ペギー1

ペギー・スー 魔法の瞳をもつ少女/セルジュ・ブリュソロ

【あらすじ】ペギー・スーは14歳。彼女には誰にもいえない秘密があった。それは〈見えざる者〉——人間を滅ぼそうと企む悪辣極まるお化けたち—を、ただひとり、見ることができるということ。その秘密の所為でペギーは周りの人間から疎まれ、彼女は家族とともに、各地を転々としている。そんななか、ある町で、ペギーは〈見えざる者〉たちの計画に巻き込まれ、対峙することになる。

 『ハリー・ポッター』シリーズの大ブームをきっかけに、ヤングアダルト向けの海外ファンタジーが、日本で相次いで発売されるようになった。本書は、フランスの人気作家、セルジュ・ブリュソロによるもの。『「巷にはファンタジー小説がたくさん溢れはじめているけれど、本当に子供たちが楽しめて〈ちょっぴりドキドキする〉ファンタジーを作りたい」と言って仕上げた』(著者プロフィールより)物語だ。

 “ほかの人には見えないものが見えたら”とは、誰もが子どもの頃に思い描くことではないだろうか。ただしそのことは、自分とほかの人たちをきっぱりと分かち、孤独と闘うことであると、本書では描かれる。〈見えざる者〉は、自分たちを唯一、見ることのできるペギーを憎み、あらゆる嫌がらせをもってペギーを襲う。彼らの行為に反応することは、彼らを見ることのできないほかの人からペギーを「変人」として見せ、ペギーが疎まれる原因となる。〈見えざる者たち〉はそのことを理解し、ペギーを「孤独」をもって殺そうとするのだ。彼女には抵抗する手段として〈見えざる者〉に視線でダメージを与える「魔法の眼鏡」があるにはあるが、長時間使えるものではなく、とても非力だ。そうしてペギーは孤立し、追い詰められていく。

 しかし彼女は、最後まで諦めず、〈見えざる者〉と闘い続ける。本書には窮地を救ってくれる格好いい男の子も、頼りになる大人も登場しない。彼女の味方は唯一、嫌味ったらしい“青い犬”だけ。そんななか窮地を切り抜けるペギーには(ラストはハリウッド映画ばりのアクションシーン!)すっと胸がすくが、同時に、〈見えざる者〉——人の悪意や人間関係の厭らしさ——これから生きていくなかで対面せざるをえない敵たちに立ち向かう術を、彼女の姿は教えてくれる。

訳=金子ゆき子

角川書店・2002年初版

※その後、本国フランスでは大人気シリーズとなり、十数巻にわたり出版されている。日本でも続刊が発売されるも、12巻を最後に、刊行が止まってしまっているようだ。

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