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《孤独なシュプール》 世界への前奏曲のような、小さな音楽たち。Part.10

このまえ、「孤独なシュプール」という曲を書いた。

この曲のイメージのみなもとになったのは、フィンランドの作曲家シベリウスが書いた同名の作品。
同名というか、わたしが勝手にあやかって、オマージュを込めて、同じ題名の曲を作ったということなのだけれど。

シベリウスは、とっても長生きした。
1865年に生まれて、1957年に亡くなった。91歳。
わたしの大好きなおじいちゃんだ。

わたしは、シベリウスの作品に漂う静謐さが好きで、ピアノなどの小さな作品をよく聴いていた。

シベリウスといえば、七つの交響曲や北欧の神話をもとにした交響詩が有名だけど、大作のかげでひっそりと書かれた小品が、わたしには愛おしい。

『孤独なシュプール』は、その小品のなかでも、たぶんそんなに知られていない曲だと思う。
「詩の朗読」と「音楽」という、あまりないスタイルの作品。

詩はこんなふうにはじまる。

森の深淵へと遠ざかっていく
一筋の孤独なシュプール
丘や谷を越えて曲がっていく
一筋の孤独なシュプール
湿地の上には粉雪が舞い
そして低くまばらに松が立っている
遠く遠くへと静寂の中に遠ざかっていく
私の想い

詩は、スウェーデンの詩人ベルテル・グリペンベリの詩。

一面の雪、音も思いも吸い込まれていくような、静かな世界。
孤独な世界。

でも、シベリウスの描く世界には「さみしいよ〜」がないとわたしは思う。
こっちを見てよ、みたいなものがない。

あるのは、峻厳な自然への畏敬と愛。
そして、その向こうに、どこか温かなまなざしを感じるんだよね。
自然と人の生活への、温かなまなざし。

満ち足りた孤独、温かな孤独、みたいなものがシベリウスの作品にはあると思う。
おじいちゃん、大好きだ!

というわけで、今回紹介するのは、わたしの大切で大好きなおじいちゃんの『孤独なシュプール』です。

▶︎Spotify

ピアノ版。
のちにシベリウス自身によってハープと弦楽合奏へ編曲されました。オーケストラ版もいいけど、元々のピアノ曲の透きとおる響きも好き。
【ピアノ】Folke Gräsbeck
【朗読】Lasse Pöysti


ハープと弦楽合奏版
【演奏】Lahti Symphony Orchestra
【指揮】Osmo Vänskä
【朗読】Lasse Pöysti


▶︎Amazon music

ハープと弦楽合奏版
【演奏】Turku Philharmonic Orchestra
【指揮】Leif Segerstam
【朗読】Riho Eklundh


▶︎Apple music

ハープと弦楽合奏版
【演奏】Lahti Symphony Orchestra
【指揮】Osmo Vänskä
【朗読】Lasse Pöysti


▶︎YouTube

ハープと弦楽合奏版
【演奏】Ensemble Calliopée
【朗読】Vincent Figuri




『世界への前奏曲のような、小さな音楽たち。』は、タイトルどおり、世界へ捧げられたような、あるいは、そこから世界が広がるような、小さな作品を紹介しています。

マガジンとしてまとめていますので、小さくて素敵な作品たちをぜひ聞いていってください。





cover photo by Torben
文中の訳詞はこちらのサイトを参考にさせて頂きました。
https://blog.goo.ne.jp/vitezslav/e/4cd10aadd8eb500f487e90df6279b74f

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