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意見表明報告書をBing AIにて要約してみた~伊藤忠によるCTCへのTOB

昨今はTOBがかなり多くなってきており、それに伴い開示されるドキュメントの数もかなり多くなってきている。
一方、それを読む個人投資家やその他の人のリソースは有限であり、かつドキュメント一つ一つもかなり大量の文章があるため、なかなかすべてのドキュメントに目を通すことは難しい。

少し遊びのような企画だが、皆様の理解を助けるため、Bing AIに意見表明報告書を読ませて内容を要約するとどの程度要約できているのかを見てみたい。
もし100%に近いほど要約できていれば、文章をBing AIに読み込ませれば、簡単な要約となって出てくるので、読みこなす負担はかなり減るはずである。

今回は力を抜いて楽に読んでいただきたい。

意見表明報告書を開く

まずは読み込ませる対象の意見表明報告書のページをweb上で開く。とりあえず最近少し話題になっていた伊藤忠(デジタルバリューチェーンパートナーズ合同会社)による伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)へのTOB案件を使って挑戦していく。

まずはEdgeで対象頁を開き(省力化のため打ち込んだ後日経のページが出ていたので、そこから飛ぶことにした)、Bing AIを起動する。

Bing AIを起動すると「何についてチャットしますか?」と聞かれるため、このページを要約してください、と敬語でお願いしてみた。

単純に意見表明報告書を開き、BIng AIを起動>このページを要約するようお願いした

意見表明報告書の要約

以下にBing AIによって要約された意見表明報告書を掲載する。

この文書は、以下の内容について説明しています:
公開買付けの目的と概要: デジタルバリューチェーンパートナーズ合同会社(以下「公開買付者」という)は、伊藤忠商事株式会社の100%出資子会社として設立された合同会社で、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下「当社」という)の非公開化を目的とする一連の取引の一環として、当社株式のすべてを4,325円で買い付けることを決定した。
当社の意見: 当社は、本公開買付けに関し、賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様が本公開買付けに応募することを推奨する。本公開買付けは、当社の中長期的な企業価値向上に資すると考えるからである。
本公開買付けの公正性を担保する措置: 当社は、本公開買付けにおける利益相反を回避するために、以下の措置を講じた。
第三者委員会の設置: 当社は、本取引に関する取締役会決議に先立ち、当社における利害関係を有しない者で構成される第三者委員会を設置し、本取引及び本公開買付けに関する意見を求めた。
フェアネス・オピニオン及び評価報告書の取得: 当社は、本取引及び本公開買付けにおける当社株式の適正価格範囲等について独立した第三者である野村證券株式会社及びみずほ証券株式会社からフェアネス・オピニオン及び評価報告書を取得した。
利害関係を有しない取締役全員の承認及び利害関係を有しない監査役全員の異議がない旨の意見: 当社は、本取引及び本公開買付けに関する取締役会決議において、利害関係を有しない取締役全員(6名)が承認し、利害関係を有しない監査役全員(3名)が異議がない旨の意見を表明した。

意見表明報告書よりBing AI要約

ぱっとみ、内容は浅いながらもなかなかいい感じのまとめになっているように見えるが、一つずつ確認していこう。

公開買付けの目的と概要

デジタルバリューチェーンパートナーズ合同会社(以下「公開買付者」という)は、伊藤忠商事株式会社の100%出資子会社として設立された合同会社で、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下「当社」という)の非公開化を目的とする一連の取引の一環として、当社株式のすべてを4,325円で買い付けることを決定した。

意見表明報告書よりBing AI要約

公開買付者と当社がしっかりと定義されており、かつTOB価格も間違いなく書かれている。書き出しとしては100点を挙げてもいいのではないか。

当社の意見

次に進もう。

当社は、本公開買付けに関し、賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様が本公開買付けに応募することを推奨する。本公開買付けは、当社の中長期的な企業価値向上に資すると考えるからである。本公開買付けの公正性を担保する措置: 当社は、本公開買付けにおける利益相反を回避するために、以下の措置を講じた。

意見表明報告書よりBing AI要約

まず構成も概要→当社の意見という、意見表明報告書にあるべき構造をしっかりと保って要約しているため、この点もかなりポイントは高い。

次に利益相反を回避するための措置につながるが、それまでの記載についても①TOBへの賛否(今回は賛成)、②株主への応募推奨の有無、の2大論点をカバーしつつ最初に持ってきているため、構成としては100点満点を上げてもいいだろう。

一方、「本公開買付けは、当社の中長期的な企業価値向上に資するから」という理由付けはかなり甘い気がする。というより、①TOBへの賛成についての理由しか書かれておらず、なぜ株主への応募を推奨するかについての理由は触れられていない。

察するにTOBへの応募推奨をする理由は、少し後のほうに書かれておりそこまで読んでから関連性を見出し、この部分に当てはめるのが難しかったのではないか。ちなみに応募推奨の理由は本文を読むとこんな感じである。

当社は、以下の点等から、本公開買付価格及び本公開買付けに係るその他の諸条件は妥当であり、本公開買付けは、当社の株主の皆様に対して合理的なプレミアムを付した価格及び合理的な諸条件により当社株式の売却の機会を提供するものであると判断いたしました。
(ア)下記「(3) 算定に関する事項」に記載されている大和証券による当社株式に係る株式価値算定結果において、市場株価法及び類似会社比較法による算定結果の上限を上回っており、DCF法による算定結果の範囲内であること。
(イ)下記「(3) 算定に関する事項」の「③ 特別委員会における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書及びフェアネス・オピニオンの取得」に記載のとおり、本株式価値算定書(プルータス・コンサルティング)におけるプルータス・コンサルティングによる当社株式に係る株式価値算定結果において、市場株価法及び類似会社比較法による算定結果の上限を上回っており、DCF法による算定結果の中央値を上回っていること。また、本特別委員会がプルータス・コンサルティングから、本公開買付価格である1株当たり4,325円が、当社の少数株主にとって財務的見地から公正である旨の本フェアネス・オピニオンを取得していること。
(ウ)本公開買付けの公表日の前営業日である2023年8月1日の東京証券取引所プライム市場における当社株式の終値の3,644円に対して18.69%、同日までの過去1ヶ月間(2023年7月3日から2023年8月1日まで)の終値単純平均値3,557円(小数点以下を四捨五入。以下、終値単純平均値の計算において同じとします。)に対して21.59%、同日までの過去3ヶ月間(2023年5月2日から2023年8月1日まで)の終値単純平均値3,587円に対して20.57%、同日までの過去6ヶ月間(2023年2月2日から2023年8月1日まで)の終値単純平均値3,396円に対して27.36%のプレミアムをそれぞれ加えた金額であること。
(エ)当社の長期の株価推移に照らして、直近20年における当社株式の終値の最高値(2020年8月3日終値)と同一の価格であること。
(オ)下記「(6) 本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載の本公開買付けの公正性を担保するための措置が講じられており、一般株主利益が確保されていると認められること。
(カ)当該措置が講じられたうえで、当社及び公開買付者等から独立した本特別委員会の実質的な関与の下、伊藤忠商事との間で真摯に交渉を重ね、当初の伊藤忠商事からの提案価格である3,800円から引上げられた価格であること。
(キ)当社における独立した本特別委員会から取得した本答申書において、下記「(6) 本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」に記載のとおり、本公開買付価格を含む本取引の取引条件の妥当性は確保されていると判断されていること。

以上より、当社は、2023年8月2日開催の取締役会において、本公開買付けに賛同する意見を表明するとともに、当社の株主の皆様が本公開買付けに応募することを推奨する

意見表明報告書

要は大和証券とプルータスの算定の範囲内であり、プレミアムもちゃんとついているし、過去20年の最高株価と同程度だし、ちゃんと利益相反を回避する策も講じたからいいでしょ、というわけである。

Bing AIもこの辺りはもう少し厚めに触れておいてほしい。そうでないと感じんのCTCの意見をサポートする根拠について要約を見ただけではわからないが、この根拠こそが重要な要素だからである。

公正性を担保する措置

最後に公正性を担保する措置について列挙されている。

第三者委員会の設置: 当社は、本取引に関する取締役会決議に先立ち、当社における利害関係を有しない者で構成される第三者委員会を設置し、本取引及び本公開買付けに関する意見を求めた。
・フェアネス・オピニオン及び評価報告書の取得: 当社は、本取引及び本公開買付けにおける当社株式の適正価格範囲等について独立した第三者である野村證券株式会社及びみずほ証券株式会社からフェアネス・オピニオン及び評価報告書を取得した。
・利害関係を有しない取締役全員の承認及び利害関係を有しない監査役全員の異議がない旨の意見: 当社は、本取引及び本公開買付けに関する取締役会決議において、利害関係を有しない取締役全員(6名)が承認し、利害関係を有しない監査役全員(3名)が異議がない旨の意見を表明した。

本文中P28以降にこちらの内容が記載されている。本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置、というところだ。

内容を見てこう、と思ったが本案件の前提として、伊藤忠がCTCの親会社であることは記載が必要ではないだろうか。親会社ですでに株式の過半数を保有しているからこそ、公正性を担保する措置を手厚く設定する必要がある。(この点については今後意見表明報告書の解説記事にて触れる予定である。)
そのため案件の前提の箇所でもいいが、伊藤忠の持分が何パーセントで親会社にあたることを明記してから開始するべきだろう。個人的には結構な減点ポイントだ。

書いてある内容に移ろう。

最初のこちらは問題なさそうである。まず最初に特別委員会を組成したことに触れており、最初のハードルとしては超えている印象だ。

不思議なことに意見表明報告書本文では「特別委員会」というワードが使われているにも関わらず、Bing AIによる要約では「第三者委員会」というワードが使われている。確かに過去の案件では第三者委員会というワードが使われているケースもあり、直ちに違和感を想起するものではないが、なぜわざわざ使われている用語を変えてしまったのかは不思議である。

恐らく過去の何かしらを学んでそれをアウトプットしているのだろうが、Bing AIに情報を入れると意図しない形でアウトプットされる可能性を感じ、すこし使い方には気を付けるべきな気がしてしまった。

第三者委員会の設置: 当社は、本取引に関する取締役会決議に先立ち、当社における利害関係を有しない者で構成される第三者委員会を設置し、本取引及び本公開買付けに関する意見を求めた

疲れたので省略

次の文章は問題ありありである。

・フェアネス・オピニオン及び評価報告書の取得: 当社は、本取引及び本公開買付けにおける当社株式の適正価格範囲等について独立した第三者である野村證券株式会社及びみずほ証券株式会社からフェアネス・オピニオン及び評価報告書を取得した。

同上

そもそもCTCが算定を出させたのは大和証券とプルータスであり、野村證券は伊藤忠のFA、みずほ証券に至っては文中に登場すらしていない。(みずほ信託は出てくるが)しかも二つのFAからフェアネス・オピニオンをとったことになっているが、フェアネス・オピニオンを出したのはプルータスのみである。

考えてみればとても不思議である。文中にはみずほ証券は出てこず、大和証券とプルータスの記述がどこにもない。これも上記同様、過去の他案件を学習し、それをベースにアウトプットしたのだろうが、なぜ今回の本文よりも過去の案件情報が優先されるのかが不明だ。

最終的な要約の評価

これをアナリストが出してきた瞬間に、がっかりだ。
大枠としては大外しはしていないものの、細かい点でミスや間違いが多く、このままスルーして顧客に提出するレベルではないだろう。

とはいえ大枠というかまとめ方、フレームワークとしてはかなり評価できる。最初に概要を持ってきて、その次に当社の意見、という意見表明報告書の目的をまさに的確に表現している。そして非常に重要な公正性担保措置についても内容は間違っているが、カバーしようとする姿勢は見える。

なので使い方としてはアナリストが、何か文章や資料を作るときの大枠を考える際は頼ってもいいが、内容のチェックは必要だと考える。

これからもAIの成長を待ちたいと思う。

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