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創作 霊験(3)-⑨ 油問屋の娘

 朝の白さに目を開けたとき、年増女は自分に布団が掛けられて、母親になったばかりの娘はいつの間にか小袖を着て、倒れるように眠っている。
 女は慌てて、ねえ大丈夫かい、と、娘を揺り起こす。しかも、部屋中見回しても赤ん坊がいないじゃないか。
 ねえ、目を覚ましなよ、赤ん坊がどっかに行っち待ったよ。
 娘は泣きそうな顔でふふ、と笑って、大丈夫、と、女に言った。腕の力で体を起こすと、あの子はここにいたら不幸になる。何より、あの人に子どもが生まれたなんて、知られちゃならないもの、と女房が独り言めいて口にする。
 あんた、赤ん坊をどうしたんだい?
 年増女の心配そうな顔に気が付いて、大丈夫、あの子は元気だから、きっと幸せになるから、と、年増女を安心させるように言いながら、また力が抜けたようで、畳の上に横になって眠り始めた。
 産後は休むのも寝るもの座ったままとは言われているが、こんなに気持ち良さそうに眠っている人を無理矢理壁にもたせるわけにもいかない。年増女は赤ん坊のことを気にしつつ、苦労して娘を布団に寝かせた。

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