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2023年11月前半の日経平均振り返り


①    日経平均チャート

11月前半相場を振り返ると、日経平均株価は1日から3営業日で1849円の急上昇となった。

②    日銀・金融政策決定会合

これは日銀の金融政策決定会合で長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)を見直したが、短期金利のマイナス金利政策を維持し、長期金利の上限を1%をめどとする微修正にとどまり、大きな政策変化がないとの受け止めが広がり、円安に傾き金利は上昇した。
これが恩恵となる自動車や金融株などに買いが入った。

③    米・FOMC

またFOMCを通過し、金融引き締めの長期化懸念が後退し、米長期金利の低下で投資家心理が改善したことが背景にある。
米長期金利は10月下旬には一時5%を上回ったが3日には一時4.5%を下回った。
この米長期金利の一転低下を起爆剤とした米株上昇を受け、先月まで売り越していた短期筋のヘッジファンドなどの海外投資家が日本株の買い戻しを誘発した。

④    アノマリー

それともう一つ、月初の株高というアノマリーである。
これは積立NISAの買い付けが月初にあることから、株式買いのアルゴリズムが形成されていることから発生しているようである。
これらの要因で株価急騰を演出したといえる。
その後、日経平均株価はもみ合いとなるが、これまでは米金利の上昇や地政学的リスクの高まりなどマクロ要因で相場が急変動する日が続き、株価指数への影響度が大きい大型株が売買を主導していた。
それが2023年4~9月期決算の発表が相次ぎ、個別物色の動きに変わってきた。

⑤    パレスチナ情勢

イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が原油価格や経済に与える悪影響への過度な懸念も市場では織り込みつつあり、国内では個別物色の流れが続きやすいであろう。

⑥    市場の話題①(ベネッセ)

市場の話題として2つ紹介しよう。
一つはベネッセホールディングスのMBO(経営陣が参加する買収)を実施すると10日に発表した。
ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。
TOBは1株2600円で、2024年2月上旬をめどに開始する。
9日終値1791.5円から808.5円(45%)のプレミアムをつけた。
全株ベースでの株式価値は約2700億円となり、国内のMBOでは最大規模となる。
ベネッセHDは進研ゼミ事業の苦戦が続いている。
小学生~高校生の会員数は23年4月時点で160万人だった。
10年前と比べて約4割減少するなか、デジタル教材の導入など立て直しを進めてきた。
本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と10年前に比べ46%減った。
介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室のベルリッツ事業の売却など構造改革を進めた。
ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断したわけである。

⑦    市場の話題②(京成電鉄)

もう一つは京成電鉄が物言う株主(アクティビスト)の攻勢を受けていることである。
株主還元や事業方針を巡り株主から物言いがつく企業が増えるなか、京成の場合は約2割を保有するオリエンタルランド(OLC)株の時価が京成の時価総額を大きく上回るねじれを突かれた。
そのアクティビストは英ファンド、パリサー・キャピタルだ。
パリサーはOLC株の保有比率を15%未満に減らし、売却代金を株主還元や成長投資に充てるべきと要求している。
京成の時価総額は1兆円強だが、保有するOLC株の時価相当額は1.8兆円。
数字だけ見ると、京成の価値はマイナス評価だ。
仮に京成を買収すると、その瞬間に1.8兆円分のOLC株が手に入るという計算も成り立つ。
時価総額のねじれは「親子上場や持分法適用会社が多い日本企業特有の事象。
そしてこの現象が様々な投資家を呼び込むのは歴史が物語る。
2005年には堀江貴文氏率いるライブドアが、ニッポン放送株を取得することでフジテレビへの影響力増大を狙った。
これもフジテレビの筆頭株主だったニッポン放送の時価総額が、フジテレビよりはるかに小さいというねじれを突いた戦略だった。

⑧    時価総額

親子上場や持分法適用会社との間で、時価総額のねじれが発生している事例を添付します。
参考にして下さい。

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