見出し画像

常日頃のお年頃 その①

コンタクト買いに眼科に行った。
駐車場はクルマ3台が駐車できる程度のスペースで少し狭かった。

その駐車場の入り口のど真ん中に、なぜかワンボックスが斜めに駐車していた。
なんだろう?と思って通りかかると5、6台の駐輪自転車が駐車の邪魔になっている様子でドライバーが自転車を1台1台移動させていた。
ドライバーは自転車を全て移動させたあと、ワンボックスを再び駐車スペースにケツから入れようとしたのだが、前に駐車しているクルマが邪魔でぶつかりそうになっていた。
パッと見で運転に慣れていないのが分かった。
なので私は咄嗟に「あーちょっと待って!ぶつかるぶつかる!ストップストップ!」
「はい、1回右に切って後ろー!バックしてー!」と誘導し始めた。

ハンドルを目一杯切ってはいるものの、ワンボックスの左リアタイヤが花壇に突っ込みそうになったので「あーストップ!花壇あるから!左!左!サイドミラー見てー!」

(あ、こりゃ無理だな)

「じゃあハンドル左に切り替えして1回前に出してー!ゆっくりねー!前にクルマあるからゆっくりゆーっくりー!はーいストップオッケーじゃ、もう1回バックでー!はーいゆっくりー!はい、オッケー真っ直ぐなったよー、あとそのままバックねー!はーいオッケー!それじゃー」
ドライバー「ありがとうございました、助かりました」
私「あーいえいえ」

院内に入ると、一瞬「うぇっ!」っと声に出してしまうほど待合室は混んでいた。

中高年の男性女性、子連れの若いお父さん、若い女性

(まいったなー、私は初診だし、ただコンタクトレンズ用に処方箋ほしいだけなんだけど、結構待ちそう・・・まあ予約も取らず受付時間ギリギリに来たし仕方ないか)

問診票を記入し受付に持っていくと

「予約したのに2時間半もかかったやんけ!どないしてくれんねん!」と怒号

受付の女性に怒鳴り散らしている中肉中背、金髪に柄シャツ、チャラいネックレス、微妙にダサい短パンスタイルのおっさんが現れた。
ちなみに靴は汚れた白のスタンスミスだった。

(今度は何だ何だ?)

受付女性2人「申し訳ございません!大変混み合っておりまして・・・」

金髪ブタ野郎「そんなもんこっちが知るかい!関係あるかい!お前らの落ち度やろうが!どないしてくれんねんちゅーとんじゃい!」

(みっともないなー、女性に怒鳴りちらして、あーやだやだ)

その場を離れたくなり、立ち上がって周りを見ると、みんな同じ顔をしている。
しかし、子どもたちだけは違った。
お兄ちゃんの方は驚きつつも辺りの大人を見る余裕が残っていたが、妹ちゃんの方は、完全に怯えている様子でお父さんの腕にしがみついていた。

私は、そのままドアを開け、一旦外に出た。
(んー、これ長くなるかなー、長引きそうなら警察に通報するか・・・?けど外も暑いし待ってたら熱中症なりそう、うーん)

すると1分も立たずに金髪ブタ野郎が出てきた。
ブツクサとまだ何か言っている。
片手には処方箋。
相当イラついていたのか、眼科のすぐ隣りにある調剤薬局の入り口すら見失っていた。

金髪ブタ野郎「あん?こっちかい!」と捨て台詞を吐いて薬局に消えていった。

(あほだなー・・・人間、ああなったら終わりだな。で、こいつは処方箋はちゃんと使うんだな)

事が落ち着いたので、私は再び院内に入った。

また周りを見渡すと、なんだかどうしようもない空気で溢れかえっていた。

私は割りと大きめの声で
「待つのなんか当たり前ですよねーw大人げないっすよねwみっともないっていうかw恥ずかしいやつですよw」

皆が少しだけ笑顔になった。奥に座ってた老人も大きく頷いていた。

「受付の方も大丈夫でした?怖かったでしょー、みんな急いで頑張ってるのにねー、なんで分からないんですかねー馬鹿なんですよきっと。恥ずかしいですねー」

ちょうど支払い終えた若いお父さんと怯えていた子どもたちが私の前を通り過ぎたので、流れで「大丈夫?こわかったよねー?ちゃんと待ってて偉かったねー^ー^」と声を掛けた。

お父さんも子どもたちも、そういう他人の声がけに慣れていないのか少し混乱した様子だった。
お父さんと私はお互い無言で会釈した。

そんなこんなで、私も2階での眼検査を終えて処方箋をもらいに1階受付に戻ると、あれだけ混雑していた人溜まりも無くなり数人を残して静けさを取り戻していた。

(あ、そうだ。初診で予約もせずに受付時間ギリギリに来たんだった。俺も俺だわ。予約取って待たされた金髪ブタ野郎、予約せず割りとスムーズに診察してもらった俺)

外に出るとさっき誘導したワンボックスも居なくなり駐車場もがらんどう。

太陽燦々、灼熱のアスファルト、あぢ~。

人生はタイミング。
常日頃のお年頃。
行いが全てなり。
神も仏も見てたかー?
などと下らん言葉が頭に浮かんでは消えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?