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オーギー・レンのように

『スモーク』(Smoke)という映画に、
毎日同じ時間、同じ場所、同じアングルで写真を撮る男が出てくる。
ブルックリンの街角で煙草屋を営むオーギー・レン。
ハーヴェイ・カイテル演じる店主は、
自分の居場所で日に一度、カメラのシャッターを押す。
行き交う人ごとその瞬間の街角を切り取る。
毎日撮り続けた写真は何冊ものアルバムに収められ、
彼はときどき独り、溜まったアルバムを捲る。

この映画を観たとき、
自分もそんなふうに写真を撮ってみたいと思った。
何かを狙った写真ではなく、表現の欲求など表れない写真を撮る。

煙草屋のオーギー・レンにはそれをするきっかけがあって、
私にはきっかけがないからしないのだけれど、
映画をたまに思い出しては似たようなことがしたくなる。

同じ時間、同じ場所、同じアングルというわけにはいかなくても、
一日一枚の街の写真が撮れたらいいなと。

オーギーのようにできないのは、
きっかけがないのが理由ではなく性分ね。
毎日淡々と同じことをし続けるというのが出来ない性質。
だから憧れるのかもしれない。

早朝は曇り空だったのが、
8時を過ぎた頃に空がパーッと明るくなり、
陽射しがきらきらし始めた。

で、足を止めてビルに映る空を撮る。
気持ちはちょい、オーギー・レン。


《11》

  

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