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「誤解だらけの発達障害」著:岩波明

数年前に「誤解だらけの発達障害」を読んでノートに記録した内容を掲載します。

第1章基礎知識

・20年前は認知度が低く一部の小児科医・精神科医で報告や研究がされていた
・枠組みができたのは1980年代に入ってから
・成人期までに対象が広がったのは今世紀に入ってから(欧米は1990年代)。日本は遅い
・「社会的な公平さ」を求める日本人なので、「生きづらい」「変わった人」という認識が増えたが、これらは発達障害ではない。
・発達障害にはASDやADHD、LD等が含まれている。

ASDの歴史

・1943年レオ・カナー論文、「他人との感情的な接触の欠如、自ら決めたことを同一に保つ欲求や反復的こだわり、言語障害、知的な遅れ、物の操作にとりつかれる、高レベルの視空間スキル、機械的記憶」と発表
・1970年代後半、コーナ・ウィングにより、①社会的相互交渉の障害②コミュニケーション障害③想像力の障害と発表される

ADHDの歴史

・ASDの数倍の有病率で戦前から症例報告はあった。
・脳内神経伝達物質の機能障害という仮説ものと検証が繰り返しされている
・過剰診断・過少診断が増加しているのは専門医が少なく実際に診断した医者が少ないから。
・原因は不明だが、環境的な要因が関係しているのではという推測の元研究が進められている。

原因

・ASDの原因→親の高齢・母親の疾患・妊娠中の服薬・アクシデント
・ADHDの原因→母親の喫煙・早産・低体重・薬物摂取・肥満・ストレス

いじめや虐待でASDやADHDにはならないが、これらを持つ子はいじめや虐待の対象になりやすい。愛着障害が原因ともいわれている(第4の発達障害)

ASDの症状

①対人関係やコミュニケーション障害
→相手の心情を表情や言葉のニュアンスから察することが難しい・場の雰囲気を感じ取ることができない
②こだわりの強さ
③光・音・匂いに過敏
大体就学前に発症する

ADHDの症状

①不注意
→注意や集中が続かずケアレスミスが多い・物をなくす・置き忘れる・片付けが苦手・段取りが下手・指示を忘却・約束を守れない
②多動・衝動性
→落ち着きがない・一方的なおしゃべり・不用意発言・感情が高ぶりやすくイライラしやすい・衝動買い・金銭管理が苦手
3~4歳から顕在化する。稀に成長に伴って反社会的行動を進展するケースもある。

診断について

・精神科で受診
・親に同行してもらう。日記や通知表の持参がある
・類似疾患として、愛着障害・統合失調症・パーソナリティ障害・躁うつ病がある

第2章発達障害は治るのか

治療について

・「治る」ものではなく「生活しやすい状態」にするのがゴール
・医学的治療として投薬や学び(トレーニング)
・それ以外では、本人や家族、周囲の十分な理解が必要
・早期発見すれば「得意を伸ばそう」「頭ごなしに怒ることが減る」ようになり、親と子の意識が変わる
・重要なのは、①医療機関を受診して正しい診断を受けること。②一人一人に適切な環境調整を行うこと。③自分の特性について学び、得意不得意を知ることで学校や職場における適応を改善すること(心理教育)④自分の得意な部分を生かして、苦手な部分をカバーし、問題となっていることに工夫や対策を考えて実践すること⑤投薬により問題となる症状を改善すること⑥認知行動療法や集団精神療法など生活場面における行動の仕方について学ぶこと

子供への対応とサポート

・自己肯定感を高めるような対応をする
・保健センターや児童相談所等への相談(2005年発達障害者支援法)
・2016年4月からは障害者差別解消法、学校側の体制や指導

大人への対応とサポート

・二次障害としてうつ病・不安障害などの合併症も発症しやすい
・家族や職場の理解と協力が必要(仕事しやすい環境整備)
・特性理解や問題への対処を考えずに通院をやめると、困りごとを抱えたまま生活をし、悪化・衝突が続くこともある
・コミュニケーションはトレーニングできる
・非難ではなく困っていることを冷静に伝え、協力してほしいと伝える
・NGワードは「努力が足りない」「甘え」「頑張ればできる」

・障害者手帳・年金・生活保護を受けることができるので事前確認・申請をすること(保険料1割負担)
・精神障害者保険福祉手帳の支給をし、住民税控除や運賃割引ができる(自治体や等級によって変わる)

合併症もある

・ASDとADHDは合併率40~70%
・うつ病からこれらの存在がわかることもある
・不安障害・強迫性障害・パニック障害
・統合失調症(高い確率ではない)
・ゲーム依存やネット依存になりやすい
・PTSDになりやすい

第3章誤解だらけの発達障害

・サヴァン症候群→特殊な才能(記憶力・計算)
・共感覚(シネステジア)→文字に色が見える・音に色を感じる
・映像記憶→目に映ったものを映像的に記憶
・感覚過敏や鈍麻→音や光や皮膚が過敏・「痛み」を理解できない、感じ取れない
・空気が読めない=裏表がない
⇒これらはすべて見方を変えれば長所になる!!!

誤解

・罪を犯しやすい→弁護士側の法廷戦略があるので更なる検証が必要
・サイコパス→サイコパスとは精神病質が正式名称で、本来は性格の極端な偏りを示している。よって発達障害と同一視するのは誤り!!!
・キレる・暴力老人→近年研究が始まったばかり
・認知症になりにくい→小規模調査のため今後の検証が必要

最後に・・・

約6年前から「発達障害」という言葉をよく目や耳にするようになったと思いますが、思い返せば私の同級生に発達障害の子はいました。小学校1年生の時の男のは自閉症に近かったかな?落ち着きがなく、きちんと言葉を発することができなかったです。でも、みんなは普通に接していました。もう一人女の子は場の空気が読めない子だったかな・・・6年生の時も男の子がそれっぽかったですね・・・
ただ、「発達障害」という言葉が独り歩きをしていまい、気が付けば正しい知識や接し方も何も知らないまま「あの子発達障害らしいよ」って決めつけていたり、偏見の目を持っていたりしているのが今の日本だと思います。
「障害物競争」と聞けば悪いイメージを持たないのに「発達障害」など「〇〇障害」と聞けば悪いイメージを持つのも今の日本です。そして、苦しんでいる人がたくさんいる。当人だけではなく、親や兄弟、周りも苦しんでいる。
罪を犯せば「発達障害だから罪を犯した」「サイコパスだから」という偏見も持つのが今の日本。著書を読んで感じたのは、日本は本当に遅れていることを感じました。正しい理解・知識・接し方・治療法・国の整備や周知・・・
最近、発達障害の長所を活かした仕事をしている特集を見ました。その人は毎日ルーティンを繰り返していました。周りもその人のことを理解し、「この作業なら任せられる」と安心している面もありました。
発達障害を抱えている人には絶対長所があります。寧ろ、長所がない人間は存在しないと思います。その人の長所が企業でどう活用できるのか、企業努力が必要だと思います。そのためには、国を挙げて発達障害について整備や理解をし、一人一人が理解をし考えを改めなくてはいけないということです。残念ながら理解をしている日本人は極めて少ないです。全国民が活き活きと生きやすい日本になればと思います。

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