,000まで補助する事を検討している。英国マクドナルドのドライブスルーにEV急速充電ポイントが設置される。EVのドライバーは、高速で信頼性が高く、使いやすい充電インフラストラクチャが近くにあることを確信したいというニーズがあり、EVを所有することがいかに便利で簡単なのかを人々に示す機会になる。

★ ドイツは€2.5Bの経済パッケージ案に充電設備を含め、EUは2025年までに現在の20万台未満から100万台の公共充電器設置を目指すことを発表。また、先週、€40,000以下のEVに対する消費者補助金を倍増させた。今後更に、ガロンあたり約28マイル未満の燃費の悪い車両に対して税(ガス・ガズラー税)の高額化を検討中。多くの欧州諸国ではすべての車両に高額の税金を課し、EVに対しては免除する傾向がある。ガス・ガズラー税からの収益はEVリベートに資金提供に使用できる。

★ EV化には充電インフラ構築も含め、経済効果が高いとも認識されている。(今後20年間のEV導入の見積もりに基づいて、BNEFは、2040年までに現在の100万個未満から、1,200万個の公共EV充電ポイントが世界中で必要になると予測しており、世界で約$111Bの投資が必要になる)

◎◎◎ EVの動向 (Tesla) ◎◎◎

★ 企業向けフリート販売を拡大しつつある。これまでEVの走行範囲の問題が企業のフリート購入の制限要因になっていたが、Model 3は既にいくつかの問題をクリアしている。企業ユーザも走行範囲が実用上十分と認識され、5年以上所有された場合のエネルギー(ガソリン対電気)とメンテナンスコストがEVの方が、同等セグメントのICE車より安いことに気づき始めた。 また、米国のある警察署長によれば、Tesla Model 3のパトカーは期待よりも早く節約できたという。警察では毎日走行距離が長いので回収がはやい。これは、他の多くのビジネス用フリートでも言える。

★ 中国でCybertruckの予約を開始した。予約費用は米国よりも少し高く$141で、予約購入者は完全自動運転パッケージを$9,000で購入できる。(米国ではそれぞれ$100と$8,000)。現在中国では年間40万台を超えるピックアップトラックが販売されている。

★ 需要拡大に伴い、LG ChemはTesla向けバッテリーを今年から韓国でも生産する可能性がある。

★ Gigafactory Berlinの計画をいくつか変更し、バッテリー製造は止め、テストトラックを追加する。これは、環境破壊の低減を意識したもの。地方自治体に環境承認のための彼らの計画を変更し、新バージョンを提出。2021年3月まで建設工事を継続し、2021年7月までに工場でModel Yの生産を開始する予定。

★ ベイエリアでバッテリーの製造を検討中。フリーモントのバッテリー研究施設を拡張し、24時間稼働する製造機能を追加することを申請している。このフリーモント計画(Roadrunner Project)はTeslaが独自のバッテリーセルを作り始める可能性を示唆している。

★ Muskは次に追加する工場が中国の他のアジアになり得る事をほのめかした。今後の生産計画をサポートするため、更にさらにいくつかの工場を建設することが期待されている。

★ 中国産業情報技術省(MIIT)に安価なリン酸鉄リチウム電池(LFPバッテリー)を搭載した新しいModel 3の承認を得た。LFPバッテリーの利点の1つは、コバルトを使用しないこと。

★ 9月15日にバッテリーデーを開催し、工場施設(フリーモント)の見学を含み、最新の蓄電技術を紹介する予定。

★ Autobidderプラットフォームを利用し欧州電力市場に参入。Autobidderは、価値ベースの資産管理とポートフォリオ最適化を提供するリアルタイムの取引および制御プラットフォーム。欧州市場で稼働している電力交換市場である欧州電力取引所(EPEX SPOT)は、Teslaの取引所への参加を発表し歓迎した。昨年、MuskはTesla Energyが分散型の世界的な電力会社になりつつあり、自動車事業を超える可能性さえあると語っている。

★ J.D. Power 2020の品質ランクでTeslaは100台あたり250の問題が指摘され、最下位だった。これらは主に工場の品質の結果だが、EVとしての問題は、予想よりも走行範囲が短いという苦情がある。Teslaの走行距離計測は不正確。Teslaが更に一般に売り上げを拡大するには、競合他社が提供する最高の品質と信頼性を獲得する必要がある。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla以外及び一般情勢) ◎◎◎

★ VWはツヴィッカウ工場に継ぎ、エムデン工場のEV転換がすでに始まっており2022年からID.4を出荷すると発表。今後数年の間、PassatとArteonを生産し続けるが、最終的にはエムデン工場を全EV化し、年間最大30万台の生産能力を持つ計画。VWは既存工場のEV転換に全体で約€1Bを投資する。

★ VWの最初の量販EVであるID.3はソフトウエアの問題で出荷が遅れる。VWによれば、9月にいくつかのID 3を出荷開始するが、App Connectインフォテインメントシステムとクルマのヘッドアップディスプレイは、ソフトウェアアップデートができるまでアクティブ化されない。そしてID.3のフル機能バージョンの出荷を年末に近づくまで開始しない可能性がある。

★ Porscheのライプツィヒ工場で、新しいMacan EV SUV生産のための新しい建物が完成したことを発表。ガソリン、ハイブリッド、およびBEVの3つの異なるドライブタイプが1つのラインで生産される。ただし、Macan BEVは2021年後半または2022年初めに市場に出ると予想されていたが、現状、2022年後半まで市場に出ない可能性がある。

★ Audiは5月下旬、EVおよび自動運転開発の限界に挑戦するための新しいArtemis Projectの立ち上げを発表。7月6日、Autocar誌が、同プロジェクトからA9 e-tronとして2024年に発売される可能性のあるBEVのフラグシップセダンを開発すると報告。同社で最も高度なドライブトレイン、バッテリーセルテクノロジー、自動運転機能を導入し、5G接続、Car-to-X通信、拡張現実が特徴となる。

★ Mercedes-Benzは中国でバッテリーセルを生産するFarasis Energy社の株を取得拡大している。Mercedes-BenzのEV化への取り組みは加速し始めており、バッテリー供給を確保するためFarasisと少なくとも初期の戦略的パートナーシップとなる。Farasisはビッターフェルトヴォルフェンにバッテリーセル工場をCO2ニュートラルな工場として建設し、最大2,000人の雇用をもたらす。

★ GM Cadillacは8月6日にBEVのLyriq SUVを仮想的に発表予定。「Cadillac Lyriqは、1世紀以上にわたる革新に基づき、ブランドの新しい章の始まりを示し、オールエレクトリックであり、モビリティと接続の境界の限界を再定義する」という意気込み。Lyriqは、Cadillacの最初のBEVになる。2021年に中国で生産され、2022年に米国で出荷される予定。

★ Fordは2050年までにカーボンニュートラルとなる事を目標とする。昨年、FordはVW、ホンダ、BMWとともに、2026年までの燃費改善に合意している。

★ Volvo Carsの成都工場は100%再生可能エネルギーを利用する。2025年までに世界販売の50%をBEVとし、残りをHEVにする。

★ トヨタはRAV4 Prime p-HEVの米国向け出荷を5,000台に削減。新開発のリチウムイオン電池の生産能力を大幅に上回る受注を獲得したため、2020年の生産計画を下方修正した。TorqueNews.comは、RAV4 Primeは2020年にカリフォルニア州のZEV規則に従う州の販売店にのみ配布されると報告した。一方、トヨタは2年目以降、約20,000台に回復可能と予想している。

★ インドではTata Nexon EVが$18,000で、$3,900の補助金得るとエントリー価格が$14,000に下がり、漸くEVが多くのユーザに購入可能な価格帯に入る。130馬力、フル充電で110〜135マイル走行し、インドの道路と天候にとって不可欠な、液体冷却、最高の安全性スコア、浸水した道路を走行するための防水機能を備えている。また、OTA機能とApple CarPlayやAndroid Autoの提供など接続機能も提供。

★ Electrify Americaは、最初の米国横断のEV急速充電器網を完成。最初の米国を横断する充電ネットワークは、2014年頃からスーパーチャージャーネットワークを介してTeslaで利用可能になった。Electrify Americaの主な目標は、米国でのEVの採用を促進することであり、他のEVドライバーにも利用できる。Electrify Americaと、Teslaスーパーチャージャー、Ionity、ChargePointなどで利用できるものを組み合わせると、BEVの高速道路の遠出の見通しはかつてないほど明るくなる。

★ 米国エネルギー省(DOE)はEVはガソリン車よりTotal Cost of Ownershipが最大$10,500安いと算出。

★ AppleはiOS 14から地図にEV充電用の経路案内をBMW、Ford、その他EV向けに提供。Appleのアップデートにより、より使いやすいTeslaのようなエクスペリエンスが他の車種にもたらされる。

◎◎◎ 自動運転の動向 ◎◎◎

★ WaymoとVolvoはBEVのロボタクシーで協力。ライドヘイリングサービスで使用するための新しい自動運転EVを製造する独占的パートナーシップ(Volvoから見てWaymoが独占的)。両社は道路がより安全で、交通機関がよりアクセスしやすく、環境に優しい自律的な未来を作るというビジョンを共有している。

★ TeslaのAutopilotが交差点の青信号を初めて認識して通過した。当初はAutopilotの認識が正しくて実際に交差点を通過できるかどうかドライバーが確認する必要があったが、6月15日週のアップデートでドライバーの確認なしに通過可能となった。ただし、Autopilotを使用する場合、すべてのドライバーは常に警戒しアクティブである責任があり、いつでも行動を起こす準備をする必要がある。

★ 自動運転の解決に取り組んでいる著名な企業は数十社あるが、実質的にすべてが異なるアプローチを取っている。大きな2つの違いは主にコンピュータビジョンに依存しているか、HDマップに依存しているかだ。Teslaは、コンピュータビジョンに依存するカテゴリに分類される。Teslaも地図を作成し、「画像認識と地図ベースの間のあらゆる種類の融合」を利用しているが、それらの地図はセンチメートルレベルの正確さは不要で、完全にナビゲートを頼ることはしない。すべては一般的なコンピュータビジョンを中心に構築されており、その上で新しいタスクを作成強化し解決する。ニューラルネットワークで開発しているのは数十人だけだが、ラベル付けに取り組んでいる「巨大な」チームを別に持っている。

★ Mercedes-BenzとNvidiaはクルマの次世代スーパーコンピュータを開発するため手を組んだ。OTAアップデートから自動運転まですべてをサポートする車両向けの次世代コンピューティングプラットフォームを開発する。この発表は、DaimlerとBMWが自動運転のパートナーシップを終了させたというニュースに引き続いて行われた。

★ 自動運転車産業は現在統合によって形を変えつつある。Amazonは、自動運転スタートアップのZooxを$1Bで買収すると発表した。

◎◎◎ MaaS関連の動向 ◎◎◎

★ Lyftは、2030年までにすべてのクルマをEVにすると約束した。平均的なライドヘイリングでの移動は、平均的な従来の自動車移動よりも約50%多くの大気汚染を引き起こすとされ、米国の大都市でライドヘイリング会社にEVの利用を指令する圧力が増している。規制当局の申告によると、Lyftは米国内の30の都市のドライバーに短期レンタルで利用できる「数万台」のクルマを提供しフリート化が進んでいる。Lyftは、「EVへの需要側の関心を組織化し、Lyftプラットフォームを使用するドライバーのグループ割引について自動車メーカーと交渉する」と語っている。

★ e-Scooterのレンタルが英国で合法化される。英国運輸大臣は、「都市封鎖から脱却するにあたり、輸送をよりクリーンな空気でより健康的なコミュニティにつながる可能性のある、より環境に配慮した持続可能な方法で再建する、他に類を見ない機会となる」と語った。

★ EVPassportは$39/月固定でメジャーな充電ネットワークの給電を提供。米国西海岸のいくつかの小規模な地域ネットワークの他に、Electrify America、EVgo、Chargepoint、Hubject、Greenlotsの2,500か所の急速充電器がiPhoneで検索して利用可能となる。今年後半には、欧州のサポート(IONITYを含む)とともにAndroidにも拡張される予定。現在のPandemic中に移動を奨励することに問題が無いと同社が判断すれば、サービスが開始される。

★ Mercedes-Benzは2年前に開始したサブスクリプションサービスを、販売が振るわず7月31日に終了する。他社を含め、サブスクリプションのほとんどは特定の都市でのみ利用可能でまだ試験段階。
 ハンドルに付着する細菌を恐れ、日本ではカーシェアリングが忌避され、市場が縮小。

◎◎◎ その他 ◎◎◎

★ 大気汚染が早期死亡を起こす、ハーバード大学が決定的な証拠を提供。米国EPAが大気汚染を削減しないと発表している事に対する反証根拠となる。

★ Amazonはグリーンエネルギーに投資する$2B のClimate Pledge Fundを発表。Amazonは事業拡大にともない、必然的にカーボンフットプリントが拡大している。Amazonが気候変動公約に署名した他の企業の目標は、パリ協定の目標より10年前の2040年までにネットゼロにすること。Climate Pledge Fundは、輸送と物流、エネルギー生成、貯蔵と利用、製造と材料、循環経済、食料と農業など、複数の業界の企業に投資する。投資判断は、ゼロカーボンへの道を加速し、将来の世代のために地球を保護するのに役立つ可能性に基づく。

★ Teslaがトヨタを追い越し世界で最も価値のあるクルマ会社になった。時価総額は$207Bで、トヨタの$202Bを上回った。一方、Teslaは、第1四半期に103,000台の車を生産したが、これはトヨタの240万台に対して約4%。トヨタは水素燃料電池に賭け、BEVにシフトするのに遅れたトヨタは、EVと自動運転車に一連の大きな投資を行っている一方、今年80%の利益の急落を予測し、自動車市場がパンデミック前のレベルに回復するまでには、来年の前半までかかる可能性があると予想している。


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