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足にまかせて

雨が止んだ途端、植物の匂いが急激に勢いを増す。
窓を開けているだけで、水気を含んで呼吸しているかの緑葉の香りが漂ってくる。
樹木の生々しい青くささ。
ときおりジャスミンの爽やかな香りがふわっと鼻をかすめて消えいく。

足にまかせて散歩。
勢いよく外に出るも、またまた行き先は皇居東御苑。
今の季節は森林浴がいい。

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東京の下町生まれで、幼い頃は道路が遊び場だったせいか土や苔が苦手。
なので、あまりにワイルドな自然の中は歩いても気持ちよくなれない。
その点、東御苑の森林は日当たりもよくジメジメした感じがないのが嬉しい。(いるのだろうけど、)蛙も出てこないし。
『もののけ姫』のサンに言わせれば、神のいない森だろう。
人の手が充分に入った自然は、むやみに触れてはならない畏れがなくて丁度いい。

土を歩く。
風を浴びる。
緑を呼吸する。

体の中で縮こまっていたエネルギーが解ける(ほどける)感覚がする。
肩を揉んでもらうと、慢性化して感じなくなっていた肩凝りが分かるのと同じ。

ちまちましたことばかり気になるようなら、風浴と森林浴をこまめにするといい。
と言っても、ちまちましてると自分で気がつくのが先決だけど。

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一時間ほど緑を堪能して苑を出ようとする途中で、淡いピンクの花が目に留まった。

「これは何という花ですか?」
近くにやって来たおじいさんに訊かれたので、植物の名前が書かれた札をさりげなく見つけて教えてあげた。
「サンショウバラ」
さらりと、知っていたかのよう。
知ったかぶった花の名前を、憶えている自信はありません。



*20090510*


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