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KAN「よければ一緒に」レビュー ~究極は言葉もいらなくなる愛~

 KANと言えば、世間では勢いある大ヒット曲「愛は勝つ」やライブでのコスプレやMCによるエンターテイナーぶりを浮かべるだろう。

 しかし、KANの最大の魅力は、ポップでありながら心に沁みるメロディーと優しく繊細な詞であると思う。 
 天才的なメロディーメーカーでありながら、思いやり溢れる抒情詩人なのだ。

 そんなKANの魅力が存分に詰まった楽曲と言えば「よければ一緒に」である。

 私は、1990年代半ばでKANの楽曲から離れてしまっていたのだが、今年、KANのChageソロデビュー20周年記念イベント出演をきっかけに、再びKANの楽曲を聴き始め、2010年発売の「よければ一緒に」を知った。

 世の中にラブソングは、掃いて捨てるほどあるが、ここまで愛する人に対する思いやりに溢れた歌には、なかなか出会えない。

 ひとりでやるのが希望なら、それが一番いいよ。
 それでも、もしふたりでやった方が楽しいと感じるなら、一緒にやっていこう。できるかぎりお手伝いするよ。

 将来の準備なんて、何もないけど、一緒に協力して乗り越えていきたい。君の人生がこれからどうなっていくかが気になるから、楽しみながら共有したい。

 そんな無償の愛情が節々から伝わってくる。
 肩の力が抜けながらも、感情を込めた優しい歌声がそれを引き立てる。
 メロディーは、AメロとBメロが同じ構成になっていて、シンプルなのに、聴いていて飽きが来ない。

 それは、美しいピアノ演奏に包まれて、心地良く響くメロディーだからこそである。

 しかも、このシンプルなメロディーの連なりは、終盤部分への大きな伏線になっている。

 話題なんてなくても、一緒にラララで歌えばいいんだ。一緒に歌えば楽しいよ、と呼びかけるのだ。
 言葉もいらなくなるのが究極の愛だよ、と訴えかけるかのように。
 
 終盤は、主人公と愛する人の共鳴であるとともに、ライブですべての聴衆を巻き込む大合唱を想定した作りなのだ。
 たとえ、事前にこの歌を知っていなくても、ライブではこの歌の終盤、誰もが一緒にラララのスキャットでこの歌を歌える。

 インターネットで検索すれば、この楽曲のライブ映像が観られるので、ぜひとも観て、その圧巻ぶりを堪能してもらいたい。

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