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決算シーズンを迎えさらに難しくなる相場

 2020年7月16日の株式市場は下記のとおりです。(全て前日比)

・日経平均 -0.8%
・TOPIX -0.7%
・S&P500 -0.34%
・ナスダック総合指数 -0.73%
・NYダウ -0.5%
・DAX -0.43%
・FTSE100 -0.67%
・上海総合指数 -4.5%

 上記の通り、全体的に弱気に推移しました。特に上海市場の下落幅が大きく、前日比で-4.5%下落して引けています。7月に入って急騰していた中国市場ですが、政府系ファンドが定期的な売却活動の一環と言いつつも、相次いで株を売却する動きを見せており、当局による金融緩和のテーパリングの兆候も見られ、それらを嫌気した下落なのかもしれません。

 中国市場の7月からの急騰に関しては、国策相場という見方が一部で広がっていましたがこれらの動きを見る限り、当局はどちらかと言うとバブル抑制に動いており、その見方を否定するかたちとなっています。

 では、足下の中国経済はどうなっているかというと、経済指標を見る限りでは、PMIもコロナショックからV字回復をしており、直近で発表されたQ2のGDP年間成長率も前年同期比で+3.2%(予想+2.5%)、GDP成長率も+11.5%(予想+9.6%)とコロナショックからの回復を示しており、このまま急落が続いていくとは考えづらいところである。

中国GDP年間成長率(出典:Trading Economics)中国GDP年間成長率

中国GDP成長率(出典:Trading Economics中国GDP成長率

 アメリカ市場に関してはコロナ禍において独歩高を演じてきたナスダックが7月13日に急落しエンガルフィンキャンドルを付け、テクニカル的にトレンドの転換を示唆しましたが、その翌日には出来高を伴い反発し、ナスダックの底堅さを改めて証明しました。ただ、その後は反発力に勢いがなくフラフラし始めたのは気になるところです。この要因としては決算前とアメリカの7月の税金支払いに伴う利確と買い控えによるものだと思うので一時的なものだと解釈していますが、昨日ネットフリックが決算でコケた(EPSが$1.59となりコンセンサスを下回った)ように、これから決算を取りこぼすテック企業が相次ぐと、これまで圧倒的な強さを見せていたナスダックにも大きな調整が入る可能性があり、その点今回の決算シーズンはとても重要になってくると思います。

 一方、オールドエコノミーに目を向けると、JPモルガン、モルガンスタンレー、バンクオブアメリカを筆頭に金融銘柄の決算が良好だったこともあり、買い戻しの動きが観測されています。しかし、下記の記事のように決算は良好だったものの貸倒引当金が2008年以来の高水準に達しており、今後の不良債権増加を示唆していることは注視しておくべきだと思っています。

 直近のアメリカの経済指標に関しては基本的に回復傾向にありますが、昨日発表された新規失業保険申請件数が130万件(予想125万件)と前月よりも減少したものの予想ほどの改善は見られず、減少幅も時間の経過と共に縮小しているのが気になるところであり、コロナウィルスの感染再拡大の影響が出始めている可能性を示唆しています。

新規失業保険申請件数(出典:Trading Economics)米国新規失業保険

 アメリカのコロナウィルスの感染状況に関しても、フロリダ、カリフォルニア、テキサスを中心に依然増加傾向が続いており、経済活動再開の足かせになっており、具体的な感染予防対策も講じていない現状では増えていくばかりだと思います。これは日本にも言えることで東京を中心に感染者は拡大傾向にあり、このままだと医療体制のキャパシティを超えるのは時間の問題なのではないかと危惧するところであり、Go toキャンペーンで医療体制が十分ではない地方に感染が広がった場合のリスクを考える必要があるように思います。

 一方で、アメリカのワクチン開発も着実に進んでおり、モデルナ、それからバイオンテック&ファイザー連合によるmRNAワクチンが治験で良好な結果を出しています。さらに治療薬のギリアドのレムデシビルも回復促進と死亡率を下げる効果を示す研究結果を発表しており、感染拡大抑制の期待が膨らみつつあります。しかしながら、ワクチン開発に関しては医療業界を中心に依然懐疑的な見方も多いという事実認識は頭の中に入れておくことが必要かと思います。

 このように依然世界的に感染拡大が止まらない状況のなか、アメリカはワクチン開発を急いでいますが、足下ではアメリカの経済対策に変化が見られます。アメリカでは州によって違いますが、失業者に対して週600ドルの失業保険を給付しています。ただし、この支援策が今月末で打ち切られる予定です。個人的にはこの政策が終了することで資金繰りに苦しむ個人が増えるだろうと予想しており、小売や住宅ローンの焦げ付きといった影響が今後出てくるのではないかと思っています。これが今後マーケットにどのような影響をもたらすかは今のところ分かりませんが注意深く見守っていく必要があるように思います。

 その他では、地政学的リスクとしてアメリカを中心に中国包囲網が形成されつつあり、ファーウェイを筆頭に中国製品の排除が着々と進んでいます。

 現状、アメリカとイギリスが明確にファーウェイの締め出しを表明していますが、これから欧州、それから日本や韓国などの同盟国にもアメリカは強い圧力を掛けてくるこは間違いないでしょう。日本は下の記事にもある通り、アメリカ側の立場であることは明確であり、アメリカの要望を徐々に受け入れていくしかないだろうと予想しています。ただし、日本にとって中国は経済的な繋がりが深く、中国との摩擦は経済界からの反発も強いと思うので、その点、日本としてどのようなソフトランディングができるのか安倍外交の真価が問われる局面に入っていくと思われます。どちらにせよ、この中国包囲網の動きは今後も拡大傾向が続き、どこかのタイミングでマーケットに大きく反映されていくものと個人的には捉えています。

 このように、現状は大局としては米中リスクが着々と水面下で大きくなっており、足下では経済指標の回復とコロナウィルスの感染再拡大による先行き懸念、ワクチン開発、それから直近では決算シーズンも加わり様々な要素が複雑に絡み合って相場の動きを予想することがとても難しい局面にあるように思います。長期的には強気の見方を保持していますが、このような局面では無理に予想して取引するのはやめて、テック系銘柄を中心に決算の様子を見届けていきたいところです。

 




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