そして五人表紙

そして五人がいなくなる/はやみねかおる

【あらすじ】中学1年生の三つ子・亜衣、真衣、美衣の家の隣にある古い洋館に、ある日、妙な男が引っ越してくる。黒スーツにサングラスで、いつもごろごろ本ばかり読んでいる社会不適合者なのだが、どうやら、彼は「名探偵」で……。


 青い鳥文庫の看板シリーズの一つ。和泉元彌主演、三倉茉奈・佳奈が三つ子ならぬ双子を演じてテレビドラマ化もされた。1994年にシリーズ第1作となる本作が出版され、その後、2009年の『卒業〜開かずの扉を開けるとき〜』で全12作(+外伝2作)のシリーズが幕を閉じた。その後、新シリーズとしてキャラクターの顔ぶれを変えつつ、継続している。

 なんといっても、夢水清志郎--通称「教授」のキャラクターが魅力的だ。大人のくせにだらしないし、いじきたないし、妙なことを言っては亜衣たちをいつも煙に巻く。まさに「社会不適合者」たる人物なのだが、しかし、だからこそ、謎解きを始めた途端、教授はうんと格好良くなるのだ。

 ミステリマニアの作者が、古今東西の探偵の魅力をぎゅっと濃縮して、現代版にアップデートしたようなキャラクターが教授なのだと思う。亜衣=読者にとって、学校でも、家庭でもない、外の世界からふらりと現れ、日常のなかに起きた事件を颯爽と解決してゆく存在。そんな教授は、単なる「探偵」としてだけでなく、なにか学校では教えてくれない、世界への別の視点を与えてくれるようだ。

 男子(当時)としては、シリーズ2作目「亡霊は夜歩く」から登場する中井麗一(通称・レーチ)に学ぶところも非常に大きかった。亜衣と同じ文芸部に所属しながら、「俺は存在が詩人だから」とろくに作品も書かず、グータラしているレーチ。しかし、学園祭など、ここぞという時には格好いい姿を見せるべく奮闘する(失敗もするのだが)。そんな彼の姿に、大いに勇気付けられたものだった。


 現在でも本は入手可能。http://www.amazon.co.jp/そして五人がいなくなる-名探偵夢水清志郎事件ノ-ト-講談社青い鳥文庫-はやみね-かおる/dp/4061473921/ref=pd_cp_14_1/375-8892827-4834225?ie=UTF8&refRID=041MVXNP4MPSVXR58ZRF

 講談社文庫版や漫画版など、様々な形態でも楽しむことができる。


 

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