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創作 霊験 (3)-③油問屋の娘の恋

 役者の言葉がずっと心に掛かったまま油問屋の娘のの芝居小屋が良いは続く。父親の引き出しから、帯やら小間物を頂戴して、舞台で挨拶する役者の名前を手渡すときも、極たまに気づいてくれて、ちょっとはすに笑ってくれる。それは今までなかったことなので、役者の言ったまたきっと、とはこのことなのだ、と、娘は思い込もうとした。思い込もうとしたが、そうなのだろうか、とその度に違う考えが浮かぶ。浮かぶと役者の素顔も一緒に浮かんで、胸が苦しくなるのだ。



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