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漫画「アオアシ」に学ぶコミュニケーションのポイント


はじめに

あなたは「アオアシ」という漫画を読んだことはあるでしょうか。

サッカーチームが強くなる過程を描いた作品です。

いわゆる「スポ根」ものではありません。

主人公が「考える」ことでサッカーというゲームを理解する成長物語です。

サッカーで大事なのは、状況に応じて仲間の意図を理解して、適切な場所に移動し、パスをつなぎ、ゴールにシュートし、得点するという共通の目標に向かって、密なコミュニケーションをとりながら仲間と協力することです。

コミュニケーションはサッカーのパスと似ています。

両者は次のように対応しています。

  • 誰に渡すか=誰に話すか

  • ボール=話す内容

  • どのように渡すか=どのように伝えるか

私は、昨年、仕事において、わかりやすいコミュニケーションを行うことに課題があると感じていました。

そこで、コミュニケーションを改善するために、漫画「アオアシ」を参考にコミュニケーションのポイントを考えました。

内容はIT業界及びエンジニア界隈における文脈での応用を見据えています。

しかし、他の業界や職種においてもコミュニケーションが重要であることは共通しているので、参考になる部分もあると思います。

現在、コミュニケーションに課題を感じていない方は、ここから先の内容は必要のない記述が続くので閉じていただいて結構です。

コミュニケーションの改善に興味関心のある方は、読み進めていただけると何かしらの参考になるでしょう。

このように読者をこの段階で制限しているのは「誰にボールを渡すか」=「誰にコミュニケーションするか」というパスの相手を確認するという応用をしています。

コミュニケーションのポイント

ポイント①:考えること

ポイントの一つ目は、考えることです。

考えるのは、話す内容だけではなく、何のために話すのかというゴールへの共通認識を持つことや、改善方法を自分自身で考えることも含んでいます。

漫画「アオアシ」のタイトルは、哲学者であるブレーズ・パスカルによる「人間は考える葦である」という言葉が元ネタです。

人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、それは考える葦である。彼をおしつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。蒸気や一滴の水でも彼を殺すのに十分である。だが、たとい宇宙が彼をおしつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである。宇宙は何も知らない。
だから、われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。だから、よく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。

パスカル著
前田陽一、由木康訳
パンセ
pp.250-251
中公文庫

人間は自然界の中では弱い存在でありながら、考えることと協力することで生きてきた種族です。

自分が考えていることだけでなく、他の人が何を考えているかを想像して、意図を汲み取ることが集団としての強さの発揮につながります。

また、個人の成長という観点でも、自分で考えて得た結論は忘れないという利点があります。

最初から答えを見ることは、一見すると効率が良いように思えます。

しかし、表面的な理解だけでは、自分ごととして吸収できない場合も多く、深い点で納得感のある自分なりの答えを出すことが成長につながるのです。

このことは、哲学者のショーペンハウアーが、「自分の頭で考える」というエッセーの中でも指摘しています。

さんざん苦労して、時間をかけて自分の頭で考え、総合的に判断して真理と洞察にたどりついたのに、ある本を見たら、それが完璧な形でさらりと書かれていたーそんなこともあるかもしれない。だが自分の頭で考えて手に入れた真理と洞察には、百倍の値打ちがある。というのも、自分の頭で考えてたどりついた真理や洞察は、私たちの思想体系全体に組み込まれ、全体を構成するのに不可欠な部分、生き生きした構成要素となり、みごとに緊密に全体と結びつき、そのあらゆる原因・結果とともに理解され、私たちの思考方法全体の色合いや色調、特徴を帯びるからだ。さらにそれは、ちょうど内なる欲求が活発になった絶好のタイミングであらわれたものなので、しっかり根をおろし、二度と消えることはない。

ショーペンハウアー著
鈴木芳子訳
読書について
自分の頭で考える
pp.12-13
光文社古典新訳文庫

そのため、この記事に書いてあること自体も批判的に検討していただいて、一人ひとりが自分に合ったコミュニケーションのスタイルを考えることが、究極的には重要ということになります。

私の場合、考えることが重要と考えつつも、実際は仕事に納期などの制約がある中で、考えすぎることによる進捗の遅延が問題になる場合はどのように対処すべきかといった問題を考える必要があります。

その解決策としては、「15分考えてわからない場合は質問する」や、「1日の質問回数に自分なりの制限を設ける」といった対策が考えられました。

前者はGoogleの人工知能の研究チームが採用していたルールであり、後者は職場の質問頻度にソシャゲ的要素を追加した現場事例を参考にしています。

実際には「10分ルール」が適切かもしれませんし、「1日の質問回数は5回」といった制限回数にも個人差や職場差があると思います。

こうした量的変数を調整するなどの工夫から始めてみると試しやすいです。

量のコントロールに慣れてきたら、仕事の質を見直すといった工夫も必要になります。

また、新人育成といった観点では、答えをすぐ教えるティーチングでなく、答えを考えさせるコーチングを重視するシーンも漫画で描かれていました。

フィードバックの仕方も、心理的抵抗の少ないコミュニケーションは相手の立場に立って考えることが重要です。

こちらも、自分がどう受け止めるかに加えて、受け止め方の参考事例などを調べることで、自分なりのルールを決めることが効果的です。

例えば、致命傷を与えるフィードバックの例などがあります。

実際に、相手が普段の指摘をどのように受け止めているかを聞いてみるのも良いでしょう。


ポイント②:全体を見ること

ポイントの二つ目は、全体を見ることです。

コミュニケーションというと、一対一の関係をイメージしがちです。

しかし、実際は、組織や集団内での関係性を捉えておくことが重要な場面があります。

プロジェクト管理では、ゴールに向かうまでの最短経路であるクリティカルパスを認識することが重要とされています。

チームの心理的な要素を意識する場合は、心理的不安度を最小化するために不確実性の高いタスクの把握とその優先的対処が重要とされています。

コミュニケーションをとる目的の一つとして、「今どこかの作業が詰まっていないか」と「納期への不安を感じさせる作業がないか」を確認することが重要になります。

プロジェクトの全体と、組織の全体を両方とも俯瞰できると、事実に基づく冷静なコミュニケーションが行いやすくなります。


ポイント③:選択肢を持つこと

ポイントの三つ目は、選択肢を持つことです。

漫画の中では、主人公は、最初は一つの選択肢しか頭にない状況で、答えを決めつけるようなプレーをしていました。

しかし、自分より上手い選手は、複数の選択肢を比較検討し、その中で最も得点につながる可能性が高いプレーを採用することで強くなりました。

コミュニケーションにおいても、一つの事実を伝える場合でも、その伝え方にはさまざまな選択肢があり、その中で最も意図を正確に伝え、最終目標の達成につながる内容を選択する柔軟さがあるのが望ましいです。

その選択肢を広げるためにも、全体を俯瞰すると伝え方の幅が広がります。


おわりに

基本は考えることが重要であり、その上で視野を広げて選択肢を持つことでよりコミュニケーションの確度も高まるということを学びました。

私自身、まだまだできていないことが多く、今年の課題として取り組もうとしています。

ぜひ、明確なコミュニケーションを行う工夫や方法を考えてみてください!

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