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元投資銀行マンが本当におすすめする書籍~経済小説編~

金融や経済は非常に理解が難しい分野であり、その分野に属するまではどのような領域がそもそもあり、具体的に何をしているのかのイメージが非常につきにくい業界ではないだろうか。

様々な専門用語が飛び交い、多様なプレーヤーがおり、それぞれの国での制度の違いもあり、実態としてどのような人々がどのような仕事をしているのか、どのようにお金儲けをしているのか、外部の方からすると比較的わかりづらく、金融業界を志す人もなかなか具体的なイメージをもつことが難しいのではないだろうか。(私も就活の際は、業務の具体的なイメージを持つことに非常に苦心した)

一方で金融の世界はとてもダイナミックであり、人々の野望や欲望、グローバルでの人のかかわり、かかわる人間の多さから数々のドラマを生み出している業界であるとも感じており、仕事のエキサイティングさは他の業界よりも優れていると感じている。

個人的に全く分からないことを調査し、具体的なイメージを持つには小説や漫画・映画などイメージのしやすい形から入ることがベストだと考えており、今回は金融業界の具体的なイメージが持てるよう、おすすめの経済小説をご紹介していく。

巨大投資銀行

金融業界についての小説で最も高い完成度を誇るのが、黒木亮氏による「巨大投資銀行」(バルジブラケットと読む)である。

あらすじ:
ウォール街の投資銀行に転職した日本人バンカーの桂木英一が、M&Aや証券引受などの金融取引を通じて成長し、日本の金融再生に挑む物語。主人公の桂木は、旧態依然とした邦銀から外資系のモルガン・スペンサーに移り、変化にとまどいながらも一流のインベストメント・バンカーへと駆け上っていく。やがて、その運命は日本の金融再生と劇的に絡み合い、桂木は外資で培った手腕を邦銀再生のために捧げようと決意する。。。

この小説は、国際金融小説の新たな金字塔として高く評価されており、虚々実々の駆け引きから、複雑な取引の仕組みまで、投資銀行業務をガラス張りにしたリアリティと迫力があるところに特徴がある。また、登場人物の一人である竜神宗一は、実在する伝説の凄腕トレーダーで元ソロモン・ブラザーズ副会長・アジア地区の最高経営責任者の明神茂がモデルである。

非常にダイナミックな展開であり、ストーリーとしても楽しめるためとてもおすすめである。

トップレフト

次に黒木亮氏のデビュー作である「トップレフト」を紹介する。

あらすじ:
イランで巨大な融資案件が持ち上がり、大手邦銀ロンドン支店の今西が主幹事を狙うが、米系投資銀行の龍花と対決することになる物語である。日系自動車メーカーのイラン工場建設のため、1億5000万ドルの巨大融資案件が持ち上がり、大手邦銀ロンドン支店次長の今西は、国際協調融資の主幹事(トップ・レフト)を獲得すべく交渉を開始しますが、かつての同僚で日本を捨て、米系投資銀行に身を投じた龍花が立ちはだかる。そこに突如、世界を揺るがす敵対的買収が発生し。。。

トップレフトとは、国際協調融資の主幹事を表す言葉で、国際金融市場で戦うすべての金融機関が目指すポジションであるが、トップレフトを目指し熾烈な戦いを繰り広げる邦銀と外資系金融機関、そこに描かれる人間模様は圧巻である。


ハゲタカ

続いては真山仁氏の著作「ハゲタカ」を紹介する

本作はバブル崩壊後の日本で、外資系のバイアウト・ファンド(ハゲタカファンド)の鷲津政彦が、企業買収や不良債権処理を行っていく物語である。

金融業界の激しい駆け引きを描いたドキュメンタリータッチの小説で、鷲津と彼のライバルたちの戦いは、まさに生き残りをかけたものであり必死の駆け引きを目の当たりにする。また、本作では、金融業界の裏側にある人間ドラマも描かれており、鷲津は、日本の不良債権市場で成功を収めながらも、多くのものを失っていく。

本作の見どころは、金融業界のリアルな描写だろう。真山仁氏は、金融業界で長年働いた経験があり、その知識と経験が本作に活かされている。

金融業界を描く緻密さは黒木亮氏には及ばないものの、人間模様やストーリー信条描写はハゲタカに分があり、そういった違いも楽しめるだろう。

下町ロケット

続いて紹介するのは、「下町ロケット」だ。本書は2008年に講談社から単行本が発売され、2015年にTBSでドラマ化された。(阿部寛の演技を覚えている方も多いだろう)

下町ロケットは、佃航平が経営する佃製作所が、大企業に立ち向かう姿を描いた物語。佃航平は、元JAXAの技術者で、佃製作所を立ち上げ、バルブ製造で世界トップクラスの技術を誇りますが、大企業に圧倒される。

ある日、佃製作所は、大企業から特許侵害で訴えられる。大企業の資本力と法務戦略により中小企業の佃製作所は、圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。
特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっており、苦悩する様が描かれている。

本書はドラマ性もさることながら、知的財産の取り扱いやその訴訟について、ストーリー仕立てでわかりやすく問題点や論点を説明している。もちろん本題は異なるが、知的財産について興味がある方にはおすすめの一冊である。


今回も少し疲れたのでここまでとするが、今後も少しずつ記事を拡充する予定である。ぜひフォローやいいねをしていただけるとありがたい。

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