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初受賞の決め手となった「笑い」のコピーとは? 宣伝会議会議賞 協賛企業賞 小林鴻世さんインタビュー

コピーライターの登竜門である公募広告賞、「宣伝会議賞」。 先日3月12日に第58回宣伝会議賞の贈賞式が行われ、受賞作品が発表されました。今回はパナソニックの課題で協賛企業賞を受賞した小林鴻世さんにインタビュー。受賞コピーを書くに至った過程やコピーライターとしての抱負をお話し頂きました。

第58回宣伝会議賞  協賛企業賞

母の仕送りが、里帰りしてしまった。

パナソニック
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小林鴻世(こばやし・こうせい)
1993年生まれ。大学を卒業後、コピーライターとして広告制作会社に入社。現在はBBDO JAPANにてコピーライター / クリエイティブプランナーを務める。主な仕事に、スニッカーズ「進撃の夫人・進撃の長州」「唆るぜ!この甘さと食べごたえ!」、Champion「ルールは自分の中に。」、JBL 「その音は、肌で聴く。」、VISA、SAP Concur、ジャック・ダニエルなど。狂おしいほど漫才が好き。


ーーこの度は協賛企業賞受賞おめでとうございます!受賞のご感想を教えてください。

ありがとうございます。
そうですね、率直には「あ、このコピー?」というのが本心です。これが評価されるんだっていうことも驚きでしたし、これをクライアントさんが選ぶというのも驚きでした。協賛企業賞はもっと上手いこと言うとか、真面目なコピーが通る印象があったので、協賛企業賞に選ばれたのは意外でした。


ーー嬉しさよりも驚きの方が大きかったんですね。

もちろん嬉しかったです。
(協賛企業賞を)獲ったことによって、自分の知り合いが喜んでくれたりとか、Twitterを通じて他の応募者の方と繋がれたりとか。あと自分の受賞コピーをいろんな方が褒めてくれたんですよね。自分が思っている以上に、いいコピーだと言って頂けて嬉しかったです。

ーーちなみに今回の宣伝会議賞は何回目ですか?

全然結果が出てなくてあんまり言いたくないんですけど(笑)、6回目です。就活が終わり、コピーライターになると決まった15年大会からやっていました。


ーー今回の受賞コピーのコメントに「今年のテーマは『笑い』」とありましたが、笑いのコピーとは具体的にどのようなものですか?

CMやボディコピーと違い、キャッチコピー1行だと時間の概念がほとんどなくなるから、笑いの取り方がかなり限定されるんです。そうなった時に、人間の情けなさとか、意地悪さとか、逆にいうと愛らしさとか、そこら辺のみんなが持っている共通認識をうまく使うしかないなと思ったんです。まだ他にも1行で笑わせる方法はあると思うんですけど、とりあえず「人間を描く」ことで笑いを取ろうと思いました。


ーー「母の仕送りが、里帰りしてしまった。」というコピーもそういった人間の情けなさをイメージして書かれたんですね。

そうですね。
今思うと、あのコピーの決め手は「里帰り」というワードがたまたま見つかったというところと、「してしまった」の部分だと思うんです。「してしまった」という言い回しに、情けなさが描けていたなと思っていて。ノートを見返してみると、受賞コピーの前に書いたコピーが「母の仕送りが、里帰りしていった。」だったんですけど。
笑いのコピーを書こう、というモードになっていたから、その次に「してしまった」を書いて、そっちを出したんだと思います。


ーー確かに。してしまった、というワードにやっちゃった感が出ていますね。

「していった」はただただ状況説明というか。どこか他人事ですよね。

この受賞コピーって、荷物を「受け取れないから返送された」と思われがちなんですけど、描こうとしたのは「受け取らないから返送された」という状況なんです。
(再配達には)時間指定をする面倒さと、指定した時間に家にいなきゃいけない面倒さがある。仕送りってネットショッピングとかと違って自分が依頼しているものじゃないので、再配達の時につい後回しにしてしまいがちだと思うんです。面倒くさいな、いっか今度で、と思っているうちに返送されて、母親に怒られるじゃないけど、なんで受け取らないんだよみたいなことになる。それが「してしまった」なんです。 「ヤバイ、これ怒られるんじゃね?」みたいな主人公の焦りを描くために「してしまった」をチョイスしたんだと思います。


ーー普段コピーを書く時も「笑い」を意識されているのでしょうか?

普段は本質を突いたコピーを書きたいと思っているのですが、気を抜くとすぐに正論振りかざす系のコピーばかり書いてしまうんですよ。説教くさくて、おもしろいの「お」の字もないみたいな。なので、去年の宣伝会議賞は自分のスキル的に笑いを意識したコピーを書きたいと思っていました。

ーーなるほど。「笑い」を意識し始めたきっかけはありますか?

僕、お笑いが好きでM-1も出るんですけど、コピーを書く時にはめちゃくちゃ真面目モードになるんです。だからこそ漫才を趣味でやり始めたところはあるんですけど、コピーを書いている時は勝手に思考を限定しちゃってる感じがあって。せっかくお笑いをやっているんだったらそういう部分をコピーにも、もう少しダイレクトに活かしたいと昔から思ってたんです。

そんな時に宣伝会議賞のグランプリが「元彼の目覚ましが、夫を叩き起こし続ける。」になって、これが結構衝撃的で。女の人のずるさみたいなものが描かれていて笑えるし、1行だけでここまでできるのかと。

それで、自分はちょっと真面目に考えすぎていたんじゃないかと思ったんです。実務でもないし、せっかくなら自分の中の可能性を探ってみようと思って、真面目から笑いのコピーに舵を切ってみたんです。なので、今回の宣伝会議賞は、自分の中で実験の回でした。

ーーそういう意味では実験が大成功だったということですね!

そうですね、運良く。(終わってから)見返して、コピーって書く時に方向性を決めると思うんですけど、受賞コピーを書いた時の方向性が「とにかく笑わせようとしてみる」とあったので、1つ報われたなと思いました。


ーー今回の宣伝会議賞を受けて、これからの目標をお聞かせください。

自分の人生は、宣伝会議賞とM-1だけで構成されているんです。
宣伝会議賞のグランプリと、最悪M-1の2回戦に進出できたら、死んでも成仏できるなっていう(笑)。宣伝会議賞はこのまま変わらず取り組み続けて、M-1も出続けてっていう感じですかね。

もちろんコピーライターとして、やってみたいことや、獲りたい賞はたくさんあるんです。大きなキャンペーンで日本中を沸かせてみたいし、大好きな芸人さんをキャスティングしてみたいし。でもどうしても、宣伝会議賞が一番なんです。コピーライターとして生きていく、コピーライティングに人生を捧げると決めたから、ビジュアルや音の力を借りずに、言葉だけで構成された最強の1行を書いてみたいんですよね。


ーーではこれからもコピーと漫才の二刀流で行く訳ですね。

いや、正直漫才は全然結果が出ていないので、二刀流って言えないんですけど(笑)。いつか漫才とコピー、それぞれで培った能力を相互に活かせるようなクリエイターになれたらいいですね。


ーー最後にこのインタビューを読んでいる人に伝えたいことはありますか。

自分、同期がいないんですよ。コピーライターとして新卒入社した時、自分以外にデザイナーすらいなくて。今の会社も同年代がいないので、日常的にコピーとか広告の話をする友達がいないんです。
なので、これを読んだコピーが大好きな人は、友達になってほしいです。Zoom飲み会とかいろいろ誘ってほしいです。本当によろしくお願いします!!!!!!

小林鴻世さんのTwitterはこちら
https://twitter.com/koseik07

聞き手: イノウエユリ
https://twitter.com/yurilily1020