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史上最大のショートスクイーズ大作戦【2】寓話「AMCむかしばなし」

あるところに、10株だけ発行された映画館の株がありました。 疫病がはやったある年、映画館が閉鎖されて、その映画館の株は値下がりしました。
そして、それに便乗して、映画館の株を誰かから借りて高く売ってから安く買い戻しては利ざやをかせぐショーターというグループが現れたのです。

あるとき、ショーターが映画館の貸株6株を売りました。いつものようにみんなを脅して株を安く買い戻そうとしたら、どこからともなく現れた猿の軍団が、8株買って握ったまま、株を手離さないのです。
猿たちは、どこで調べたのか「おまえたちがみんなから金をむしり取ってるのは知ってるんだぞ」と言っています。

ショーターはいそいで株屋さんに残っていた2株を買いましたが、必要な残り4株が店に並ばないので買い戻せません。
そこでショーターたちは、仲間を使って猿たちを脅かして株を売らせようとしました。

「その株は旬を過ぎてるぞー」
「0.01ドルになるぞー」

大きな声の禿げたおじさんと、髪はあるけどぽっちゃり気味のメガネのおじさんが叫んだのに驚いて、手が紙でできた猿が1株売ったので、ショーターはそれをすぐさま買い戻しました。1株確保です。

しかし、手がダイヤモンドでできた残りの猿たちは、絶対に株を手離しません。

「100ドルで買わない?」
「君だけに1000ドルで高く売ろうか?」

今度は高値で呼びかけてみますが、どの猿も売ろうとしません。

「北風と太陽」作戦も失敗です。

どの猿も売ろうとしないので、価格はうなぎのぼりです。
どんどん0が増えていきますが、それでも猿たちは株を売りません。
中には売りたくなった猿もいたのですが、猿たちの結束がかたければもっと高く売れることを知っているので、なんとか我慢しました。

ところで、ショーターがこれまでみんなに売りつけていた株の中には、実は合成株という偽物が混ざっていました。
安く仕入れられるし在庫も気にしなくていいし、普通は世の中に何株あるのか数えてバレたりはしないので、自由気ままに使っていたのです。

銀行の帳簿と同じで、「預けたお金はちゃんとあるよ。引き出したいときにはいつでも引き出せるからね」と言われたことを、みんなが信じたことにしないと成り立たない仕組みです。本当に預けたお金が減らずに残っているかどうかは、普通はわかりません。

ところがあるとき、シルバーバックというゴリラが、猿だけでなく、ゴリラや猫も含めたみんながどれだけ映画館の株を持っているか、数を調べはじめました。

すると、みんなのもっている株が20株だとわかったのです。

あれれ?

10株しか発行していないのに、なんで20株もあるんだ?

「誰だ!勝手に10株増やしたやつは!」

株屋さんの管理人ゲンスラーが事態に気づいてカンカンに怒ってます。
少し調べたら、ショーターが欲に目がくらんで合成株を作っていたことがわかりました。

管理人のゲンスラーはショーターに命令しました。

「あふれた10株を自分で買って、株屋の株をもとどおりにしろっ!」

ショーターは、全部で13株買い戻さなくてはいけません。
こうなると、猿、ゴリラ、猫はそんじょそこらの価格では売りません。噂を聞きつけたイナゴまで集まってきました。

ほんものの株を持っている全員が、絶対に株は売らないと決めているので、ショーターたちは財産全てを売って「なんとかこれでその株を買わせてください」と懇願します。
しかしショーターが合成株で儲けていたことがバレたので、誰も株を売りません。

誰も株を売らないので価格の上昇はとまらず、 天井を突き抜けてどんどん高く伸びていき、月を通り抜けて、最後には火星まで届いたそうな。

こんなことがあったので、騒ぎの後、管理人のゲンスラーはひとつひとつの株に偽造できない固有の印を付けることにしました。
みんなのコンピュータがそれぞれに株の番号を確認しあって、偽物が混ざらないようにする「ぶろっくちぇーん」という新しい仕組みです。

合成株を作れなくなり、ショーターたちの激しい攻撃もルールで禁止されたので、株屋さんでは不正ができなくなりました。

今では猿も、ゴリラも、猫も、人も、誰もが安心して株屋さんで株を買ったり売ったりできるようになりました。いいと思う会社の株を買って、値段が高くなったら売る。みんなが応援してくれるから、頑張っている会社はもっと伸びる。その会社がさらに伸びると思ったら、株をそのまま持ち続ける。
当たり前だけど、なんと素晴らしいことでしょう。

悪いことをしてみんなのお金をかすめ取っていたショーターは、今では檻の中です。

めでたしめでたし。



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