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「古典落語」はいつから「古典」になったのか?

日本の伝統と言えば、様々なものがあります。例えば初詣。江戸時代初期ぐらいからありそうなイメージですが、実は明治18年(1885年)にとある新聞が川崎大師について取り上げたときに使われたのが最初だそうです。明治30年(1897年)には頻繁に使われるようになったようですが、初詣の歴史はほんの120年ちょっとしかないことがわかります。

このように、いわゆる「伝統」がさほど昔から続いているものではないことがわかるのが、『「日本の伝統」の正体』という本です。

面白かったのは、古典落語の項。古典落語というのは、意外にも新しいようで…。落語自体は320年ほど昔からあったようですが、そもそも昔は落語と書いて「おとしばなし」と呼んでいたようです。「らくご」と音読されるようになったのは、江戸時代後期になってからのことだそう。

では、古典落語はいつから古典落語と呼ばれるようになったのか? 古典落語にちょっとでも触れたことがある人なら知っている「芝浜」ですが、これができたのは幕末から明治にかけてのこと。初代三遊亭圓朝という人が作りました(諸説あり)。また、同じく古典落語だと言われることの多い「死神」という作品はグリム童話からの翻案だそうで、いずれも150年しか歴史はありません。

この本によれば、「古典落語」の誕生は、昭和29年(1954年)に安藤鶴夫という評論家が名付けた時からという説や、昭和23年(1948年)に今村信雄という人がこの言葉を使った時からという説があるそうです。しかし、いずれにせよ古典落語と呼ばれるようになったのは戦後になってからだということがわかります。それ以降の落語は「新作落語」だとか「創作落語」と呼ばれるようになりました。

なんと、「古典落語」の歴史は70年あまりだという事実。もちろん噺自体は昔からあるものの、カテゴリーとしての「古典落語」はまだ歴史が浅いということがわかります。

本書では、落語以外にも「御朱印帳」「演歌」などの歴史を紐解いています。常識を疑ってしまう傾向のある人は、ぜひ書店でチェックしてみてください。


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